ラビリンスパレード~追放令嬢と挑む惑星横断レース   作:源治

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07話:共有思念網 part01

 

【共有思念網(コモン・マインド)ご利用の皆様へ】

 

この談話室は、主に『第7セクター所属』の青年期ネートの情報交換の場となっております。

・幼年期、成熟期の皆様は、それぞれの専用談話室をご利用くださいませ。

・公務上知り得た機密情報、惑星法に抵触する内容の書き込みは固くお断りいたします。

・当スレッドでの過度な論争はご遠慮願います。

・知らないことがあった場合は、気にせず質問しましょう。質問から生まれる価値ある会話も存在します。

・話題が大きく逸れそうな場合は、関連する談話室へ優しくお導きくださいませ。

・マナーを守り、有意義な情報交換の場といたしましょう。

 

 

【第7セクター お茶の間スレ 其の三三七八】

 

1. 名無しのネート

皆さん、新スレにようこそ。

さて、今回のラビリンスパレードも、当セクターへの到達チームはゼロという結果に終わりましたね、悲しい。

 

2. 名無しのネート

予測されていた結果ですよ、毎回のお約束と言っても過言ではありません。

が、やはり悲しい。

 

3. 名無しのネート

同意します。E1、E2航路で約半数が脱落し、E4の難所がベテランチームの進路を阻む。

E5走破の歴戦4チームもE6で全機リタイアというデータです。

惑星最高峰のブレーダーでもある、ホワイト・ジャベリンのアーサー・ペテルギウスですら到達できなかった以上、現環境の面々では、全航路の完全走破は非現実的と言わざるを得ませんね。

 

4. 名無しのネート

すみません、質問を許可願います。E1等のコードは何を意味するのでしょう?

最近、青年期に移行したため、知識が不足しています。

 

5. 名無しのネート

>4

新しい方ですね。歓迎します。説明しましょう。

E1は、第1セクターと第2セクターを繋ぐ『第一航路』の略称です。同じようにE2は第2セクターと第3セクターを繋ぐ『第二航路』、以降も同じようにセクター番号順に惑星を周回します。そして最後のE7が、我々の第7セクターから第1セクターへ帰還する、最難関のルートですね。ご理解いただけましたか?

 

6. 名無しのネート

>5

理解できました、感謝します。

 

7. 名無しのネート

>5

正直なところ、我々第7セクターの住民にとってラビリンスパレードとは、他セクターを結ぶ航路のレース結果を観測し、「今年も第7セクターへの到達チームは皆無だった」という事実を再確認するだけのイベントと化しています。

もっとも、E6まで突入できただけでも、素晴らしいことなのですが。

 

8. 名無しのネート

>7

その見解を肯定します。公転周期明け、航路法則がリセットされた直後のカオス領域に最初に進入するのがパレード参加チームです。彼らは事実上、命がけの航路調査における先遣隊の役割を担っているのですから。

 

9. 名無しのネート

>8

その通りです。本来であれば、そのレースデータが、我々が行う商業航路の安全確保、航路調査における極めて重要な基礎情報となるのですが……。

 

10. 名無しのネート

>9

レースが実施されなかった航路は、その貴重な情報が全くない、ゼロベースからの調査を余儀なくされますからね……。

 

11. 名無しのネート

>10

特に我々の担当するE7は、毎年レース情報がほぼ皆無に等しい。手探り状態からの調査開始となります。まあ、それはそれで調査員の能力が試される、やりがいのある任務ではありますが。

 

12. 名無しのネート

>11

挑戦的な思考の持ち主ですね。ですが私も、未踏の空間からルートを構築する作業は嫌いではありません。

今年の航路調査において、有望な募集は確認されているのでしょうか?

私の観測能力は、客観的に見ても高水準にあると自負しています。

 

13. 名無しのネート

>12

航路調査の募集に関しては、こちらの情報集積所が有用です。

【リンク:E7航路調査隊 お見合いスレ 十二番】

優秀なブレーダーや高性能なブレードを保有するチームや調査会社は、募集枠が早期に埋まる傾向にあります。迅速な行動を推奨します。

 

14. 名無しのネート

>13

情報に感謝します。早速アクセスしてみましょう。

 

15. 名無しのネート

しかし、次期(三年後)のパレードの展望は不明瞭ですね。

そろそろE7を走破するブレードを……叶うならティールタの光を視認したいものです。

年長個体から聞かされる40年前のティールタの光の話は、正直、食傷気味です。実物を観測したい。

 

16. 名無しのネート

私はティールタの光を見たことがありますが、その気持ちわかります。

まだ幼体期の頃でしたので、観測記録が不十分です。

まあ夢のまた夢の話はともかく、次のパレードでは最低でも、最終レースのスタートラインに立つチームの出現を期待したいですね。

 

17. 名無しのネート

じつはその件なのですが、当方の所属セルに新設されたチームの期待値が非常に高く、その要望に応えてくれるかもしれません。

 

18. 名無しのネート

>17

所属セルはどこです?

期待値が高い根拠は、有力な支援母体などが後ろについているのですか?

 

19. 名無しのネート

>18

新設チームに何ができるというのですか。

理想を語るのは自由ですが、現実はそれほど甘くありません。

 

20. 名無しのネート

>17

チーム名、及び所属ブレーダーの識別情報を要求します。

 

21. 名無しのネート

>20

チーム名は「エメラルド・アイ」。代表はまだ若い、人間の少女です。

ですが、所属ブレーダーは……ジン・カミシロです。

 

22. 名無しのネート

……なん…だと…?

 

23. 名無しのネート

聞き間違いでは……?

 

24. 名無しのネート

……情報、再送を要求します。ジン・カミシロ、と?

 

25. 名無しのネート

あのジンさんが!?レースに復帰するというのですか!?

 

26. 名無しのネート

どなたでしょう……?

ジン・カミシロという方は、それほど著名なブレーダーなのですか?

私も先ほどの新規個体と同様、他セクターから移ってきたばかりのため、情報が不足しています。

 

27. 名無しのネート

>26

新規の方ですね。情報共有は吝かではありません。

ジン・カミシロは、第7セクター・ベータリーグのセクターレースで活動していたブレーダーです。ラビリンスパレードにもリザーブとして数回の出場記録があります。

戦歴自体は、トップランカーのように華々しいものではありません。

ですが、彼の「いぶし銀」と評される走りを、論理的に支持する個体は少なくないのです。

 

28. 名無しのネート

ええ、そうです!昨年のベータリーグのセクターレース、第九戦を記憶している方はいますか?

あの豪雨による劣悪な視界の中、ほとんどのブレードがまともな走行不可能な状態だったにもかかわらず、ジンさんだけが冷静にチームのエースをゴールまで護衛しきった。あの技術は、ラビリンスパレードでもそうそうお目にかかれないレベルです。

 

29. 名無しのネート

>28

観測していました。結果は2位ですが、実質的には彼の勝利だと分析しています。

ジンさんはチームの内外で「調整役」と呼ばれていたようですが、その任務の遂行難易度を理解していない者が多すぎます。

 

30. 名無しのネート

>29

全く同感です。

「調整役」とは、単なる2番手走行を意味しません。

エースの最適走行路確保のための風防形成、ライバル機の妨害と抑制……レース全体の動態を予測し、戦局を最も有利な状態に「デザイン」する、極めて高度な情報処理能力が求められます。

自らの勝利を放棄し、味方を勝たせる。それは、勝利そのものよりも、遥かに広範な視野と精密な技術を必要とするのです。

 

31. 名無しのネート

そもそも、彼が真価を発揮する舞台は、アルファリーグ……ラビリンスパレードのはずです。

 

32. 名無しのネート

>31

その根拠は?

 

33. 名無しのネート

>32

ベータリーグやガンマリーグのコースは、多少の不確定要素があるとはいっても、あくまで陸地や内海。

ですが、ラビリンスパレードは違う。予測不能で危険なラビリンス領域を、長期間に渡って走り続けなければならない、生存を最優先とする究極のサバイバルレースという側面が強い。

だからこそ、ジンさんの能力がより活きてくる。

 

34. 名無しのネート

>33

なるほど。ジンさんの、マシンへの負荷を最小限に抑える走行スタイルと、レースの勝敗すらコントロールできる予測・判断能力は、ラビリンス領域の走破に極めて高い適性を持つというわけですね。

 

35. 名無しのネート

>34

その通りです。いかなる状況下でも安定したパフォーマンスを維持できる彼こそ、真の「ラビリンスランナー」であると、私は結論付けています。

周囲や彼自身が、その事実に気づいていないだけ。

 

36. 名無しのネート

いいえ、彼自身や周囲が、その事実に気づいている可能性も否定できません。

ラビリンスパレードは生命の危険を伴います。参加を拒否する動機は十分に考えられます。

おそらく、彼自身の気質、あるいは周囲の人間たちの人類特有の非合理的な感情や人間関係が、彼の選択を制限しているのでしょう。

 

37. 名無しのネート

それはつまり、ジン・カミシロという人物は、たとえどれだけ優れた技術を持っていようと、冒険心や勝利への意欲が欠如しており、チーム内での地位を維持することも出来ない脆弱な存在、という解釈も可能となりますね。

 

38. 名無しのネート

まあそういう見方もできますね。

そのようなブレーダーのナビネートを希望する者が、果たして存在するのでしょうか。……フフ。

 

39. 名無しのネート

いるさ、ここに一人な!

 

40. 名無しのネート

ここに、ここにも、もう一名!

たとえそうだとしても、理屈じゃないのです、私の、感情が、そう叫ばせるッ!

 

41. 名無しのネート

人類の非合理性を指摘できませんね……(自己矛盾)

 

42. 名無しのネート

議論の最中、失礼します。

論点がジンさんという個体に集中していますが、彼のブレードの性能が優れているだけ、という可能性は考慮すべきではないでしょうか?

我々の本能は、基本的にブレーダーよりもブレードそのものに強く惹かれる傾向があります。

 

43. 名無しのネート

>42

核心を突く指摘ですね。

割合で示すなら、ブレーダーへの関心3.5に対し、ブレードへの関心6.5というのが、客観的な数値でしょう。

 

44. 名無しのネート

>43

身も蓋もないデータですが、否定は困難です。

これは、我々の種としての本能に起因します。

かつて、数多の同胞をティールタへと導いてくださった『ヴィーラ』の記憶が、我々の深層意識に記録されている。故に、ヴィーラの代替となりうる、強靭で信頼性の高いブレードに、我々の魂は引かれてしまうのです。

 

45. 名無しのネート

>44

当然ながらブレーダーが不要だとは言いません。個体として情が移ることも事実です。

事実トップブレーダーのナビネートの方々が、ペアのブレーダーに一種の強い執着心を抱いているむねの発言をしていた記録も多数存在します。

ですが、本能的に、関心のベクトルがブレードに向いてしまうのは避けられません。

事実、ホワイト・ジャベリンのブレーダーではなく、ブレードのポスターを部屋に貼っているネートがほとんどでしょう。

 

46. 名無しのネート

……という論理的帰結は理解した上で問いますが、ペアでもないのにあなたたちは、ブレードよりジンさんのほうが好きなのでしょう?

 

47. 名無しのネート

>46

せやな(即答)

 

48. 名無しのネート

>46

せやせや。

 

49. 名無しのネート

>46

私含めこのスレには、ジンさんと面識のあるキキョウ様の眷属が多いので、色眼鏡で見ている部分があるのは否定できませんが……彼の走りを直接観測すれば、この非合理的な感情を理解できるはずです。

ブレードを通して伝わってくる彼の魅力、数値化も言語化もできないこの感情が。

改めて考えると興味深い現象ですね……。論理では、説明がつきません。

 

50. 名無しのネート

ですが、それだけ優秀なブレーダーであれば、ナビネートの席は既に内定しているのでは?

 

51. 名無しのネート

>50

どうでしょう、まだチームは立ち上がったばかりで、所属はチーム代表の人間の少女と、ジンさんのお二人だけらしいのですが。

 

52. 名無しのネート

まだ、そのシートは空席である可能性が高そうですね。

……募集が開始された場合、水面下での駆け引きが開始されると予測します。

 

53. 名無しのネート

ええ……ジンさんの後ろの席を巡る、冷静かつ熾烈な競争が……!

私も、今から履歴書の自己PR欄を、論理的かつ情熱的に再構築しておきましょう。

 

54. 名無しのネート

私はナビネートの能力が高くないので、その他スタッフ枠の応募にかけることにします。

 

55. 名無しのネート

というか、これだけジンさんの話題でスレッドが消費されるのであれば、専用の談話室を設置するのが合理的ではないでしょうか?

 

56. 名無しのネート

>55

既に存在します。

【リンク:【汐凪の星】チーム・エメラルド・アイ応援スレ Part.1】

誰か、極めて業務効率の高い個体が、先ほど設立したようです。

 

57. 名無しのネート

>56

迅速な対応ですね。評価に値します。

 

58. 名無しのネート

では、これ以上の議論はスレッドの趣旨から逸脱します。エメラルド・アイに関する話題は、当該スレッドに移行するのが妥当でしょう。

 

59. 名無しのネート

同意します。では、各位、情報提供に感謝します。リンク先で再合流しましょう。

 

60. 名無しのネート

のりこめー(((っ・ω・)っ

 

 

 

【ネートリトヴァの言語様式について】

移民当初、第7セクターのネートリトヴァが人類の言語を学ぶ際、最も接触が多かったのが古い日本の文化データを保持していた移民グループだった。

その影響で、彼女たちの話す言語には、その文化データのイントネーションの名残が見られることがある。

しかし、完璧な模倣ではなく、長年の交流や彼女たち独自の美的感覚により、その言葉遣いは多様に変化している。

 

【共有思念網(コモン・マインド)】

ネートリトヴァだけが精神を接続できる、巨大な情報伝達空間。

現実世界におけるインターネットと似た構造を持つが、決定的に違うのは、彼女たち自身がアクセス端末であり、同時に情報サーバーの役割をも担うという点。

仕事で必要なデータを引き出したり、個人的な興味で知識を深めたり、あるいは仲間同士で談笑したりと、その用途は多岐にわたる。

どこか遠くを見つめてボーッとしているネートがいたら、その意識は、この広大な思念の海にダイブしている可能性が高い。

 

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