百合園セイアに狂わされたTSティーパーティーモブの話 作:グリンピース
TSでガールズラブってつけてもいいものなんですかね?
いよいよ来週に迫った水着ティーパーティーイベント……もとい、セイア様達のバカンス。セイア様が数日いなくなったことで回らなくなるような仕事でない分、失礼だけどフィリウスよりも恵まれていると思ってしまう。セイア様はその分ナギサ様の仕事を少し受け持つような形になるらしいが、まあそれでもいい休暇になるはずだ。なんだかんだ忙しい日々を送っているお方だ、ご褒美があったって良いだろう。
『わかっているとは思うが、何食わぬ顔でついてきてカメラのシャッターを押すような真似はやめてくれたまえよ』
流石の俺もそんな無粋な人間では無いという抗議をさせていただいた。シャッターチャンスの嵐となる数日間ではあるものの、あくまで優先するべきはティーパーティーの御三方の休暇だ。俺のせいで台無しとか本当にありえない。
それに俺まで抜けると流石に仕事に支障をきたす気がする。属人化し過ぎた弊害がこんなところに来るとは……いやそうでなかったとしても行かないけれど。
笑顔でセイア様に別れを告げた後、俺はひっそりと号泣した。
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「イチカ!!!お願い!!!本当に本当にホントの一生のお願い!!!!!」
「ダメっすよ」
「うああああん!!!!なんでええぇぇぇぇぇ!!!!!」
「犯罪の片棒を担がされるのは御免っすから」
「犯罪じゃないよ!自然なタイミングで写真を撮ることとかあるじゃん!」
「そこに邪な感情がなければ良かったんすけどねぇ」
地面に頭をつけながら絶叫しても俺の要求は通らず。最終手段に出た俺を(おそらく)冷ややかな目で見る友人の姿がそこにはあった。
「俺とイチカの仲じゃん!」
「その仲の人間に盗撮を頼むとはどういう了見で?」
「盗撮じゃないってばぁ!」
「そもそも何回目の一生のお願いっすか。先週もパフェひと口のために使ったのに」
「あー…………まあ、細かいことはいいじゃん!ね?」
「ね?じゃないっすよ。それに私はあくまで護衛のために行くんすから、アヤのお使いまで受けてたらキャパオーバーっすよ」
「うぅぐぐぐぐ……」
ぐうの音も出ない正論。
「……はぁ。あー…………ま、もしかしたら記念写真を撮ることもあるかもしれないし、そん時にカメラがないってのも困る話っすよねぇ」
「!!!!」
「すぐ現像できた方がいいし、せっかくのバカンスの記念写真をスマホで撮るんじゃあ味気ない気もするっすよねぇ」
「イチカああああ!!!!」
「ちょ、暑いんだから離れるっす!!」
やはり持つべきものは友だ。抱きつこうとしたら何故か拒否られたけど。いや理由言ってたか、最近暑いしね。
「ただし!あくまで皆さんが写真を撮ろうと言った時だけっすからね?無理にお願いするのとかはナシっす」
「わかってる!はぁ~~~……カメラの容量空けといて良かった」
「ま、まさかと思うけど全てセイア様の写真だったりは……」
「流石に全部では無いよ!?綺麗な空とかネコチャンとか、セイア様以外も撮ってるんだから」
「良かった、まだ片足だけで済んでるんすね」
「何が!?」
兎にも角にも、これで心置きなく仕事に臨めるというものだ。
「さーてと、来週は何を御馳走してもらおうかなぁ」
「は、え!?う、ぐぐ、なんでも言ってください……」
「あはは!じゃあ楽しみにしてるっす」
イチカに相棒を預け、ティーパーティーの執務室へと戻るのだった。
思えば入学してすぐだから、そこそこ長い付き合いにもなるもんだ。俺が素を出して接してるのもイチカだけだし、まさか名前を知っている生徒とここまで親しくなるとは思わなかった。
さて、今からイチカの喜ぶことを考えないとね。
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つくづく甘いなぁと自分でも思う。
「このカメラ、セイア様にバレないといいっすけど……」
この二年足らずでどれだけ一生のお願いを聞いたと思っているのか。
出会いは最悪で、大暴れしているところに居合わせたのがアヤだった。私がそこら辺にいた不良と間違えて襲い掛かったのが始まりだったと考えると、どうしてこんな関係になったのか不思議で仕方ない。アヤ曰く『河川敷コースは親友確定でしょ』らしいけど。
「まあでも、友達っすからね」
出来ることなら友達の望みは叶えてあげたい。頑張ってるのはちゃんと見てるし、邪な感情はあるにしても人を想う気持ちは嘘じゃない。いや、邪な感情があるのはダメじゃない?
ともかく、友人が少ないということを抜きにしても大切な人なのだから、そんな友人の願いに応えたいという気持ちは間違っていない……はず。
何を御馳走してもらおうか、今から考えておかないと。
「……で、なんすかこれは」
「なにって、ディナーと言えばここじゃない?」
何を当たり前なことを、とでも言いたげに首を傾げるアヤ。手に持ったチケットの装飾が眩しい。
「それ、学生が簡単に取れるものじゃないっすよ?しかも金額だって……もしかして超がつくほどのお嬢様だったとか?」
「いやいや普通の学生だよ。有名だし評判いいから外さないかなって」
「なんで有名かわかります?」
「美味しいから?」
「……まあ、間違ってはないっすけど」
これ、ちょっとお金もってるくらいの人間じゃ予約も出来ないようなお店なんだけどな。なんのツテがあって自称普通の学生がこんなところの予約が取れるんだか。ティーパーティーの力ってそんなに凄いのかな。
「んじゃ行こっか。あ、場所調べるからちょっと待ってね」
「場所も知らなかったんすか!?」
いよいよもって怪しくなってきた。この子、利他的というか自己犠牲になりがちというか、人のためにはかなり無理しちゃうタイプだからなぁ。本人がそれを無理してると思ってないところまで質が悪い。今回もそうなんじゃないかと思ってしまう。
「いやぁ、やっぱラストエリクサーは使わないとだよね」
「なんの話っすか?」
「……この世界ってもしかしてあのゲームないの?」
たまによくわからないことを言う。深堀りすると『オタクの話なので……』と流されるけど、友達なら私が全然知らない話でもして欲しいと思ったりもする。
「よーし、じゃあいこっか」
「……深く考えないのがいいこともあるっすよね」
アヤへの詮索をやめようかと思ったその時、その答えを聞くこととなる。
「これ、前に先生からもらったやつなんだよね」
「先生から?」
「うん、ちょっとしたお手伝いの見返りにね。んで『友達誘って行ってきなよ』ってことだったからいい機会だと思って」
「ちょっとしたお手伝いって」
唐突に先生が話に出てきて驚くも、それならと妙に納得する部分もあった。
ただちょっとしたお手伝いという言葉には引っ掛かりを覚える。
「絶対ちょっとしたことじゃなかったっすよねそれ」
「え、うーん……?そんな大したことじゃなかったと思うけど」
「まあ、アヤの基準であればそうかもしれないっすけど」
先生はあれでいて過剰な対価を与えるタイプではない。書類仕事の見返りとして高級スイーツが出てくるようなことはあれど、基本はその場にあるもので対価が支払われることが多い。たまたま労働の対価に余りあるものが贈られたりもするけど、それはあくまで運良く手持ちにそういうものがあったから起こることで。
何が言いたいかというと、このチケットは用意しなければその場にあるはずがないものだということだ。先生がわざわざアヤのために用意して、対価としてそれを贈ったのだ。つまるところ、アヤのちょっとしたお手伝いとはそれほどの価値があったということである。もしくは、今までの積み重ねのお返しとしてのプレゼントである可能性もあるけれど。
「しかしこれが贈り物っすか……」
この店は一人で来店できないシステムになっているはず。加えて言えば、この手のお店ではドレスコードやマナーがどれだけ重要視されているかということだ。先生がそんなお店のチケットをアヤに贈ったということは、それだけアヤが誘う人物を信頼しているということに他ならない。それはアヤ自身への信頼を現しているということなのだから、アヤが先生から勝ち取ったソレがいかに大きいかがよくわかる。
わかるからこそ、それがとても羨ましい。
「おしゃれなお店行くって言ったの、間違ってなかったでしょ?」
「流石に予想外でしたけど」
限度があるだろとツッコミを入れても怒られないはずだ。これで私が着てきた服がその場に似つかわしくないものだったらどうするつもりだったのか。
いや、“アヤが信頼する友人”がそこで外すような真似はしないと思われているのだろうか。
そこまで考えていやいやと頭を振った。アヤがそこまで考えているはずがない。人を見る才能に恵まれた人間だからこその無責任な信頼だ。つまり私はその才能に認められた人間ということになり……なんだか恥ずかしくなってきた。
「どうかした?」
「なんでもないっす。で、結局お手伝いの内容は何だったんすか?」
話題を変えるべく深掘りすると、アヤは顎に手を当てて思案しだした。
「いつもらったんだっけな。確かエデン条約の事後的な何かだったと思うんだけど……」
覚えてないんかい。
「ほら、先生には結構お世話になってるじゃん?だから先生の手伝いをするって言っても借りを返すような感覚というか、ねぇ」
「あー……まあわかるっすよ。しかも結局お世話になっちゃって返せないままどんどん借りだけが増えていくみたいな」
「そうそう!リボ払いみたいだよね」
「なんてこと言うんすか」
あろうことか先生からの好意を高利子の借金扱いである。結構言い方に問題ある子だったと会うたびに思わされている気がする。
「あ、ほら着いたよ」
「うわあ……ここの何階っすか?」
「えーっと、42階だね」
「ははは……」
もう何も言うまい。緊張しながらもアヤと一緒にお店のあるビルに入っていく。
その後はアヤとディナーを楽しんだ。お店の雰囲気も良く、ゆっくりと会話と食事を堪能できた。サプライズにしてはハードルが高かったが、彼女の信頼に応えられたことが嬉しかった。