仮面ライダーメモリオン   作:バイン

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第六巻 さらわれた姫

「……そんじゃ、改めてお互いに自己紹介でもするか」

 

 

 四体のテラーとの戦いを終えて。

 三人のライダーと一人の少女は、英雄の家に集まっていた。

 長方形のダイニングテーブルを挟んで、四人が向かい合い、牽制しあうような沈黙を破ったのは大海からであった。

 他者の家であることも気にせずいの一番に椅子に腰を下ろして、楽な姿勢で名乗る。

 

 

 

「逆木大海の方はもう名乗ったし、仮面ライダーリコレイドってのを改めて名乗っておくか。よろしく、ご同輩」

 

 

 ひらひらと気さくに手を振る大海の様子に釣られるように、続いて希空がスカートの端をつまみ上げ一礼する。

 

 

 

「では、私も改めて。祈間希空と申します。ライダーとしての字は仮面ライダープレア。皆様、どうかよろしくお願いしますね」

 

 

「志道英雄。仮面ライダーメモリオン。よろしく」

 

「は、はじめまして! 三国姫華です」

 

 

 二人の自己紹介を見ていた英雄も同じように名乗る。

 ついでのように姫華もぺこりと頭を下げると、大海は首を傾げて姫華に問いかける。

 

 

「……アンタもライダーか? にしちゃさっきは変身してなかったが」

 

「え、えーと……私はその……」

 

「三国さんはライダーじゃなくて『姫』だよ。テラーによく襲われるから、俺が護衛してる」

 

 

 言葉に詰まった姫華と、そのフォローに入った英雄。

 その二人を交互に見て、納得した……というよりはどこか楽しそうな様子で大海は頷いた。

 

 

「ふーん……なるほどねぇ」

 

「? どういうことなのですか?」

 

「騎士様にとってのお姫様、ってやつだ」

 

「???」

 

 

 ニヤニヤと少し意地の悪い笑みを浮かべた大海の答えをさっぱり分からない、といった調子で首を傾げた希空。

 確かな答えを求めて質問を投げかけようとした矢先に……テーブルにぬいぐるみがよじ登ってきた。

 

 

「よっ、と……おかえり、英雄に三国くん。それに……君達も仮面ライダーか」

 

 

 テーブルの登頂に成功したぬいぐるみことアルス。その姿を見た二人は顔を近づけてまじまじとアルスを観察しだす。

 

 

「おお、マジに師匠以外にも喋るぬいぐるみいんだ……」

 

「まあ! はじめましてアルス様、先生からお話はお聞きしていますわ」

 

 

 希空からの丁寧なお辞儀に礼を返していたアルスの元に、新たにテーブルを登頂してきた海賊と魔法使い……のような見た目のぬいぐるみがやってくる。

 

 

「おいおい、数年ぶりに会った仲間のことはスルーかよー?」

 

「久しぶりですね、アルスにエイハブ」

 

「おお、エイハブにマーリン。久しいな」

 

 

 アルスはやってきた二人、海賊のぬいぐるみのエイハブと魔法使いのぬいぐるみマーリンに親しげに挨拶を交わす。三体のぬいぐるみが集まって騒ぐ光景に、四人の視線は自然とそこに集まった。

 視線に気付いた海賊のぬいぐるみが四人を見返せば、魔法使いのぬいぐるみも同じように向き直って一礼する。

 

 

「おっと! 俺の名前が知りたいって顔だな? ……聞いて驚くな? 俺様こそ七つの海を股にかける大海賊! エイハブ様よ! あとそこのタイガは俺の弟子だ」

 

「俺ついでみたいな扱い?」

 

「お前は見習いみたいなもんだ!」

 

「はじめまして皆様。魔法使いにしてノアののマーリンと申します」

 

「私も逆木様のようにツッコむべきなのでしょうか……」

 

「大丈夫ですよノア。私はまだおかしなことを言ってはいない……はずですから」

 

 

 自信に満ち溢れドン! と豪快に名乗るエイハブと、優雅かつ丁寧に一礼するマーリン。

 

 

(……みんなぬいぐるみなんだ……)

 

 

 だが、やってるのがぬいぐるみだと雄々しさや凛とした雰囲気を感じるよりは可愛らしさを感じてしまう。弟子(?)である大海と希空も加わっての掛け合いが行われると尚更人形劇のような微笑ましい雰囲気を感じる。

 ファンタジーというよりファンシーな状況に姫華が和んでいると、思い出したかのようにエイハブが話を切り出した。

 

 

「ところでアルスよぉ、急に俺達を集めた理由ってなんだ? 一箇所に集まるよりはバラけた方が効率がいいっつったのはお前だろ?」

 

 

 エイハブからの問いかけに対して頷くアルス。

 その内容に、姫華の頭に疑問符が浮かんだ。

 

 

「そういえば……英雄くんと二人って初めて会ったって言うし、一緒に戦ったりはしなかったの?」

 

「ええ、私達は魔王の居場所の捜索を行っていましたから」

 

「そのついでにうろついてるテラーどもの掃除もしてた、ってわけ」

 

 

 問いへの答えに、再度新たな疑問が浮かんでくる。

 

 

「でも大丈夫なの? 二人とも、親御さんとかが心配したりとか……」

 

「ああ。俺、親もういないし」

 

 

 素っ気ない様子で、大海はとても重たい言葉を放った。

 それを聞いて、姫華ははっとして直ぐに頭を下げた。

 

 

「ご……ごめんなさい……!」

 

「あ、いやいいって。もう三年前のことだしよ」

 

 

 頭を下げる姫華に、大海は気にすることなく手をひらひらとさせて逆に気遣う様子すら見せた。

 

 

「それに結構楽しいぜ? 毎日が旅行気分って感じだ。まあ、学生の身じゃ金も稼げねぇし毎日貧乏生活なんだけど」

 

 

 続く言葉には少し困惑しながらも、希空も自らの話を語りだす。

 

 

「私も……家族とは少し色々とありまして疎遠の身なのです」

 

「……そっ、か……」

 

 

 話していることが真実であるとすれば、大海も希空も、家庭の状況は良いとは言えない。

 そのことに少し心配になってしまう。

 

 

「ま、人には色々と事情ってもんがあるもんさ。お姫ちゃん。テラー共を全員掃除し終えたら俺達もお役御免だしよ」

 

「だが、元を断たねば奴等は無数に現れる。魔王を倒さねばテラーの恐怖が止むことはない」

 

 

 そこへ、アルスが話に加わってきた。

 少し離れた本棚からぬいぐるみである自分の体と同じくらいの一冊の本を手にしており、よっ、という掛け声とともにテーブルの上にそれを広げる。

 

 

 

「さて。遅くなったが、何故二人とライダーの君達を呼び寄せたかは……魔王の居場所がそろそろ絞り込めてきたからだ」

 

 

「「「!」」」

 

 

 その言葉に、アルスをのぞいた室内の全員が驚いた表情を見せる。

 

 

「アルス、本当なの?」

 

「ああ。強力な魔力の反応が何度も確認出来た」

 

 

 アルスが机の上に広げたのは、この街、『堅理町(かたりちょう)』の地図。

 見ればいくつかの場所にチェックがつけられている。

 

 

「強い魔力の反応があった場所をいくつかピックアップしてみたのだが、この町に固まっているのだ」

 

「つまり……」

 

「奴はこの町に潜伏している可能性が高い」

 

 

 魔王がこの町にいるかもしれない。

 アルスが導き出した答えを、エイハブとマーリンがテーブルの上でぴょんぴょんと跳ね回りながら補足する。

 

 

「時間をかけてしまえば、魔王は力を完全に取り戻してしまう。だが、奴がまだ力を取り戻していない今ならば……!」

 

「勝てるかもしれねえ……!」

 

 

 アルスは頷き、ライダーの三人に向き直った。

 

 

「場所の捜索と絞り込みは我々がやる。英雄達はテラーを倒すことに専念してほしい」

 

 

 ────────────────

 

『ヒト……サラウ ライダー……キタラ タオス』

 

 

 とある場所にて。

 人間よりも一回り巨大なの緑色のブヨブヨとした身体を持った怪物達が跋扈している。

 怪物、『オークテラー』のうちの一体がメモを片手に歩いていると、どん、と何かにぶつかる。

 顔を上げればそこには同じ緑色のオークの姿。

 

 ぶつかられたオークは、こちらにぶつかってきた同族に怒りのまま頭に拳骨を叩きつける。

 

 

『ウスノロ ジャマ!』

 

『オレ ウスノロ?』

 

『オマエ オソイ ダカラ ウスノロ ワカッタカ』

 

 

 去り際にもごん! と肩を軽く小突かれたオークテラーは、頭をさすりながら項垂れしょんぼりとする。

 

 

『オレ……ウスノロ……』

 

「貴方は決して『ウスノロ』ではありませんよ」

 

 

 そこへ、何者かの声がかかる。

 オークがそちらに目を向ければ、顔のない燕尾服の紳士が立っている。

 オークが首を傾げるのを、顔のない紳士はくつくつと笑って眺めている。

 

 

『? ダレ?』

 

「貴方に力を授けましょう……ウスノロなんて言われないような力をね」

 

 

 まるで子供におもちゃを与えるような口ぶりで、紳士が懐から取り出したものは──

 

 ────────────────

 

「いやあ〜悪いね、泊めてもらっちまってよ」

 

 

 夜。

 そういって頭をかいた大海の手には食料品や雑貨などの日用品が握られている。

 そのそばには同じように荷物を持った英雄と姫華の姿もある。

 解散後。住むところがない大海とエイハブは英雄の家にしばらく身を寄せることになった。

 そのための買い出しに英雄と姫華が付き合っているのだ。

 

 

「三国さんもありがとうね、手伝ってくれて」

 

「ううん、全然。私、いつも守ってもらってるしこれくらいは手伝いたいなって」

 

 

 んしょ、と荷物を持ち直す姫華に、優しい笑みを浮かべる英雄。

 

 

「ああ、そういや二人に聞きてえことがあったんだった」

 

 

 そこへふと大海が足を止めて、英雄と姫華に向けて質問を投げかける。

 その顔はどこか、表情が消えたような冷たい顔つきをしていたような気がして、姫華は少し寒気がした。

 

 

「『顔のない男』に会ったことがあるか?」

 

「顔のない男……?」

 

 

 奇妙な質問に対して、英雄も姫華も首を傾げた。

 テラーでもないのに、顔がない。マネキンのような存在ということだろうか。

 考え込む二人を見て、ふ、と笑う。

 

 

「……ま、会ったことないなら気にしないでくれよ、んなことよりもさぁ、二人っていつから付き合ってんのよ? 滅茶苦茶仲良さそうだけどさ」

 

「付き合う!?!?!? いや、あの……」

 

「……彼女は『姫』だから、守ってるだけだよ。変な関係とかじゃない」

 

「ふーん……そーかい?」

 

 

 英雄の答えに、大海のニヤニヤとした笑みを浮かべ続け、次の言葉を放とうとする直前で、ちら、と進路上に目を向けた。

 そこには、緑色の体躯をした怪物。オークテラーの一団がやってきていた。

 

 

 

『オンナ イタ サラッテ 魔王サマニ ササゲル』

 

『オトコ ジャマ イラナイ コロセ!』

 

 

 オーク達は手にした木製の無骨なこん棒を握りしめ、英雄達の方へと近づいてくる。 口調はカタコトで知性を感じさせないが、話している内容はあまり穏やかなものではない。

 オーク達の前に立ちはだかるように、英雄と大海は一歩前に出る。

 

 

「おいおい、どこにでもこいつら出てきやがるな?」

 

「三国さんは隠れてて」

 

「わかった、気をつけてね……!」

 

 

 姫華がその場から離れたのを見届け、英雄と大海は懐からリーディングドライバーを装着し、各々ストーリーメモリアを装填。

 

 

「変身」

 

「変身……!」

 

 

『Reading! Knight of legacy! 騎士道、ここにあり』

 

『Reading! Rogue of Pirates! 荒ぶる海賊、ここにあり』

 

 

 サーヴァント達がそれぞれ重なれば、二人の仮面の戦士がそこに立つ。

 

 

 

『さ、行くぜ騎士くん』

 

『ああ』

 

 

 ポン、と肩に手を置いてくるリコレイドの手をすり抜けるように前に出て、レガシールドとナイトランサーを手にしてオーク達へ切り込んでいく。

 

 

『全く、釣れねえなぁ……っと!』

 

 

 肩を竦めたリコレイドの元にも、オークは数体殺到する。それを腰元からフリントローグを抜き打って先頭の数体を鉛玉で歓迎し、続いてきた一体の胴に足裏を叩き込んで吹き飛ばす。

 

 オーク達の群れへ猛進していったメモリオンも負けてはいない。

 跳躍と共に一体にナイトランサーを突き立て手早く仕留め、串刺しになったオークを振り捨てて包囲の中で獲物を振り回し寄せ付けない。

 怯んだオーク達に五月雨のような無数の突きを叩き込み黙らせ、捨て身で突っ込んできた相手には左腕のレガシールドを叩き込む。

 

 

『ヒュウ♪ やるねぇ……っと!』

 

 

 敵の包囲をものともしないメモリオンの立ち回りに口笛を吹き軽口を叩くリコレイドにもオーク達は殺到する。

 棍棒を振り上げた相手にフリントローグを押し当てるように撃ち確実に仕留めたのちに、横に薙ぎ払うように弾丸を放てば、一列にオーク達に着弾。

 リコレイド側に来ていたオーク達ら危うげなく全滅させられ、フリントローグをくるくると回して腰部のホルスターにしまい込む。

 

 

『さーてと、騎士くんは無事かな……ッ!?』

 

 

 メモリオンの元に合流しようとした矢先。

 リコレイドに向かって何かが飛んでくる。咄嗟に身を翻して避けた直後に爆発が起き、かがみ込んで爆風から身を守ることを強制させられる。

 

 

「おや……実験の様子見に来てみれば、知り合いに会えるとは。これも縁、というものでしょうかね」

 

 

 爆発物が投げ込まれた方角に目を向けたリコレイドは、そこに立っていた人物に向けてフリントローグを構えた。

 

 

『……会いたかったぜ、クソ野郎ッ!』

 

 

 リコレイドの銃口の先にいたのは……『顔のない』男だった。

 

 

 

 

 一方で。

 メモリオンの容赦ない攻撃の前に、殺到してきていたオークテラー達はその数を着々と減らしていき、既に最初の半分ほどまでになっている。

 そんな中。

 

 

『……アイツ コレツカエ イッテタ』

 

 

 ある個体が、ゴソゴソと自分の身体を探って何かを取り出す。

 それを見つけたメモリオンは、驚愕の声をあげた。

 

 

『あれは……ストーリーメモリア!?』

 

【Role Brigand】

 

 

 ダンビラを片手に持った山賊の描かれたストーリーメモリアを体内に取り込むと、オークテラーの肉体が光によって上書きされるかのように作り替えられていく。

 緑色の体色はそのまま、ぶよぶよとしたゴムのような弾力のあった身体がまるで鍛えられたボディービルダーのもののような姿へと変わる。

 

 緑色の頭巾を被り、銀色の大きな斧を持った山賊の頭領のような姿へと変わったオークテラー……否。『ブリガンドオークテラー』は変質した自らの身体を確かめるように両手を見つめる。

 

 

『お……おおお!? 力が漲ってくるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!! 最高だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

『姿が変わった……!?』

 

 

 目の前の光景に驚愕しつつも、腰を低く落とし盾を構えて備えるメモリオンへとブリガンドオークは突進する。

 携えた斧を高く掲げ、大上段に振り下ろす。

 

 

『俺のことを……もうウスノロとは呼ばせねえ!』

 

 

 メモリオンは振り下ろされた斧を咄嗟にレガシールドで受け止める。

 しかし。 

 

 

『ぐ……!』

 

 

 先程のオーク達が手にしていた棍棒と違って、受け流すどころか身体に響くような重く鈍い一撃に膝を付かされる。なんとか盾で払い除けるがそのまま二撃、三撃と容赦なく振り下ろされ、その度に大きく体勢を崩すことになる。

 

 

『オッッッラァ!!!』

 

 

 そしてトドメのように両腕でしっかりと保持され振るわれた全力の一撃が、構えた盾ごとメモリオンを大きく吹き飛ばした。

 

 

『ぐあ……!』

 

「志道くん!?」

 

『ははははは! これが俺様の力よ! さて……ん?』

 

 

 吹き飛ばされ転がるメモリオンに、慌てた様子で姫華が駆け寄ってきた。隠れることも忘れた様子でメモリオンを助け起こそうとする。

 勝ち名乗りをあげようとしたブリガンドオークは、姫華の姿を認めてニヤニヤと下卑た笑みを浮かべて二人の元へ近寄ってくる。

 

 

『お前い〜い女じゃねえか……俺様と一緒に来た!』

 

「きゃっ!? ちょ、ちょっと! 離してよ!」

 

『待て! 三国さんを離せ……がはっ!?』

 

 

 必死で抵抗し暴れる姫華をがっちりと掴んで俵のように抱え上げるブリガンドオーク。

 ナイトランサーを杖代わりにして必死で立ち上がり、静止しようとするメモリオンは容赦なく蹴り飛ばされて再度地面を転がった。

 

 

『今日は最高の日だなぁ……ライダー! また会ったら今度はもっとボコボコにしてやるぜ!』

 

「志道くん……!」

 

『三国さん!』

 

 

 ブリガンドオークは戦利品を担いだまま背を向け去ろうとする。

 歯を食いしばり必死で立ち上がったメモリオンは、全力でその背中を追い、姫華の伸ばした手を掴み……取れない。

 掴み取ろうとするより一瞬早く、ブリガンドオークと姫華の姿はかき消えてしまっていたからだ。

 

 

「……クソッ!!!」

 

 

 怪物と姫は消えた。

 残されたのは、敗れて悔しげに地面に拳を叩きつける少年のみ。

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