仮面ライダーメモリオン   作:バイン

1 / 8
第一巻 白銀の騎士

『おひめさまときし』

 

 むかーしむかし、あるところにちいさなくにがありました。

 そのくにをおさめているおうさまとおきさきさまのこどもに、ひとりのかわいいかわいいおひめさまがいたのです。

 

 そのおひめさまは、あるおとこのこととってもなかよし。

 げんきいっぱいにあそんだり、おひめさまのべんきょうをいっしょにてつだってあげたり、たまーに、おうさまとおきさきさまにかわいいいたずらをして、おこられたり。

 ふたりはいつもいっしょで、なかよくくらしていました。

 

 でもあるひのことです。

 おとこのこが、ながあいながいたびにでてしまうそうです。

 おわかれのとき、おひめさまもおとこのこも、わんわんないてしまいました。

 

 でも、おとこのこは、なくのをがまんして、おひめさまにいったのです。

 

 

「だいじょうぶ」

 

「ぼくはりっぱなきしになって、きみをまもってあげる」

 

 

「わかった」

 

「まってるね」

 

 おひめさまとおとこのは、ゆびきりげんまんをして、おわかれしました。

 

 

 それから、ちいさなおひめさまは、おとなになって、とーってもきれいなおひめさまになりました。

 

 あるひのぶとうかい。

 おうさまといっしょにおひめさまがぶとうかいにやってくると、そのばにいたきぞくのせいねんやほかのくにのおうじさまたちは、おひめさまにひとめぼれをしてしまいました。

 

 おひめさまのそばは、あっというまにひとがいっぱい。

 

 

「おひめさま、とってもきれいです」

 

「いっしょにおどってくれませんか」

 

「ぼくのおきさきさまになってくれませんか?」

 

 

 いっぱいのひとからはなしかけられたおひめさまはちょっとびっくりしてしまいましたが、えがおでへんじをします。

 

 

「ごめんなさい」

 

「わたし、まってるひとがいるんです」

 

 

 おひめさまはきっぱりとことわりました。

 それをきいたみんなは、ざんねんそうにしました。

 

 

 ぶとうかいのかえりみち。

 おひめさまのばしゃがきゅうにひっくりかえってしまいました。

 

 なんと、ドラゴンがばしゃをひっくりかえしてしまったのです! 

 ばしゃからにげだしたおひめさまを、ドラゴンがつかまえてしまいました。

 

 

「おねがい、たべないで!」

 

 

 おひめさまがこわがっていうと、ドラゴンはおひめさまをたべようとはしませんでした。

 

 

「おまえ、とてもきれいだ」

 

「おれのはなよめにしてやる」

 

 

 そして、じぶんのすんでいるおしろにつれていってしまいました。

 

 

 おひめさまがさらわれたことをしったおうさまは、へいたいさんをドラゴンのおしろにむかわせて、おひめさまをとりかえそうとしました。  

 

 でも、ドラゴンはとてもつよかったのです。

 へいたいさんたちはドラゴンたちにぜんぜんかないませんでした。

 

 

「だれか、おひめさまをたすけてくれるひとはいないだろうか」

 

 

 おうさまがなやんでいると、ぜんしんをぎんいろのよろいとかぶとをまとったきしがやってきました。

 

 

「わたしがおひめさまをたすけだします」

 

「ひとりでかね? ドラゴンはつよいぞ」

 

「だいじょうぶです。ぼくはそのためにかえってきました」

 

 

 じしんまんまんのきしのことばに、おうさまはしぶしぶかれをドラゴンのおしろまであんないしました。

 

 

「おひめさまをはなせ!」

 

「なかまもいないのに、ひとりでたたかうのか。おまえなんかがおれにかなうものか、くらえ」

 

 

 ドラゴンは、きしをたおそうとしました。

 とってもあついほのおや、するどいつめ。なんでもたべてしまえそうなするどいきば。

 

 でも、きしはそのぜんぶをひかるたてでふせいでしまいました。

 そして、もっていたぶきでドラゴンをこらしめたのです。

 

 

 

「まいった、おれのまけだ」

 

「もう、わるさをするんじゃないぞ」

 

 

 はんせいしたドラゴンがおしろからにげていったあとで、きしはおひめさまのところにむかいました。

 つかまっていたおりからだしてもらったおひめさまは、たすけてくれたきしにはなしかけました。

 

 

「たすけてくれて、ありがとう。でも、あなたはどこのきしなのですか?」

 

「おひめさま、ぼくはやくそくをまもりにきました」

 

 

 きしがかぶとをぬいで、おひめさまにすがおをみせました。

 なんと、そのきしはおひめさまとなかよしだったおとこのこだったのです。

 

 

 

「ずっとまたせて、ごめんなさい。きみをこれからもまもるよ」

 

「おかえりなさい、わたしのきし」

 

 

 そして、きれいなおひめさまと、つよいぎんいろのきしはけっこんして、しあわせにくらしましたとさ。

 

 おしまい。

 

 ……面白かった? ふふ。それは良かった。だってこれは、──めのために作ったお話だもの。喜んでくれたのならなによりだよ。

 

 ……私にもかっこいい騎士様ができるかな? だって? もちろんさ。

 きっと、立派なナイトがやってきてくれるよ。

 

 ────────────────

 

 桜が散って、自然が豊かに実る5月。

 GWという長い休みから仕事や学業に戻る人々が多くいる季節。

 

 ここ、公立高校『光耀高校』でも休みが明け、生徒達が休みとの別れを告げ、憂鬱な気持ちと戦いながら生徒達が登校してきていた。

 

 

 一年生の教室も、それぞれ一ヶ月で出来上がったそれぞれの友人にGWの思い出や学校への憂鬱を語らい過ごしている。

 

 

「……はぁ」

 

 

 その中の1人。

 桜のような桃色の髪は肩に届かない程度で、軽く巻いた毛先を片側で小さなハート型の髪留めでまとめている。

 整った鼻立ちにぱっちりとした瞳の可愛らしいその顔に憂いを帯びた表情を浮かべている。

 席に座って頬杖を付き、ため息を吐く姿もまるで深窓の令嬢のように似合い、その様子に男子生徒の多くがチラチラと視線を向けていた。

 そうしていると、隣の席の茶髪のイマドキギャルといった風貌の女子生徒から気さくに声をかけられる。

 

 

「どしたーん姫? ため息ついて。GWなんかやなことあった?」

 

「そういうわけじゃないけど……また告白されちゃって……」

 

 

 これで今年は三人目なんだよね、と『三国 姫華(みくに ひめか)』はため息をつく。

 整った目鼻立ちに高校1年生としては破格のプロポーション、部活動では演劇部の期待のエース。少女漫画の主人公がそのまま出てきたような少女が、目の前の告白されたという一部の人間が聞けば血涙を流して羨ましがるような言葉を悩みとして話す。

 ……しかも、本人の性格的に告白した相手に対しての侮蔑や嘲笑は混じっておらず、むしろ合わなかったことに対する謝意の方が強いから質が悪い。

 目の前でその友人のギャル『竹田 神楽(たけだ かぐら)』は苦笑する。

 

 

「えー、不幸自慢風自慢?」

 

「違うもんっ! ……告白断るのも簡単じゃないし……罪悪感とか感じないわけじゃないっていうかそれで……」

 

「それモテない系女子が聞いたらキレるやつじゃね」

 

「でも……タイプじゃないっていうか……その……」

 

「姫、玉の輿じゃないと無理ぽなんだっけー、理想たかすぎると苦労するべ?」

 

「た、玉の輿狙いじゃないもんっ! 私はただ……王子様みたいな人がいいなぁってだけで……」

 

「ちょいちょいちょい姫! 隣の席に……」

 

 

 からかいに対して慌てた調子で姫華が否定しようと勢い余って立ち上がると、後ろの席に椅子ががん、とぶつかる。

 あちゃあ、と神楽が頭を抱える。こういうおっちょこちょいなところがあるからなぁ、と思いながら後ろの席を見やる。

 

 

「ご、ごめん! ええと……志道くん、だよね」

 

 

 後ろの席の男子生徒の名札をチラ、と見て名前を思い出しつつ頭を下げる。

志道 英雄(しどう ひいろ)』。……英雄というかなり珍しい名前で、自分の隣の席であったのに記憶に残らない。というか、後ろの席にいたということも今思い出したくらいだ。

 黒い前髪を目元が隠れそうほどにまで伸ばしたマッシュヘアのため顔立ちは伺えず、良く言えば落ち着いた……悪く言えば暗い雰囲気が漂っている。

 

 

「……いいよ。気にしないで」

 

 

 短く返した後に英雄はぶつけられた机を無言で直してすぐに目線を文庫本へと戻す。そして全く表情を変えることなく、そのまま読み進めていく。

 謝罪が受け入れられたかに少し戸惑っているのに反して、神楽は謝ったのをみるや話を戻し始める。

 

 

「……あ。そういや姫さぁ、転校生のこと、聞いた?」

 

「転校生?」

 

「そ。転校生。友達が朝知らないイケメン来てたって言うんだよねー、撮影とかアイドルじゃねって話しかけてみたらウチらの学校来るって言うし、ワンチャンうちのクラス来るんじゃねみたいな?」

 

「来るかもって……結構曖昧じゃんそれ」

 

「まあワンチャンだって。そいつが王子様系だったらどうするよ」

 

「もうっ! いじめないでって……」

 

「はーい、みんな久しぶり、GW楽しんできたかー」

 

 

 話しているとガラガラという音を立てて教室の扉が開けられ、無精髭が特徴的なくたびれた雰囲気の中年男性にしてクラス担任である『磯辺 風太郎』が入ってくる。

 それを見て慌てて自分の席に帰る者、席についたままで前後左右の友人と会話を続ける者達等によって一気に騒がしさが増し、教壇に立った磯辺が教壇を軽く叩くと、収まる。

 騒ぎが収まったのを確認した磯辺が朝礼を始める。

 

 

「えー、知ってる人もいるかもしれないが、今日からこのクラスで一緒に過ごす転校生の紹介をするぞ、じゃあ野瀬くん、入ってきてくれるかな?」

 

 

 先生が扉の外へ手招きすると、1人の男子生徒が入ってくる。

 その姿を見て、一気に教室がざわめいた。

 180cm程のスラッとした高身長に燃えるような赤い髪を短く切り揃え、整った目鼻立ちに爽やかな笑み。

 まるでテレビに出てくるようなアイドルがそのまま出てきたかのような姿に、男子からはざわめきが、女性からは黄色い歓声があがる。

 

 

「はいはい静かに! ……じゃあ、自己紹介を」

 

「はじめまして、野瀬 竜です! 今日からよろしくお願いします!」

 

 

 爽やかな笑みと綺麗なお辞儀。

 イケメンがこれをすれば、誰から示し合わせたともなく自然と拍手が鳴り出すものだ。

 拍手に笑顔で応じるのも謎に手慣れている。

 

 

「じゃあ、席は……三国の隣で」

 

「はい! ……よろしく、三国さん」

 

「よ、よろしく……」

 

 

 指定された席……姫華の隣の席に足早に向かい着席し、姫華へと爽やかな笑みを向ける。

 自らの理想とした王子様のような顔立ちの男子からの爽やかな笑みを向けられた……にも関わらず、心がときめかない。

 むしろ、どこか……彼に対する不安のようなものが湧き上がってくる。

 

 

「ねえ、三国さんって、部活どこ入ってるの?」

 

「え、演劇部だけど……」

 

「へー……部員って募集してる?」

 

「部長に聞かないと分かんないかな……」

 

「じゃあ、見学だけでも良かったらさせてくれない?」

 

「部長と相談してからになるけど……それで良かったら」

 

 

 ニコニコとした爽やかな笑みのまま話しかけてくる竜。

 ……まるで獲物をゆっくりと罠に掛ける肉食獣のように思えたのは、気のせいだろうか。

 

 ────────────────

 

 1週間。

 たったそれだけで、竜はクラスの中心人物となった。

 見た目は抜群、教師からの評判も抜群で成績優秀、スポーツをやらせれば本職の部員ですら敵わないほどの腕前を見せる。

 今日日少女漫画でも出てこないような完璧超人の登場にクラスの人気を一気に集め、いつだろうと彼の周りには人だかりが出来る状況だ。

 そして噂の彼は今。

 

 

「三国さん! 一緒にご飯食べよ!」

 

「三国さん、班の人数足りないからさ、一緒にならない?」

 

「三国さん、休み空いてる?」

 

「三国さん!」

 

「三国さん!」

 

「三国さん!」

 

 

 

「……はぁ」

 

 

 どんな理由なのか、姫華から離れようとしなかった。

 最初は少し偽物感があるとののイケメンから注目されることに対して悪い気はしなかったものの、それが1週間も続けば流石にストレスを感じてしまう。

 昼食を急ぎ済ませ、見つかる前に図書館にこっそりと逃げ込んだというわけだ。

 

 

 

「はぁぁぁ……なんで私にこんなつきまとって来るんだろ……」

 

「あの」

 

 

 静かな図書室の室内で姫華が机に突っ伏してぐったりとしていると、後ろから声がかけられる。

 

 

「ひゃあ!?!?!?」

 

「……びっくりさせて、ごめん。でも……図書室では静かにね」

 

 

 素っ頓狂な声をあげて振り向けば、マッシュヘアの男子、志道英雄が無表情で佇んでいた。

 物静かな口調で子供に諭すように、指を唇に当てて静かにするようにジェスチャーをする。

 姫華が羞恥から赤面していると、英雄はその隣の席に座って、文庫本を読み始める。

 ちらっと表紙を見てみれば、『おかしな便利屋四人組』とある。最近知名度の上がってきた冒険小説のシリーズだったはず。

 

 

 

「志道くん、結構読書好きなタイプ?」

 

「うん」

 

「え、えっと……志道くんは野瀬くんのこと、気にならないの?」

 

「……少しだけ」

 

「そ、そっか……」

 

 

 ……見事に会話が続かない。淡々とした反応を返されるのみだ。

 図書室内で下手に話しかけ続けるのもと思い自分も何か読むかと本棚に向かおうとして……件のストーk……竜がこちらを探している様子が目に映ってしまった。

 慌ててその場は隠れてやり過ごしたが、ここに隠れ続けるのも限界がある。

 そう思って、こそこそと隠れながらその場を離れる。

 

 

「ご、ごめん、私、行くね……!」

 

「……彼には気をつけて」

 

「えっ?」

 

 

 小さく声が聞こえたような気がして足を止めて英雄を見るも、文庫本に熱中している様子が見えるのみだ。

 気の所為と結論づけて、足早に去っていく姫華の後ろ姿を、英雄が見つめていた。

 

 ────────────────

 

「……結局こうなっちゃうかぁ」

 

「一緒に帰ろ、三国さん☆」

 

 

 休み時間は逃げられても、結局放課後に待ち伏せされているのではどうにもならない。

 帰り道でもピッタリと隣に張り付かれているのは流石にイケメンだろうと喜びよりも恐ろしさの方が勝る。

 

 

「じゃあ、私、この辺で……」

 

「今日結構暗いし少し送ってくよ」

 

「いやまだ明るいし」

 

「最近物騒だからさ」

 

 

 分かれ道に差し掛かったタイミングでなんとか離れようと切り出す。

 だがまだ粘る。

 ……とはいえここまでついてこられると、流石にもう犯罪の域な気がする。そう思い、姫華は強気に出た。

 

 

「ああ……もう……! ちょっといい加減に!」

 

「…………あーあ! もう面倒くせえ」

 

 

 突如として、竜が丁寧な口調から粗野な口調に変わり、乱暴に姫華の服を掴む。

 

 

「ちょ、ちょっと! 離し……ひっ」

 

 

 乱暴に手を掴んできた竜に抗議しようとした姫華は、目の前の光景を目にして息を呑む。

 ゆっくりと、竜の身体が人間のそれとは別の物へと変貌していく。

 爬虫類に似た鱗に覆われた体表に鳥のものとは違う腕と一体化した翼に、鏃のような細く鋭い尻尾。

 それはまるで……

 

 

「ど……ドラゴン……!」

 

『こっちが下手に出てやってりゃイチイチ抵抗しやがるし、ダリぃなぁ……』

 

 

 エコーのかかった哄笑と共に鋭い牙の生えた口が眼前に迫る。

 必死にこちらを捕まえているその手を剥がそうと暴れ藻掻くも、万力のような力で捕まえられている手は剥がれそうにない。

 その抵抗を嘲笑いながら、両手でしっかりと捕らえられる。

 

 

『心配するなよ……お前を食い殺すわけじゃねえんだ、お前はこのワイバーンテラー様の大事な成果だからなぁ……』

 

「な、なにを……」

 

 

 目の前の竜が変異した姿……『ワイバーンテラー』と名乗った怪物が姫華の身体に手を翳すと、姫華の全身に黒い触手が巻き付いていく。

 振りほどこうと藻掻いてもその拘束が緩むことはない。

 

 

「なにこれ!? この! ……んーっ! 解けない……!」

 

『ヒヒヒ……さあてお姫様……お城で舞踏会が待ってるぜぇ……?』

 

「ふざけないでよ! 誰か! おまわりさん! ……誰もいないの!? 助けて!」

 

 

 必死に声を張り上げて、救いの声を求めるも、その声が届くことはなかった。……届いたとしても、目の前の怪物から、彼女を救い出さねばならないのだが。

 ……物語のヒロインなら、ヒーローが颯爽と助けに来る。だがこれは現実だ。あの怪物を倒せるようなヒーローが今すぐ現れることなど……

 

 

 その時。

 

 こちらへと向かってくる足音が聞こえてくる。

 そちらへ目を向ければ……

 

 

「……英雄くん?」

 

 

 マッシュヘアーの男子生徒……志道英雄が、そこにいた。

 目の前の異形の姿を見ても、怯えも恐れも動揺も無い。むしろ、髪の間から覗くその瞳には、闘志が宿っていた。それでいて、口元には、優しい笑みが浮かび、姫華を安心させようと言葉が紡がれる。

 

 

「大丈夫。……すぐに助けるから」

 

『守るぅ? ヒャハハハハハ! おいおい! お姫様を守るナイト様のお出ましってかよ!』

 

「そうだ」

 

 

 懐から表面に騎士の描かれたメモリーカードとメモリーカードスロットの2つついた本棚のようなデザインのベルト型のデバイス、『リーディングドライバー』を取り出し、腰へとあてがうと、ベルトが伸びて腰へと巻き付く。

 髪をかきあげれば、闘志が燃え盛る黒い瞳が露わになる。

 

 

「僕は」

 

『Knight of legacy!』

 

『Now reading!  Now reading!』

 

「彼女を守るために、ここにいる」

 

 

 メモリーカードをベルトのスロットに挿入すると、一冊の巨大な本が現れ、パラパラとページが開かれる。その中から、馬上槍と長方形の盾を手にし、白銀の鎧を纏った二頭身ほどのマスコットのようにデフォルメされた騎士、『ナイトサーヴァント』が現れる。

 

 

「変身」

 

 

 そう詠唱し、ベルトの上部に内蔵されたスイッチを押し込む。

 直後、騎士がパーツごとに分離し、白のボディースーツを纏った英雄の身体へと装着されていく。

 

 

『Reading! Knight of legacy! 騎士道、ここにあり!』

 

 

 光が止んだその場にいたのは……背中に真紅のマントをはためかせ、純白と銀の重厚なプレートアーマーを纏い、左腕に『M』の紋章が刻まれたカイトシールドを手にした白銀の騎士。

 中世の騎士がよくしていたアーメットタイプの兜を模した頭部。その目元を覆っていたバイザーが持ち上がり、その下の青い宝石のような瞳が露わになる。

 その騎士の名を……

 

 

『仮面ライダーメモリオン。……彼女はお前には渡さない』

 

『仮面ライダーァ? メモリオン? カッコつけてんじゃねえぞ!』

 

 

 メモリオンの言葉に対して怒ったワイバーンテラーが羽根を広げ突進してくる。

 それを左腕の盾……『レガシールド』で正面から受け止め、逆に盾で殴りつけるようにして、弾き飛ばす。

 

 

『おおおおお!?!? テメェ……!』

 

 

 怒りの声を上げるワイバーンテラーには目もくれず、メモリオンは黒い触手に囚われた姫華の元へと一直線に向かう。

 レガシールドの縁で触手を縦一文字に斬り裂けば、触手をすべて断ち切って彼女を囚われの身から解放する。

 

 

「きゃっ……」

 

 

 直立の拘束から急に解放されたことでつんのめった姫華をすぐさま両手で受け止め、お姫様抱っこで抱え上げる。

 

 

『もう大丈夫。……ごめん、怖い思いさせちゃって』

 

「う、うん……ありがとう……」

 

 

 目の前のメモリオンの青い瞳と優しい声色に対して安心感を抱くと同時に、まるで物語のお姫様のように扱われることに姫華は喜びと羞恥から顔を赤らめる。それに気付いた様子もなく、メモリオンは彼女へと声をかけつつ、揺れを与えないように離れた場所まで運び、優しく地面へと下ろした。

 

 

『……ここで待ってて。すぐ終わらせるから』

 

 

 そして、再度メモリオンはワイバーンテラーへと対峙する。

 

 

『スカしやがって……丸焦げにしてやらぁ!』

 

『フッ!』

 

 

 ワイバーンテラーが口から火球を放てば、メモリオンはそれをレガシールドで受け止める。

 しかし一度で通じないと分かったワイバーンテラーは連続して火球を放ち、メモリオンをその場から動かさせない。

 

 

『そらそらそらぁ! 守ってばかりかよ!? なら……こいつで焼き尽くしてやるぜ!』

 

 

 防戦一方のメモリオンが動けないと見るや、口に炎を溜めて、先程以上の火力の籠もった火炎を吐息のごとく放射する。

 その猛烈な炎の奔流がメモリオンを襲い、一瞬で全身が飲み込まれ、姿が見えなくなる。

 

 

「うそ……」

 

『ヒャハァ! 丸焼き一丁あがりぃ!』

 

 

 炎に飲まれたメモリオンの姿を見た姫華は息を呑み、ワイバーンテラーは勝ちを確信したか、炎を吐き出しながら快哉の声を上げる。

 

 だが。

 

 

『……ハァッ!』

 

 

 団扇のように盾を振って炎の中から、メモリオンが現れる。炎に飲まれたにも関わらず、その白銀の鎧には煤1つついていない。

 

 

『んなっ!?』

 

『今度はこっちの番だ』

 

 

 

 渾身の炎を無傷で耐えきられたことにワイバーンテラーが驚愕していると、メモリオンが白銀の馬上槍『ナイトランサー』を召喚し、一気に間合いを詰める。

 

 

『フッ!』

 

『ギャッ!?』

 

 

 自らの上半身ほどもあるナイトランサーを軽々と振るい、ワイバーンテラーの身体へと突き立てる。

 体表の鱗を砕き、その肉を抉るような突きにワイバーンテラーがのけぞる。

 

 

『ハァッ! フッ! セヤッ!』

 

 

 防ぎきれず大きな隙を晒したのを見逃さず、怒涛のような鋭く重い突きが、ワイバーンテラーの身体に風穴を開けていく。

 

 

『があああ! クソが! んなとこで終わってたまるか……!』

 

 

 自慢の火炎は通じず、自らの身体は穴だらけ。圧倒的な自分の不利を悟ったワイバーンテラーは翼を広げ、空へ逃れんとする。

 

 

『逃がさない』

 

『ぎっ!? ……し、しまった……!』

 

 

 しかし、背を向けた瞬間にメモリオンはその翼に対して瞬時にナイトランサーを突き立てる。

 飛膜に穴をいくつも開けられ、空という安住の地への移動手段を失ったワイバーンテラーに、逃げ場はもうない。

 

 

『これでエンディングだ』

 

『Climax Reading! Knight strike!』

 

 

 それを見たメモリオンはナイトランサーを地面へと突き立てて、ドライバー内のメモリーカードを一度抜き、直ぐ様再度挿入し直す。

 すると電子音声と共にナイトランサーが分解され、光の粒子へと変わり、右足へと集まっていく。

 

 

『……ハッ! デアアアアッ!』

 

 

 メモリオンが跳躍し、右足をワイバーンテラーに向ければ、光の粒子が巨大な剣を形作る。

 そして、ワイバーンテラーへとその足を突き立て……否。突き抜ける。

 

 

『ああああああ……!? 俺がこんなところで……終わるのかよおおおおおお!!!』

 

 

 ワイバーンテラーの絶叫をバックに、メモリオンが片膝をついて着地。

 そしてワイバーンテラーが上下へ両断され、その直後……爆散する。

 

 

 白銀の装甲に一瞬炎が映え、そして白い輝きに戻る。

 

 

『……よし』

 

 

 ふう、と一息吐いて後、メモリオンがドライバー内のメモリーカードを抜き取る。すると装甲がバラバラに解け、英雄の姿へと戻る。

 

 

「……終わった……の?」

 

 

 そこへ、ワイバーンテラーの爆散を見て、恐る恐る戻ってきた姫華がやってきた。

 先程の怪物に怯えつつも、英雄の姿を見た瞬間に、走り込んでくる。

 

 

 

「志道くん!? 大丈夫だった!? あの怪物は!? さっきの騎士の姿って一体なに?」

 

「……ごめんね」

 

 

 頭に浮かんできた疑問を片っ端から口にする姫華の姿を見て、英雄は小さく微笑みを浮かべる。

 

 

「……全部、忘れて」

 

「へ……? ─────」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、立ってられないほどの眠気が姫華を襲う。

 唐突な出来事に抗いようもなく、意識が闇へと落ちていく。

 

 

「大丈夫。……怖い思い出は、もうなくなるから」

 

 

 意識が完全に無くなる瞬間、聞こえたその言葉にど心が落ち着くのを感じた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。