なーんか話がとっ散らかった感が否めない。。。
ひょっとしたら書き直すかもです。
5.
―*―*―*―
人は、不完全だ。
他者が存在しなければ、基準が存在しなければ、
物事の正否を定めることができない。
それどころかその基準さえ、己の中でゆがめて解釈し、その正否さえゆがめて出力する。
さらに質の悪いことに人は他者にそのゆがんだ基準を押し付けるのだ。
それゆえ、この世はあやふやで、不定形なもので満ちている。
ある人はこう言っていた。
この人によればそれは間違っている。
だがその人にとって、これは正しいことなのだろう。
他者なしでは絶対の価値観を持てず、
他者が募れば偽りの価値観ばかりが増えていく。
ゆえに不完全。
ならば真に基準たるものはどこにあるのだろうか。
人が完全なモノになれば、それにたどり着けるのだろうか。
答えは出ない。
私もまた真なるものとは程遠いのだから。
―*―*―*―
しっあわっせは~、あっるい~てこない~、
だ~からあ~るいてゆくんだね~、と。
野暮用のために所長室の前に立つ私。
その中で手を組みながらデスクで座っているであろう陰険野郎に会うべくノックもせず入室する。
目的の人物、碇ゲンドウ所長は予想通り、いつものポーズで座っていた。
部屋の中庭側がガラス張りになっている所長室は日の光が入っているにもかかわらず、薄暗い印象を受けるのは目の前に座るこの男のせいか。
電灯ぐらいつけろよと頭の中で愚痴りつつ、用を済ませることにする。
野暮用とは言うまでもない、先日一部の職員に配布されたらしいこの資料についてだ。
「こんにちは、所長殿。本日もご機嫌…」
「用件を言え。」
「挨拶は最後まで言わせろ陰キャ」
まったくこのコミュ障は。
「なら、手っ取り早く言うけどさ、この『Project EVA』てやつ?なんだけど…、本気でやるの?“完全無欠な人間アダム”を作るなんて抽象的な…」
「直球に言ったらどうだ。エヴァンゲリオンをつくる気なのか、と」
心臓が口から飛び出すかと思った。
ゲンドウ君の視線は、サングラスにさえぎられていてよくわからない。
だけど長年の付き合いからそれが冗談の類で言っている言葉ではないのがわかってしまう。
というかこの男が冗談なんて言う姿が想像もできないけど。
「…ゲンドウ君も、だったの?」
「前世と呼ぶべき記憶が戻ったのはつい最近だ。ほかの人間には言っていないし、私のような人間も未だ見られない。お前を除いてな」
「そう、なんだ…、ちなみになんでアッシも前世の記憶があるってわかったのか聞いてみてもいい?」
「私は鎌をかけただけにすぎない、『Project EVA』というエヴァを想起させる名前をあえて流すことで、私のほかにあの世界の記憶を持った人間がいないか試した。結果としてお前が釣れた。それだけだ」
「あぁ、さいでっか…、てかそれならこの計画って100%ダミーってことなの?」
急なカミングアウトに内心ビビり散らかしながら、猫の様な目を細めて、真面目な口調で問いただすアッシ。
頭がくらくらする。最近あの駄兎のせいで慢性的な片頭痛を患っているというのに。
ここにきてゲンドウ君が前世の記憶を取り戻すだなんて、爆弾が過ぎる。
そもそも、あの世界でゲンドウ君はたった1人のために世界を黒幕もろとも敵に回し、文字通り世界を滅ぼした魔王だ。
もし前世の思想が丸ごとこのプロジェクトに詰まっているのだとしたら私は、
この問いの返答次第では、この男を刺し違えてでも止めなければならない。
そうでもしなければあの世界で自身のすべてをかけて世界を改変したシンジ君に申し訳が立たないから。
「そう身構えるな、何も以前のようなことを行おうという気はない」
「どーだか、じゃあ一体なんでこのタイミングでこんな魔女狩りみたいなことを?てかこの計画書の内容なら誰でも食いつくよね?なにこれ?“完全無欠の~”だの、“全能~”だの抽象的な内容多すぎるでしょ。」
「安心しろ、今のところこの計画書はお前にしか渡していない。そもそも極秘の印鑑が押されてはいるが、これは私個人が偽装したものだ。お前はときどき誰の見ていないところで不自然な所作を見せることがあったからな、それが私と同じ前世絡みのものと予測した」
「所長権限でてきとーな偽造文書を作成した挙句、山勘で一発大当たりを引いたってわけ?」
「そういうことだ」
国連の一機関の所長が偽造文書作成とか笑えんでしょ、と思いながらハァとため息を出す。
というか、まだ答えのすべてを聞けてないんだけど?一体何をしたいわけ、ゲンドウ君は?
そう聞くと、ゲンドウ君は首を横に向けガラス越しに見える施設の中庭を眺め、黙りこくった。アッシもつられて中庭に目を向ける。そこにはシンジ君を含めた
シンジ君とアスカちゃん、そして車椅子に乗った青髪の肌の白い女の子。全体的にはかなげな印象を抱かせる、
彼女の名前は綾波レイ。
かの世界ではユイさんのクローンとして生を受け、シンジ君に数多くの影響を与えた少女。
彼女と酷似した少女がシンジ君たちと笑いあっている。
この世界のレイちゃんはユイさんの遠縁の親戚の子で、もともと明るく活発な子だったそうだが、家族で自動車に乗っていた際、不慮の事故で両親と右足を失い、最近になって碇家に預けられたという。
凄惨な事故を経験したということもあり、彼女の表情は乏しく、一時期はぼんやりと一日を過ごすようになっていたそうだ。しかしシンジ君とアスカちゃんとの触れあいにより、今では3人で遊び、その際僅かに微笑むことが増えてきたと、ユイさんは喜んでいた。
その3人が微笑ましく遊んでいる。
その光景をよそにしばらく沈黙していたゲンドウ君の重い声が漏れだした。
「…あの世界で私は自分自身の弱さを受け入れることができなかった。私の周りには、私を理解してくれようとしたユイやレイ、そしてシンジがいたにもかかわらず。独りよがりに殻に閉じこもっていた。最後にそれに気付かされたのはあのマイナス宇宙でシンジと対話したときだった」
ゲンドウ君の独白は続く、
「罪を償うつもりとは言わない。ただ今度こそシンジたちと正面から向き合いたいと思った。彼らが歩む先を見てみたいと思った。そのために障害になるものや、その影をあぶりだそうとした。ただそれだけだ。」
「…そっか」
恐らくゲンドウ君も警戒したのだろう。SEELE(ゼーレ)の存在を。
世界の先行きを曇らせ、あの子たちの未来を影らせる存在を。
その為に餌を撒き、味方、あるいは敵となりえる私を釣り上げた、というわけだ。
「今度はこちらが質問する、お前はどちらだ」
「んなもん決まってるでしょうに」
そんなこと言われずともこう答えてやるさ。
「アッシはシンジ君の味方だよん」
―*―*―*―
人は、完全にはなりえない。
それは如何にしても覆せない真理だ。
だが、それでも人は不足たることはない。
どれだけ疎おうとも、嫌おうとも人は他者によって完結する。
今はそれがどこか悪くないように思える。
繋がりは、煩わしいことだけではないことを知ったから。
―*―*―*―
所長室を後にする。
お互いの腹を割って話した結果、とりあえずゲンドウ君の信頼を勝ち取ることに成功。
シンジ君たちを守ることを目的とした共同戦線を敷くことになった。
なんだかあれだね。
人は変わる、というか。
あれだけ人嫌いで他人に心を開かなかったゲンドウ君があそこまで弱みを見せてくれるとはね。
彼もまたアディショナルインパクトを通じて真に大人になれたということか。
お姉さん感動して涙がちょちょぎれるところだったわ。
言葉だけだけど。
アッシのユイさんを横取りした罪はいまだに消えてないかんな(逆上)。
さてさて、共同戦線についてだけど基本的には普段通りだ。
あっしがシンジ君たちの面倒を見て、ゲンドウ君が政治を担当する。
その中でSEELEや前世がらみの厄ネタがあったら互いに連絡しあう、というもの。
まぁ、奴らの影がお互い見えていない以上、予防策を張り巡らすことを重視する方針だね。
あっしらが過労死しそうな未来が一瞬見えた気がするけど気にしない、気にしない。
なんだかんだ言ってゲンドウ君とこういう悪そうなことするのも楽しいからね。
面倒な政治ごとはゲンドウ君が担ってくれるって言ってたし。
憧れの人と一緒の職場にいられるし。
シンジ君たちとの触れ合いは最高に癒しだし。デュフフ。
なんだかんだ言ってアッシは今最高に充実しているのである!!
…していたのである。
―*―*―*―
シンジ君が6歳の誕生日を迎えてから少し経った頃。
『速報です!!ただいま防衛省から入った情報によりますと、各国のミサイル基地からここ日本に向けて多数の飛翔体が向かっていることが確認されたとのことです!国民の皆さんは地下鉄や屋内に避難し、決して屋外に出ないようにしてください!!繰り返します…』
やってくれたな、くそ兎。
5.fin
原作の時系列までだいぶかかる予感がする。
そこまで書けるか正直不安だけど、気長に待っててクレメンス。