仮面ライダーメモリオン   作:バイン

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第五巻 邂逅 騎・海・魔

 何もかもを飲み込むような闇の中。

 異形の『魔王』の視線は、何も無い闇の中でぽつんと浮かぶ三人の仮面の騎士達の肖像画に向けられていた。

 

 

「どうかなさいましたか、魔王様」

 

『……【顔無し】カ』

 

 

 唐突に聞こえてきた声に目を向ければ、そこには黒いシルクハットにすらりとした長い手足に似合うタキシードを着こなした男がいる。携えたステッキやスーツ等のきっちりとした身なりの紳士然とした男の顔には……何も無い。マネキンのようなのっぺりとした平面があるのみだ。

 顔のない男は暗闇の中に靴音を響かせながら、魔王の巨躯の足元にやってきて、同じようにの仮面の騎士達の肖像画を見る。

 

 

「『仮面ライダー』達のことでお悩みですかな?」

 

『コチラヲ 突キ止メヨウト 探リ回ッテイル』

 

「『姫』の捜索にも支障が出ていると」

 

『テラー ノ 生成二 エネルギーヲ 割キスギル 訳ニハ イカン』

 

 

 顔無しの男が合いの手のように質問を返せば、魔王はその異形の顔を向ける。

 常人であれば恐ろしさで言葉を失い、失神してもおかしくないほどの威圧感を向けられる。

 そんな状況にあって尚、顔無しの男は飄々とした態度を崩さない。

 

 

「少し……現場の皆様に頑張ってもらいましょうか」

 

 ────────────────

 

「姫。アンタ……変わったね」

 

「え?」

 

 

 英雄達との話から一週間が経った日の朝。

 生徒達が登校してきて騒がしくなってきた教室内にて、姫華は神楽からそんなことを言われた。

 

 

「変わった……かなぁ? 髪型とかはそんな変えてないし……」

 

「とぼけちゃってぇ〜このー」

 

「あいたー」

 

 

 人差し指で額をぺしりと押される。じゃれ合い故に痛みはないが流石に頭をのけぞらせ、ポーズで額を抑える。

 神楽はニヤニヤと笑みを浮かべて、額を抑えて不満そうにしている姫華に質問する。

 

 

「そんで? アンタを変えた王子様こと志道クンとはどこまでいったのですかなお姫様?」

 

「へ?」

 

 

 英雄の名前を出され、一瞬思考が止まる。

 そして再始動した思考は脳裏から一週間前の記憶を運んでくる。学校終わりに英雄から昨日の話を聞こうとしてからの記憶が蘇って、照れと焦りによって姫華の顔は真っ赤になった。

 

 

「し、志道くんの話題がなんで出てくるのかな???」

 

「……そんな分かりやすいくらいの動揺ある? いやー、姫が毎日登校の時に一緒に来てるの見てたらそりゃあ誰だって分かるって」

 

 

 ニヤニヤしながらこちらを追い詰めるように顔を寄せる神楽から目を逸らしてしまう。

 

 英雄の家で様々なことを知ってから一週間。姫華と英雄は登下校を共にし、部活が終わってからの放課後は英雄に送迎して帰宅するようになっていた。

 理由は勿論、姫華を拉致しようとするテラーから守るためであって男女での交際や異性交遊の一環などではないはずである。

 ……そう自分で思いながらも、本屋で仲良く本を見繕ったり、緊急時とは言え外泊してしまうような形になったり、ベッドでの……

 

 

(わあああああああああああ……!)

 

 

 そこでブンブン頭を振って思考を無理やりに切り替える。まずい。ある程度ぼかして話したとしても今のままでは付き合ってるどころか進んでいるカップルと誤解されかねない。というより自分で冷静に見返してみると完全にそういう関係にしか見えない。

 それでもなんとか誤解(?)を解こうと頭を捻って考えていると。

 

 

「お。噂の王子様がやって……き……」

 

「? ……!?」

 

 

 入り口を見て硬直した神楽に倣ってそちらを見てみれば、そこにいたのは噂の『王子様』こと英雄。だがまとっている雰囲気はいつもとは違う。

 いつもしていた目が隠れるほどのマッシュヘアーから、短く揃えられた爽やかなツーブロックに髪型が変わっている。

 外見的に変わった点としてはそれだけであるが、周囲に与える印象は全く違う。

 落ち着いた物静かで目立たない雰囲気を醸していたのが、綺麗な瞳や整った目鼻立ちが露わになり、爽やかな雰囲気の美男子、といった風貌に変わっていた。

 その姿を見て、クラス中が一気にざわつく。

 

 

「え、ウチのクラスにあんなカッコいい人いたっけ……!?」

 

「ちょっといいかも……」

 

「あいつ、図書委員の志道だっけ? もうちょい暗い感じじゃなかったか?」

 

「イメチェンしたら急にイケメンになるって……漫画かよ」

 

 

 姦しく騒がしくなった教室内で、その噂の張本人はどこ吹く風といった感じに自分の席に向かい……座る前に、前の席の姫華に微笑みかける。

 

 

「おはよう、三国さん」

 

「お……おはよ……か、髪切ったんだね……?」

 

「うん。長くなってたし」

 

 

 席に座った英雄の顔をついまじまじと見てしまう。

 整った鼻立ちに吸い込まれそうな深い瞳と完璧なパーツの揃った容姿に浮かぶ、優しく温めてくれる陽だまりのような笑み。

 そんな少女漫画の主人公も裸足で逃げ出すような王子様みたいな笑みを向けられ、姫華の顔に火が付いたように熱が溜まって熱くなっていくのが分かった。

 そんな顔をしているのを横から神楽に覗かれる。

 

 

「……タイプかね?」

 

「ん゛な゛っ」

 

 

 姫華が年頃の女性が出して良いものではない声を出したのにドン引きしつつも、惚れた腫れたを好物として生きる女子高生としては今の彼女は格好の獲物。

 ニヨニヨと笑みを浮かべてさらに問い詰めよう……としたところで、チャイムが鳴り響き教卓側の扉が開いて担任教師である磯部がやってくる。

 

 

「おーい席戻れー、朝礼始まるぞー」

 

 

 

 生徒達が慌てて自分の席に戻り、神楽も無念そうに席に戻っていく。

 

 

(た……助かった……ありがとう先生……!)

 

 

 内心磯部に対して感謝の言葉を告げていると、その磯部が周囲を見渡して、静まったのを確かめて話し出す。

 

 

「はいおはよう、今日はみんなに転校生を紹介するぞー、うちのクラスで一緒に暮らすことになる仲間だから、みんな仲良くするんだぞー」

 

 

 転校生がやってくる。その事実に再度教室がざわつきだす。

 転校生の話を聞いて、姫華はどこか奇妙な感覚を感じ、こっそりと後ろの席に顔を近づけて英雄と話し出す。

 

 

「……転校生って前に来たことあったっけ……? なんか前もこの話聞いたような気がして……」

 

「………………気の所為、じゃないかな」

 

 

 憮然とした雰囲気でそっぽを向いた英雄の返答に首を傾げていると、磯部がトントンと出席簿で机を叩きだす。

 その音で徐々に騒ぎが静まっていき、静かになったことを確かめて磯部が再度話し出す。

 

 

「ン、転校生は二人いるけど、どちらとも仲良くしてあげるように。じゃあ二人とも、入ってきてくれるかい?」

 

 

 磯部が扉の外へ手招きすると、生徒が二人入ってくる。

 その二人を見た生徒達に、再びどよめきが広がる。

 なぜならその片割れ、茶髪の大柄な生徒の左目には大きな傷があり。

 もう片割れは銀髪にスタイル抜群の美少女であったからだ。

 

 

「じゃあ二人とも、自己紹介をお願いできるかい?」

 

「ッス、転校してきました逆木大海っす、よろしく」

 

「祈間希空と申します、よろしくお願いします」

 

 ────────────────

 

 高校生に対して少年漫画に出てきそうなワイルドな傷のある男とスタイル抜群の銀髪の美少女がやってきて注目を受けないわけがない。

 休み時間には興味津々の生徒に群がられていた。

 

 

「逆木くんってすっごいがっちりした身体してるけど何かスポーツとかやってたの?」

 

「特にしてねえけど実家が漁師でさー、手伝いとか泳いでたらこんなんになったわ」

 

「ほー……どう!? 水泳部入らない!? あたし部長に紹介するよ!」

 

「部活は特に入るつもりないんだよなー、金稼げる感じの部活とかありゃいいけど」

 

 

 男子生徒こと大海は、質問に対して楽しそうにノリノリで受け答えを返し、

 

 

「祈間さんってさ、すっごい綺麗な髪してるよねー、ホントに日本人?」

 

「母方の祖母が外国出身でして、その血が強く出たんだと思います」

 

「肌も綺麗だしいいなー、使ってるコスメとか後で教えて!」

 

「特にこだわりはないのですが……」

 

 

 女子生徒こと希空は、少し戸惑いつつも返していく。

 その二人をじっと見つめている英雄に、姫華は後ろの席から声をかける。

 

 

「英雄くん、どうしたの? ……もしかしてあの二人って……テラーだったりする……」

 

「いや、違うんだけど……」

 

 

 敵意こそないが、二人をじっと観察している英雄。

 二人の方はその視線に気付かない……と思いきや。

 

 

「ん……」

 

「あら……?」

 

 

 話の合間にちらりと英雄へと視線を向けてくる。

 大海はにやり、と笑ってさりげなくピースサインを見せ、希空は軽く会釈。

 傍から見ると単なる挨拶にしか見えないようなその行為を見た英雄は、何かを合点したかのように頷き、姫華に顔を向けた。

 

 

「……今日、ウチに来てくれる?」

 

 ────────────────

 

「ねえ志道くん、あの二人って……どういう関係なの?」

 

 

 その日の放課後。

 英雄の家に向かう途中で、姫華は英雄に尋ねた。

 昼間に彼等の素性を聞いた時にはテラーではない、と応えた。では何者なのか。

 その事を改めて尋ねてみると、英雄は少し考えた様子を見せてのちに姫華に答える。

 

 

「アルスのところで、リーディングドライバーの適合者は四人いるって話したよね」

 

「うん。英雄くんの他にも仮面ライダーがいるってアルスさん言ってたよね」

 

「……もしかしたら、あの二人が適合者なのかも」

 

「えっ!?」

 

 

 英雄ことメモリオン以外にリーディングドライバーを持っている人間がいる。つまり、あの二人も『仮面ライダー』かもしれないということ。 

 英雄は思案するように顎に手を当て、考え込む様子を見せる。

 

 

「もしそうなら、多分アルスに会うためにこっちに……ッ! 危ない!」

 

「きゃっ!?」

 

 

 考え込んでいた英雄であったが、唐突に姫華を抱き寄せる。

 いきなりの出来事に反応も抵抗も出来ず、丁寧に寄せられたことで身体に痛みなどはなかったものの、強く抱きすくめられたことで英雄との距離がかなり近くなる。

 

 

「あ、わわわわわわ……! ち、近……!」

 

「ごめん、大丈夫!? 怪我してない!?」

 

「ししししししてないけど、顔、近……」

 

 

 顔を紅潮させてしどろもどろになりながら答える姫華。

 無事、という言葉を聞いて安堵したように息を吐いた英雄だったが、すぐに戦意を込めた目をある方角に向ける。

 

 

『ほう……ワシの矢を避けるとは勘のよい奴。流石は「仮面ライダー」といったところじゃな』

 

 

 英雄の視線の先にいたのは人間の子供ほどの体格のフード付きの茶色のローブを被り、クロスボウを手にした人物。人間……ではない。フードの隙間から覗くその顔は、植物のような緑色でパーツも人間のものとはかけ離れた醜く悍ましいもの。

 

 

『カカカ……それでこそ我が倒す価値があるというものよ』

 

 

 続いて鈍色の輝きを放つ鎧を纏った騎士が現れる。

 しかし、メモリオンのような凛とした騎士らしい姿とは程遠く、あちこちの塗装が剥げた鎧に血のついた斧と絶叫している顔のようなデザインの盾。そして何よりも、鎧を着ている本人は骸と化しカタカタと虚ろな笑い声をあげている。

 

 

『ケーッケッケッケッケッ! リンチしてでもやっちまえって中々気合い入ってるじゃねえのよ、上の連中も!』

 

 

 最後に現れるのは魚人。

 ギョロギョロとした魚眼と全身にびっしりと生えた鱗。その手には三叉の槍、トライデントを携え、下卑た笑みで二人を見ている。

 それぞれ『リリパットテラー』、『リビングアーマーテラー』、『マーマンテラー』。

 三体のテラーを前にしても、英雄に恐れや動揺はない。

 

 

「……三国さん、下がってて」

 

 

 姫華を下がらせ、リーディングドライバーを腰にあてがい、懐からレガシーナイトメモリアを取り出し、セットする。

 

 

『Knight of legacy!』

 

「変身」

 

『Reading! Knight of legacy! 騎士道、ここにあり』

 

『させぬわぁ!』

 

 

 変身を止めようとリリパットテラーのクロスボウから矢が放たれるもその全てをナイトサーヴァントの盾が防ぎきる。そして。白銀の騎士がそこに立つ。

 

 

『……何体来たって負けるつもりはない』

 

『ほざいてなぁ!』

 

 

 ナイトランサーとレガシールドを構えたメモリオンに、マーマンテラーが挑みかかる。

 トライデントの突きを盾で受け止め、逆にナイトランサーを突き出しその体に突き立てようとする……が。

 

 

『カーカカカ! 我を忘れるなよ!』

 

『チ……』

 

 

 リビングアーマーテラーに割って入られ、盾で防がれる。

 振り返してきた斧はそこまでダメージになることはないが、こちらからも攻め手に欠ける。

 ならば攻め手を変えるしかない。そう考えたメモリオンが別のストーリーメモリアを取り出し……

 

 

『ッ!?』

 

 

 手元に飛んできた矢にはたき落とされる。

 飛んできた方角にはクロスボウを構えたリリパットテラーがニヤニヤと笑みを浮かべ、次の矢を装填して放ってくる。

 慌てて盾で防ぐも、足が止まった隙を突くようにマーマンテラーが死角からトライデントを突き出した。

 盾で防ごうにも間に合わず、鎧にトライデントが突き立てられ、金属同士が擦れる音と共に火花が散る。

 

 

『ぐ……そういうことか!』

 

 

 痛みに悶えつつも身を翻して二体の接近してくるテラーから距離を取れば、追い立てるように矢が次々と飛んできて、それを防げばまたトライデントが伸び、反撃しようとすれば盾で塞がれる。

 この三体のテラーは、自分の役割を完全に徹底している。

 動きが速く鋭いトライデントを持つマーマンテラーは攻撃を。

 動きは鈍いもののメモリオンの攻撃を防げるリビングアーマーテラーは防御を。

 そして距離を取って正確に矢を放てるリリパットテラーは妨害を。

 それぞれが自分の役割をこなすことで、メモリオンに対して有利を取っているのだ。

 

 どう連携を崩すかと間合いを図ろうとするメモリオン。

 そこへ。

 

 

「きゃああああああああああああ!」

 

『ッ!? 三国さん!』

 

 

 姫華の悲鳴が聞こえてくる。声の方を見てみれば、姫華の目の前には一体の異形が。

 ぬらぬらとした粘液塗れのいびつな円柱のような身体に、胴体の真ん中にある一つの目が愉快そうに歪み、牙が生えた口がゲタゲタと笑い声をあげる。

 怪物、『ローパーテラー』の身体中から突き出た無数の触手が姫華を取り囲むように伸びていく。

 

 

『ゲッゲッゲッゲッ! お嬢ちゃんは俺と一緒に行こうぜぇ……楽しいところに連れて行ってやるよ!』

 

「い、いや……来ないで……!」

 

 

 生理的に嫌悪感を抱きそうな異形が自分を捕まえようと文字通り食指を伸ばしている。その事実に身震いしなんとか逃れようと辺りを見回す姫華であったが、既に触手によって逃げ道は塞がれている。

 

 

『姫華さ……ぐっ!?』

 

『ヒャハァ! 余所見してる余裕があんのか!?』

 

 

 救助に向かおうとするメモリオンも、三体のテラーの連携によって身動きが取れない。

 絶望的な状況に姫華が目を瞑った瞬間。

 

 

 ローパーテラーの触手が弾け飛んだ。

 

 

『があああああああっ!?!? だ、誰だ!』

 

 

 何本か触手をもぎ取られ激痛に悶えるようにうねるローパーテラーだけでなく、その場にいた全員がそれを為した相手に目を向ける。

 そこには、二人の戦士がいた。

 

 

『おいおい、懇親会の前から大盛りあがりじゃないのよご同輩』

 

 

 片方は海賊。

 今弾丸を吐き出したばかりで硝煙をあげるマスケット銃、フリントローグを手にした仮面ライダーリコレイド。

 

 

『興味深いですね、テラーの皆様がこのように連携をするとは……』

 

 片方は魔法使い。

 どこか呑気に四体のテラー達を眺めている仮面ライダープレア。

 

 二人の戦士にテラー達が気を取られている間に、メモリオンが姫華の元に駆けつける。

 

 

『三国さん……! ごめん、俺が不甲斐ないばっかりに……』

 

『ううん、もう大丈夫だから……』

 

 

 恐怖と嫌悪感でがたがたと身体を震えさせる姫華に優しく寄り添い、ローパーテラーから距離を取る。

 そこに、リコレイドとプレアが歩み寄ってくる。

 

 

『はじめましてー……って言ってる場合じゃない感じだなこりゃ』

 

『あとは私たちにお任せください』

 

『……いや。奴らを片付けてからだ』

 

 

 三人の仮面ライダーが並び立ち、テラーに相対する。

 

 

『ち、ちくしょう! この町に仮面ライダーは奴一人だって聞いたってのに……!』

 

『カカカ! 構わん構わん、一体も二体も三体も変わらんよ』

 

『むしろこいつら全員仕留めりゃ三倍ドンってこったろ?』

 

 

 ダメージを負ったローパーテラーは尻込みする一方で、三体のテラーは余裕を崩さない。

 三人の戦士と四体の怪物が、激突する。

 

 

『おいおい、弓で銃に勝とうってか?』

 

『ぬう! 粋がるなよ小童!』

 

 

 リコレイドが軽快にパルクールを行いながら絶え間なく鉛玉をリリパットテラーへ放てば、それを最低限の動きで避けつつクロスボウを撃ち返して反撃する。

 飛んできた矢をザンパイレーツで叩きつけ落としながら、リコレイドは炎のマークが描かれたメモリーカードを取り出す。

 

 

『ならこいつはどうだい!』

 

『Enchant Frame 海賊は炎を纏う』

 

 

 メモリーカードこと『フレイムメモリア』をリーディングドライバーに差し込めば、額のドクロマークが燃え上がり赤く変わる。

 姿を変えたリコレイドがフリントローグの引き金を引けば、飛びでてくるのは燃える炎の弾丸。

 

 

『何!? ぬおおおおお!?』

 

 

 同じように躱そうとしたリリパットテラーであったが、弾丸が炸裂することで避けた直後の爆風に焼かれ、宙に打ち上げられる。

 決定的な隙を逃すまいと、フレイムメモリアを抜き差しして追撃の必殺を放つ。

 

 

『Elemental reading! Frame Spike』

 

『おおおおおおっらぁっ!!!』

 

 

 リコレイドの左脚に炎が宿り、それがローリングソバットのようにリリパットテラーに突き刺さる。

 

 

『バカな!? こんなところで……』

 

 

 驚愕するリリパットテラーであったが、一瞬にして炎が全身に回り、そして爆散する。

 

 

『カカカ! 我の相手は小娘か、物足りんな!』

 

『いいえ。満足いただけるように全力でお相手いたしましょう』

 

 

 リビングアーマーテラーの斧による攻撃をケーンランサーで受け流していくプレア。

 隙を見て幾度かリビングアーマーテラーの胴体に槍を突き立てるも、硬い装甲を撃ち抜くには至っていない。

 

 

『困りましたね……思った以上に硬いです』

 

『カカカ! 無駄無駄! おなごの軟な力で抜けるほど我の身体は脆くはないわ!』

 

 

 可愛らしく困った様子を見せるプレアを嘲笑し、自慢の装甲をガン! と叩く。

 それを見たプレアは軽く悩んだ末、ぽん、と手のひらを叩いた。

 

 

『では、これならばどうでしょう』

 

『Enchant Water 魔導士は水を纏う』

 

 

 プレアが取り出した水のマークが描かれたメモリーカード、『ウォーターメモリア』をリーディングドライバーにセットすれば、青のラインが全身に走る。

 そしてケーンランサーを振るって、魔法陣を描き出す。

 

 

『よし』

 

『ん? ……ぬう!?』

 

 

 魔法陣を描き終わると、リビングアーマーテラーが突如現れた巨大な水の球の中に閉じ込められる。

 焦って藻掻いていたリビングアーマーテラーであったが、単なる水と気付くと落ち着きだす。

 

 

『斯様な手品で我を倒せると思ったか? さあ次はこちらの……』

 

『いえ。貴方はもう終わりです』

 

『Elemental reading! Water melting』

 

『何? ……ぬおおおお!?!?!?』

 

 

 とん、とケーンランサーで地面を叩くと、水の色が急激に変わる。

 透明な色合いから緑がかった危険な色合いに変わり、リビングアーマーテラーの装甲が泡立ちはじめる。

 

 

『な……なんだこれは!?』

 

『硬い装甲ですけれど、魔法金属でないのであれば……酸で溶かせますよね?』

 

『なっ、待t』

 

 

 水の色が真緑に変わると同時に、リビングアーマーテラーの姿が見えなくなる。

 少しして水が消えた後には、何も残らなかった。

 

 

『ケーッケッケッケッ! さっきみてえにボコボコにしてやんよ!』

 

『さっきは手も足も出なかったんだ、二対一なら俺達が負ける道理がねえ!』

 

『もう油断も容赦もしない……!』

 

 

 メモリオンはマーマンテラーと傷ついたローパーテラーを相手に

 先程と同じようにマーマンテラーのトライデントを防ぎ、鞭のように振るわれるローパーテラーの触手を叩き返す。

 先程の焼き直しになるかと言われれば違う。

 

 

『セイッ!』

 

『ギャッ!?』

 

 

 先程とは違い、マーマンテラーには盾も妨害してくれる後衛もいない。動きの速さで撹乱しようにもむしろ飛び込んできたところに逆にナイトランサーを突き立てられ身体を抉られる。

 えぐられた傷口を抑え悶えるマーマンテラー。それだけでなく他の二体のテラーもやられていることに気付いたローパーテラーは、態勢不利に完全に気付いてしまう。

 

 

『く、クソ……こうなったら逃げるしか……』

 

『逃がさない』

 

『Reading! Warrior of valor! 義の武勇、ここにあり』

 

『え? ちょ、ちょっとまっ……』

 

 

 格闘戦に長けたヴァローウォーリアへと変わったメモリオンは、しっかりとローパーテラーの触手を自らの両腕に巻きつけ、それを持ち手代わりに、ジャイアントスイングで振り回される。

 

 

『あああああああああああああああああああ!?!?!?』

 

 

 風を切る音が響き、回転速度が上がっていく。

 5回、10回と回転数を重ね、速度を限界まで上げ……遠心力に任せて放り投げる。

 放り投げられたローパーテラーは砲弾のように風を切り、地面へと大きなクレーターを作る。

 

 

『ぐほぉ……』

 

 

 地面に叩きつけられたローパーテラーが爆散。

 

 

『ぐ……な、なんだ?』

 

 

 最後に残ったマーマンテラーが起き上がると同時に。

 

 

『終わりだ』

 

『Climax Reading! Warrior favorite!』

 

 

 その頭部を右手で掴み、右手の掌にエネルギーを集中させる。

 エネルギーが全て籠もった掌がマーマンテラーの頭部を粉砕し、爆散させた。

 

 

『……よし』

 

『お。そっちも終わったってことか』

 

『では……これで落ち着いてお話出来そうですね』

 

 

 テラーを全て打倒した三人のライダーがその場に揃い、向かい合った。

 お互いに、相手を見定めるように。

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