IS―NEON GENESIS―   作:枯木の竹光

7 / 7
お休みもらっといて全然筆が進みませんでした。
プロットはできてんのになぁ。
やっぱ難しいね物語書くの。


1-7

7.

 

―*―*―*―

 

 

 

 

あれから3年。

 

バカ兎から不法投棄されたナンバー無記載ISコア計4個を、怒りのままゲンドウ君にぶん投げたアッシ達は、今のところ政治的外圧に潰されることなく研究活動を続けていた。

この政治手腕に関してはゲンドウ君がやっぱり一番だね、流石は前世でSEELEと渡り合った男。研究所の存続と手元にある4個のコアの所有権をもぎ取るなんて、一体どういった手を使ったんだか。

そしてひじょーにしゃくではあるけど、ISコアなどという超貴重な研究材料が転がってきたのにそれを利用しないわけもなくて。

もともとゲンドウ君が前世の関係者をあぶりだすためにでっち上げたEVA計画。

あっしとゲンドウ君は中身のなかったこの計画とISコアを使い新生EVA計画を立ち上げることにした。

 

その名もProject EV.A。

 

この計画の表の目的はいくつかある。

1つ目は研究所の目的でもある工学テクノロジーを利用した人体機能の補助、拡充を目指したISの開発だ。欠損した手足を補完したり、あるいは災害現場などの危険区域における防護や手足の補強する、て感じ。

各国や国連の一部とかからはISの軍事的利用を、とか軍事に推し進める声が上がっているみたいだけど、うちはあくまで非暴力的な機関だ。武装云々なんてノーセンキューだし、駄兎の理想を聞いている以上、ISをそんなものに使いたくない。そういった事情もあって人工進化研究所の理念に即した福祉的目的に準ずるISを開発することにしたのである。このことから名前をEVoluted Actuator、略してEV.A、てね。

 

2つ目はISコアの謎の一つであるコアが持つ独自意識へ接触、その解明にアプローチすることだ。まあこの目的は国連とかの外部からの要望だね。ISコアは駄兎しか作れず、その大半がブラックボックスと化しているが、近年の研究ではISコアには自己意識なるものが存在することが確認されている。国連のお偉いさん方はそこを突破口にコアのブラックボックスを解明したいとお考えのようだ。実際、コアの謎が解明されてISがより一般に普及すればこちらにもメリットがあるしね。

メリットというのはほかでもない、ISの唯一の欠陥、『女性にしか扱えない』ことを克服することだ。私たちがEV.Aを造ったとしてその恩恵にあずかれるのが女性しかいないのはISの一般化を目指す私たちにとっても由々しきことだからね。近年はこの欠陥をうけて、女性は男性よりも優れているとうたう『女尊男卑』なる風潮ができているとも聞くし。まったくくだらない。

というわけで、そんなふざけた風潮なんか吹っ飛ばしISを本来の形に戻すためにも、コアのブラックボックスを解き明かしてこの欠陥をどうにかしよう、というのが目的だ。そのためにISコアに人体に近い体を与えてあげて人類とコミュニケーションをとれるようにする、要はEV.AというISをISコアという『個』を理解するための器にするということね。

ヒト型の肉体に、1つの魂。まさしく人の手によってヒトを疑似的に再現する、ゲンドウ君がでっち上げた議題がおかしくも実現された形である。

これに人がのることを考えると、オリジナルのエヴァンゲリオンに似ているのは皮肉な気がしてならないけどね。

 

そして言わずもがなこの計画の真の狙いというのはエヴァの名前を餌に広い範囲でネズミをあぶりだすことだ。ここでいうネズミとはSEELE関係者のみならず前世の記憶を持つものも含まれている。あの世界の記憶を持つ者が全員善人とは限らないしね。

というわけで人工進化研究所は今絶賛IS開発にいそしんでいるわけだ。

 

さてさて、小難しい話はこれでしまいにして、シンジ君たちの話をしよう。

時の流れは早いもので、シンジ君たちももう小学4年生です。

3人の仲については言わずとも良好だ。

レイちゃんについては身体的な欠損があるということもあり学校で難儀する場面は人並み以上にあるようだが、そこはシンジ君とアスカちゃんがうまくフォローしてくれてるようだ。いじめがないかとユイさんと一緒になって心配したりもしたが、そこは大丈夫なようだった。というかいじめ自体はあったもののいじめっ子たちはすべからくアスカちゃんの鉄拳制裁に沈んだようである。

 

そうそう、これは話しておかねばなるまい。

以前あったことなのだが、急にシンジ君から急にマリさんと呼ばれた時があった。

今まで全然前世のこと覚えてなさそうだったのに、急に呼んでくるもんだから、その時は1割の驚きと9割のショックで膝から崩れ落ちた。

 

おねーちゃん呼びから急に距離をとってきてない?とってない?

仮に前世のこと急に思い出したとしてもさ、もうちょっと距離縮めた呼び方してくれたっていいじゃん。

それが違うならこれが早めの反抗期というやつか?

もう動悸が止まらなかったねこの時は。

 

心身に染み入る絶望感から何とか立ち直り、レンズが割れたメガネを掛けなおしながら何故さん呼びしたのか聞いてみたところ、別に記憶が戻った云々ではなく、ただ単に10歳にもなるのにおねーちゃん呼びはダサいからさん付けで呼びなさいとアスカちゃんに強要されたからとか。

ま、まぎらわしい…。

というかおのれアスカちゃん、アッシの心のよりどころを奪いとろうとしよってからに…!!

これだから独占欲強いっ娘は。

 

アスカちゃんは幼い頃からシンジ君のことが気になる様子だったけど、最近は見るからににシンジ君を独占するようになった。クラスメイトの女子にも警戒心バリバリで、よその女は絶対に近づけさせないて感じ。幼馴染のレイちゃんには強い拒否反応を示すことはないものの、シンジ君本人がいないところではときどきバチッてる模様だった。罪づくりだねぇシンジ君。

保護者役としてはこのまま健全に成長してくれれば言うことなしなんだけどね。

シンジ君には女難の相が出てると見た。

…アスカちゃんたちに早いとこ大人の保健の授業しといたほうがいいかもしれないにゃ。

 

 

とまあこんな感じで、研究したり、シンジ君たちと遊んだり、たまーに会いに来る千冬ちゃんとお茶したり等など、バタバタしながらも非常に充実した毎日を送っております。

 

 

 

―*―*―*―

 

 

 

名前というものは重要だ。

名は体を表すという言葉通り、名前はその者の本質を表す指標になるのだから。

だからこそ、この名前を付けるという行為、通称名付けは非常に難しい。

言いジャン別に、前世みたいに零号機だけでも。

 

などと頭の中でぼやきながらデスクでペンを回すアッシなのであった。

時刻は夕時。

本日のタスクをすべて終えたアッシは最後の難問に取り掛かっていた。

それすなわち記念すべきEV.Aシリーズ第1世代ISの命名である。

ぶっちゃけ名前考えるのアッシじゃなくてもよくないか?とは思うんだけど、生憎手の空いている研究員があたししかいないということで、みんなが納得するような名前を考える羽目になった。

うーんうーんと唸りながらカタカタとペンを回す。

 

そんな時間が幾ばくか過ぎるころ、

研究室に浮かない顔をしたユイさんが入ってきた。

 

どうかしましたかと問うと、先ほど行われていた会議で零号機(仮)のパイロットが決まったとのことだが、そのパイロットというのが問題だった。

なんと弱冠10歳のレイちゃんがパイロットに選ばれたのである。

理由はIS適正。

元々ただでさえ少ないISパイロットの中でもEV.Aシリーズのコンセプトに合致するようなISパイロットは0に等しかったため、レイちゃんは右足のこともあり、かねてからパイロットの候補に挙げられていたのだった。レイちゃん自身ももう一度走れるようになるならとパイロットになることに前向きだったことと、彼女が受けたIS適性検査ではその適正値は驚異のSだったこともあり見事に選ばれたということだった。

 

「だからこそ心配なのよ」

「というと?」

 

ユイさんは重い口どりで話し始めた。

 

「各国でISの実験が行われるているさなか、その実験が原因でISパイロットが重篤な怪我をしたり、死亡する事故が多発してるでしょ?そんな中でEV.Aテストパイロットにレイちゃんが選ばれて…。不安なのよ。」

「それだったら安全対策を私たちが練ればいいだけじゃないですか、2重に3重に、てね」

 

それはそうなんだけど、と言葉を詰まらせる。彼女が悩んでいるところはもっと根本的なところらしい。

 

「ISは果たして発展させて然るべきものか、私にはわからないのよ。今私たちが研究しているこのISが本当にシンジたちの将来に影を落とさないものである確証がないから。」

 

ISは世界にヒカリばかりをもたらしたわけではない。

現に、世界各国はISを核に代わる抑止力の兵器として見ている。アラスカ条約が締結されたとはいえ、いまだに世界ではISを軍事運用しようとしている動きがみられている。いざどこかの国が戦争を始めた時、すぐに駆り出されることになるのはISとそのパイロットだ。このままISの研究を進めたとして自分たちが手掛けた技術がいつしか他者を害するものになるかもしれない。

 

我が子と同じように愛しているレイちゃんが、いずれ自分たちが作ったISで、自分たちが研究した技術で誰かを傷つける日が来てしまうかもしれない。

 

そう思ってしまうのよと、ユイさんは締めくくった。

 

カタン、カタン。

あたしがペンを回す音だけが研究室内に虚しく響く。

ISか。

難儀な問題だにゃー、と考え込んでいると、

 

「おかーさん!おかーさん!!」

 

レイちゃんの車いすを押しながら研究室のドアをあけ放ち、中庭から駆け寄ってくるシンジ君たち。

どうしたの?と急な来訪者に驚きながらも腰をかがめながらユイさんが聞くと、

 

「はい!母の日おめでとう!!」

 

シンジ君たちの手に握られていたのは色鮮やかな山吹色の花。

カーネーションだ。

母の日に送る定番の花。

これはどうしたのかと聞くと、いわく母の日に備えて施設の研究員たちに手伝ってもらいながら私たちに内緒で育てていたそうな。

おばさまだけじゃなくてママにもこの後あげに行くんです、と頬に泥汚れをつけながらアスカちゃんやレイちゃんもフンスと張り切っている様子だ。

ありがとう、と受け取るユイさん。

ユイさんばっかりいいなー、とアッシがぼやくと、シンジ君がおねーちゃんにもいつもお世話になっているからと、一輪のカーネーションを手渡してくれた。

感激で涙がちょちょぎれますよまったく。

お礼に今夜はおねーちゃんといいことしようねー、と両手をワキワキさせながら言うとアスカちゃんとレイちゃんに片方ずつ脛を蹴られた。

なかなかのお手並みじゃない。

あまりの痛みにうずくまるアッシに追撃とばかりに蹴りを入れ続けるロリっ子2人。

渦中の人であるシンジ君は訳も分からずキョトンとしているのが現場のカオスさに拍車をかけていた。

 

一通りアッシを蹴って満足したのか呆けるシンジ君の手を取り先を急ぐアスカちゃん。

シンジ君?もう少しアッシに気を使ってくれてもいいんだよ?

 

パタパタとキョウコさんめがけて走っていく我が子たちを見送りながら微笑むユイさん。

その横で私は白衣の汚れを払って身だしなみを整えながら立ち上がると、ユイさんに話しかけた。

 

「ねぇ、ユイさん?私ね、思うんだ。」

 

この世に生み出される技術すべてが幼い命と同じく無垢で罪のないものとはあえて言わない。技術はあくまで道具。道具の真価は使い手によって決まるのだから。

けれどもたとえ人殺しの道具を作ることになろうとも、未来を担っていく幼い命を支える力になりえるのなら、それが悪だと思わないし、大いに価値のあるものだと私は信じてる。もしもそれを罪有リキと糾弾されるのであれば、それを背負うのは私たち大人の役目だと。

 

だから、

 

「思いっきりやっちゃっていいんじゃない?」

 

あの時ああしておけばよかったなんて、後悔の無いように。

あの子たちを守るのも技術の力なんだから。

 

「…そう、ね。そうかもしれないわね」

 

愚痴に付き合ってくれてありがとうね、とユイさんが研究室から出ていく。

廊下の様子を見るとアスカちゃんからカーネーションを受け取った京子さんが声を上げて号泣しながら子供たちを抱きしめているのを、ユイさんが少し呆れた目で見ていた。

 

その光景につられて手に握った花を見る。

私の掌の上で生き生きと咲き誇るカーネーション。

確かカーネーションの花言葉は…。

…あぁ、そうだ、名前はこれがいい。

 

どうかあの子たちの未来が輝くものでありますように。

願わくば、この無垢な愛情がこの先もずっと紡がれていきますように。

この願いがいつしかあの子たちにも、これから生まれてくるずっと先の子供たちにも届きますように。

 

この祈りを名前に乗せて、ね。

 

おっと、忘れないうちに資料の裏に記入っと。

 

 

 

 

EV.Aプロトタイプ 零号機

 

 

 

命名 “カーネーション”

 

 

 

7.fin

 

 

 




カーネーションの花言葉は無垢で深い愛 永遠の幸福だそうです。
名前は原作のレイのイメージからカーネーションとつけようと決めていました。
というか機体の名前に花の名前つけるのスコなんですよね。
ゼフィランサスとかサイサリスとか。
もーさいこー。
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