怪力魔女は異世界でも腕力で無双する   作:手の遅いエリオット

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第九話

今回、パーティーとしての仕事はギルドからの依頼で街の周辺の魔物退治。そこまで難易度が高いものではない。一定期間ごとにやらないと魔物が増えてきたりして危険なので追い払う意味合いもある。

どちらかと言えば魔物の出現パターンを確認して状況に変化がないかをチェックする方が重要であった。

 

パーティー一行は、森の中を進んでいる。過去にバルクホルンが木々をなぎ倒した一帯とは街を挟んで反対側に当たる。調査ではあの騒動により魔物の分布に変化が生じているのではないかとの仮説が立てられており、それの現地調査も兼ねている。……バルクホルンとしては複雑な心境だ。

 

「前方に中型の魔物が三体います、注意して下さい」

 

先行しているフィエラから声が飛ぶ。スカウトである彼女は周囲の警戒が任務だった。そのかわり戦闘には積極的には関わらない。

 

「はーい、それじゃ支援いきまーす。体力強化に、魔力強化-」

 

タヴィサが魔法詠唱を始める。体力強化は多少の傷を一定の割合で癒やす魔法。魔力強化は精神に作用して魔法詠唱の効率を上げる魔法。魔力強化は実質タヴィサだけに作用するものだ。

ここまでの経験で、魔力強化はバルクホルンには効き目がないことが判明している。ウィッチの魔法はエーテルが作用して発動するものであるが、ここの世界にもエーテルは存在するものの一般的に使われている魔法には関わっていないらしい。タヴィサはエーテルの存在証明に躍起になってはいたが、自分が扱えてない未知の力と言うことでまだまだ研究の入り口に入ったところだった。

 

バルクホルンは戦闘準備と言うことでスカートを外し、棍棒を構える。魔法力の節約もあり、魔法の発動はまだしない。

 

トニャオは剣と盾を構え、先行する。フィエラはその上、樹に登って視界を確保し必要に応じて指示を飛ばす体勢だ。

その後ろにバルクホルンとタヴィサが続く。バルクホルンはさらに足元の小石を拾って牽制用の石投げにも用意する。

 

「来ます!左から2!右から1!」

「右は任せるぞトニャオ!こっちは二人で対応する!」

「了解!無理はしないで下さい!」

 

タヴィサは攻撃魔法の詠唱に入る。バルクホルンは魔法を発動してシールド展開。そのまま左に寄せていき攻撃を受ける姿勢に入る。

 

「さあ来い!俺が相手だ!」

 

トニャオは右の魔物に対して威嚇するように盾を叩いて引き寄せる。狼型の魔物の牙と爪を盾で受けつつ剣で相手の首筋へ斬りかかる。

 

バルクホルンは二体の魔物の攻撃をシールドで易々と受ける。このくらいなら小型のネウロイよりも受けるのはたやすい。

タヴィサが詠唱が終わりそうだとタイミングを計り、シールドを縮小して射線を確保。これも手慣れた操作だ。

攻撃魔法は魔物にきれいに入り、一体を撃破した。

バルクホルンは残る一体に対して小さくなったシールドを魔物の首へぶつけ、上へ跳ね上げてから連続動作で棍棒を下から殴りつける。……魔物の首は吹っ飛び、一撃で倒した。トニャオも魔物の首を斬り落とし、撃破。

 

「ふう。終わりましたね」

 

「こっちも片付きました。手こずらずに済みましたね、お疲れ様です」

 

「ああ、いい連携だった」

 

魔物の集団を退け、パーティーに安堵の空気が流れる。緊張感が解けてほっとした空気になった。だが。

 

「追加で魔物がもう一体!気をつけて!」

 

フィエラから警戒を呼びかける声。バルクホルンの視線に近づいてくる魔物が映った。

とっさに牽制用の石をそっちに投げる。……魔法発動状態で。

 

閑話休題。航空ウィッチは攻撃で石を投げることはない。なぜなら空中に飛んでいるから石をまず拾えないのだ。陸戦ウィッチだと地面に落ちているものは何でも使うと聞いた覚えがあるが、空中だとそうはいかないのだ。よって弾丸が尽きれば攻撃手段は極めて少なくなる。

バルクホルンはそんな中で怪力を駆使してMG42を棍棒代わりに振り回して攻撃することが多かった。だがこれも近距離にネウロイが近づいてきていることが条件となる。近代における対ネウロイ戦の戦訓としては距離を取りシールドを張って魔力を乗せた弾丸で狙うのが一般的であることから、近距離前提の攻撃方法はなるべく避けるのが常であった。

 

バルクホルンが投げた石ころには魔力が乗り、怪力によって加速された状態でものすごいスピードで魔物に飛んでいった。衝撃波は発生しなかったのでどうやら音速を突破する速度ではなかったようだ。だがそれはトニャオの顔の横をかすめ、魔物に的中して木っ端微塵に粉砕してからも勢いは止まらず、軸線上にあった大木を何本かなぎ倒していった。

 

……

 

「すまん。悪気はなかった。許してくれ」

 

平身低頭、正座で詫びるバルクホルン。

 

「勘弁して下さい、バークさん。死ぬかと思った」

「石を投げただけで100メートル四方くらい吹っ飛んでます。加減を覚えて下さいよ、まったくもう」

「あんなのができるなんてバークさんの魔法はすごいですぅ。あとでもう一回見せて下さいねえ!」

 

座り込んでふてくされているトニャオ。腰に手を当ててお説教モードのフィエラ。

タヴィサだけは平常運転であった。

 

……

 

場面は変わってギルド内部。

 

「承知しました。討伐クエストは成功、但し最後の一体は討伐の証明が不可能、と。やれやれ、困りましたね。まぁ、いつものことと言うことでバークさんを信頼して討伐ということにしておきます」

 

テーブルで書類を作成するフィン、その前で立ったままかしこまるバルクホルン。元の世界なら逆の立場になることが多い彼女だったが、ここでは釈明する側になりっぱなしだった。

 

「まぁなんだ、手が滑ったというか魔力が滑ったというか。わざとではないんだが……言い訳になってしまうからこれ以上は弁明はしない」

「わかってますよ、こちらもバークさんの人となりもかなり理解しましたからね。優秀な人材ですから多少のことには目をつぶります」

 

「ところでだ、あれから情報は集まっただろうか?こちらに来た人の話とか、傾向とか、帰った形跡とか、そういうものは見つかってはいないのか?私は早く元の世界に帰りたいんだが」

 

書類を作成していたフィンが目線を上げて彼女を見た。

 

「ああすまん、こんな話を聞けた状況ではなかったかもしれん。だがこっちも気になっているんだ。早く仲間の元へ、妹の元へ戻りたい。お前にも故郷や家族がいるだろう?なら心配しているだろう彼らに無事を知らせたいし帰りたい、私はクリスの顔を見たいんだ」

 

フィンはそれを聞きながら思っていた。彼女の望郷の念は相当に強い。このまま冒険者としていてもらいたいし、ここまで有能な人材は正直言って逃したくない。とは言え、このまま気持ちの整理が付かないままクエストに送り出していたら気が散って致命的な事故にもなりかねない。

 

「バークさん。あなたの気持ちに応えるためにも誠実にお答えします、ですがあなたの希望通りではないかもしれません、それでもお聞きになられますか?」

「構わん、言ってくれ」

「現在のところは目立った情報は届いておりません。ミラシャナさんには引き続き書類から該当する情報がないか調べてもらっていますし、フィエラさんにも聞き込みのお手伝いをお願いしています。一番可能性のありそうなのはバークさんの地球から来られた方がいないか、ですが、現在のところ該当者は見つかっていません」

 

バルクホルンは無言で頷く。

 

「地球から来られた方が帰られたかどうかですが、これも現在は芳しくありません。以前もお話ししましたが消息不明者が魔物に襲われていなくなったか帰られたかがこちらからでは分からないからです。ですがこれも継続して情報を集めています」

「概ね予想通りだな」

「すいません、こちらもバークさんの気持ちに応えるために動いてはいるんです。そこは理解して下さい」

 

バルクホルンは一呼吸して返事した。

 

「分かった。では何か進展があればすぐに伝えてくれ。よろしく頼む」

「もちろんですよ。すぐに」

 

部屋を退出し、カウンターのミラシャナに軽く挨拶をしてバルクホルンはギルドの建物を出た。

 

もうすっかり見慣れた街並み。彼女も含め、女性は誰も下半身を出していない風景。それらに対して違和感は確実に消えつつある。

それが彼女をさらにせき立てる。すぐに帰る世界に馴染んでる場合じゃないだろう。私の居場所はここではないはずだ。

 

バルクホルンは天を仰ぎ、誰も空を飛んでいない上空をしばらく見上げていた。




一旦、ここで第一部の〆とします。

続きは今のところ未定です。

推敲不足な稚拙な文章で恐縮ですが、もし面白かったら何か感想などお寄せくださると幸いです。
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