一夏が居なくってから
いっくんが居なくなってから、私の瞳に映る光景に彩りが全て消えた。
「ですから、■■■■は亡くなったのです!
博士、日本の為に力を…」
「五月蝿い、消えろ」
日本政府の女性高官が毎日、私の実家に暮桜以上の機体の開発を強要に来るが、彼が居なくなった世界にも新しいISを作る気も無く、最早興味はない。
全てを狂わせた第二回モンド・グロッソのIS世界大会。
親友と呼べた彼女との関係は、決勝に出場する愚かな選択により崩壊し、ただの知り合いに格下げした。
無論、友人に報告しなかった日本政府の女性スタッフの背後関係は既に調べ上げてあり、まさかの大当たりだとは思わなかった。
「女性権利団体ねぇ…」
まさか、いっくんの誘拐事件に日本支部が関わっていた、表沙汰になれば『生ゴミ』を擁護する日本政府の与党は総辞職は待った無しの事態となる。
まぁ、いっくんを虐げて来た連中が死のうが野垂れ死のうが全く関係はない。
何故なら…
20●●年、織斑千冬がIS世界大会を2連覇を果たした年の年末だった。雪がちらりと舞うクリスマスの当日、この世の理不尽いや天災いや厄災と彼女を表すには足りない一人の女性が夜叉となって女性権利団体の日本支部の本部が襲撃してきた。
後の『女性権利団体 日本支部本部 襲撃事件』
死者、行方不明者併せて千名以上が一人の女性に斬殺された世界史上、最悪な事件として歴史に残った事件だった。無論、日本支部の本部に生き残りは一切無く、無惨に斬殺された会員だった与党の女性大臣や著名人も含まれていた。
そんな事件により、一人の女性に全てを暴露された内閣は総辞職となり、巻き込まれる様に両議院は解散して両議院の総選挙後に野党の一つが政権を手に入れ、内閣樹立後、その女性に敵対しない為に政府は女性権利団体を見捨てる判断を下す。
「ギャァァァァ!?」
手足を日本刀で斬り落とされ、床に血塗れに倒れる女性権利団体の会員で与党の大臣を務めていた政治家だった彼女は目の前の女性に恐怖し、何故と問い掛ける。
「決まってるじゃん。
束さんの大事な宝物に手を出したから、だよ?」
無機物の様な無表情の女性を観て、彼女は意味が全く判らなかった。
しかし、彼女が彼を実の弟の様に溺愛していた事実は彼らの周りでは当たり前だったが、そんな情報など耳に入ってはいたが嘘だと信じて知る由もなかった。
宝物?
ただ、千冬様の邪魔な存在を消す為に誘拐を頼んだ、だけだった。まさか、行方不明になるとは思わなかったし、床に残った血痕の量から死んだ可能性ですらあった。
そして、誘拐事件を千冬様に知らせずに握り潰した、私の秘書で千冬様の付き人をやらせながら政府関係者で会場入りしていた彼女は、あの邪魔なドイツの特殊部隊の隊長にゴミが誘拐された事を千冬様に報告し、誘拐事態を黙っていた事がバレた上に秘書はインタビュー中の千冬様にカメラの前に引き摺り出され半殺しにされた。
このせいで、他国から日本政府への信用問題となり、私の政治家としての土台は揺らいだ。
だから、与党内の政治家を黙らせ、私の権力でゴミを無理矢理に死んだ事にして片付けた。
無論、葬儀の時の織斑千冬は弟が死んだとは一切認めないで参加せず、ゴミの友人達や同じ様に参加しないで彼女だったらしい少女も認めなかった。
「ふ〜ん、ゴミが手を回したんだ…」
その一言に全てがバレたのだと悟る。
彼女が空中に浮かぶモニターらしき物で確認して呟くと日本刀を横に振り首が斬り落とされると、私が最後に観た光景は床に落下しながら、束博士が無表情で見下す姿だった。
「人の死って呆気ないなぁ、まぁ、良いや。」
初めて、人を殺した束は箍が外れたのか、殺人に一切の後悔する事は無くなり、日本支部の本部にいた会員は全員が殺されて、日々を国内の女性権利団体狩りを行う束に日本中の会員に恐怖をばら撒き、束の宝物に手を出して敵にしてしまった女性権利団体の会員は見付かれば、殺されるかも知れない日々を送る。
そこまで、一夏にした事への束の怒りは凄まじく、全世界に指名手配されても女性権利団体への復讐劇にフランス支部の支部長まで動く事となる。
フランス支部の支部長であるデュノア夫人が動き、日本支部の女性権利団体の会員達の保護と救助のために日本に来たが、デュノア夫人をホテルで待っていた女性権利団体会員の女性は潜伏先のホテルで会談している最中に凄まじい情報収集能力により束に居場所が見付かる。
「やあ、フランスの塵。
デュノア社での横領やフランス政府への賄賂を全部バラすから塵は塵らしく、死ね」
一言も言わせずにデュノア夫人はその場で斬殺され、潜伏していた日本会員も見せしめの様に首を刎ねられ、日本全国の会員に『お前達を絶対に許さないし、絶対に逃さない』と知らしめた。
無論、束により様々な証拠が公表されたデュノア社は、女性権利団体の会員である社員による大多数の横領や政府関係者との癒着による収賄などの罪が重なり、フランスの女性権利団体の会員である社員達と賄賂を受けた政府関係者も含め、かなりの人数が逮捕され経営が悪化する。
そんなある日、束は拾い物をする。
私が住む街の裏路地だった。
三人の女性が血を流し、裏路地のビルの壁に寄り掛かる様に座り込んでいた。
三人は、元亡国機業のエージェントであり、一人は毒親に連れ攫われた彼の妹だった。
束は、三人を回収して治療した後、部下としたがM(マドカ)は兄が女性権利団体によって殺されたと知り、兄の復讐の為に亡国企業からの脱退を計画している時に亡国企業内での派閥争いに巻き込まれた。
当時、幹部だったオータムとスコールは革新派閥との派閥争いに負けて暗殺を恐れて逃亡するが、二人に脱退の計画を知られてからは、三人一緒に行動していたが刺客に襲撃されて負傷する。
三人を拾い部下にした後、束は久しぶりに実家の篠ノ之神社に足を運ぶが、境内に続く石段に座り込む一人の少女に見覚えが在った。
鳳鈴音。
彼の唯一の女性。
「一夏は絶対に生きてる。
絶対に…」
胸にチクリと痛むが、鈴音の一言で拾う決意する。
「やぁ、君」
「篠ノ之博士!?」
「確か、母親の実家に帰ったよね?」
鈴音が、親の離婚に伴い母親の実家に帰っていたのも、中国で代表候補生になる為に勉強していたのもいっくんの唯一だったから見守っていた。だけど、煤汚れたスポーツバックと濁った瞳に危機感が募る。
まさか、だと思いたかった。
「一夏を探す為に候補生の試験に受けたんだ。
でも、まさか、政治家の娘が汚い手段を…
うわぁぁぁぁ!」
鈴音から聴いた話に私は、移動式ラボを展開して中国にハッキングする。
ハッキングから該当したのは、超大物政治家の娘である中国の代表候補生の劉水嶺だと判る。そして、鈴音の母親の実家だった広州の老舗の陽泉酒家は政治家が放った刺客により放火され全焼し、鈴音に会いに来ていた父親は母親を庇い銃殺。母親は犯された後に殺害されていた事実さえも…
「本当に束さんは、何をしていたんだろ…」
いっくんの為にも、護らないとイケなかったのは、鈴音だった事実に復讐に燃えていた自分が恥ずかしくなった。
「鈴音ちゃんはどうしたい?」
「両親を殺した劉が憎いけど、劉の様に同じ事はしないわよ!
だから、束さん。
私が強くなって、IS学園で正攻法で劉に復讐したい!」
瞳が絶望に濁っていながらも、微かに瞳の奥で燃えて真っ直ぐに私を観る瞳に私は、鈴音を拾う事にした。
無論、女性権利団体の狩りは鈴音を鍛える為に一時辞めるが、いっくんが戻るかも知れないから、鍛えた鈴音には最高の専用機で最高の復讐と言う花道を贈ろうと思うのだった。
鈴音を、私の孤島にある隠れ家に連れて行ったのだが、鈴音がキレた。
「アンタ達ねぇ、少しは掃除くらいしなさぁぁぁい!」
隠れ家のゴミ屋敷化にキレる鈴音と正座で座らされ説教を受ける四人のシュールな光景。
勿論、束、スコール、オータム、マドカは炊事と家事は壊滅的であり、ご飯はマドカが買い出ししてスーパーやコンビニの弁当を買い、お酒好きの二人は部屋に瓶やら缶が散乱していた。
そして、鈴音は頑張って隠れ家を掃除し、全員のご飯を作ったり、散らかした洗濯物を洗ったりと隠れ家の皆のオカンになるのはそう掛からなかった。
鈴音は、炊事家事洗濯が終われば午前中は束から勉強を教わり、午後はスコールとオータムに格闘技や軍事教練を学び、メキメキと実力を伸ばして成長していった。
束自身、この時から只管に努力を重ねる鈴音を見て代わって行き、ピンクに染めていた髪は一夏達と過ごしていた頃の茶髪の元の色に戻し、服装も不思議なアリスの格好からきちんとしたスーツ姿に白衣を纏う様になる。
無論、日本や世界であらゆる事件を起こしていた束は、国や国際警察であるインターポールから国際指名手配を受けていた。
「この条件に指名手配を解除、出来ないかな?」
日本政府に示した条件に加え、日本政府が束に加えた条件は以下になった。
・束自身の拠点は日本国内である事
・日本代表並びに日本代表候補生の専用機を無償で提供する事。
・部下の専用機は全て、元の国に戻す事。
・新規製造のISコアを優先的な提供権の承諾。
この条件を飲んだ束は承諾する。
日本政府の尽力により国際指名手配の解除となり、無論、日本の孤島にある拠点は束の土地となる。
それで、終わらせないのが束だった。
篠ノ之神社の実家。
「本当にすいませんでした!」
束は、両親を前に土下座して謝っていた。
妹の箒に続き、束まで事件を起こしていた為に世間から身の狭い暮らしをしていた両親への謝罪だった。
無論、両親は束を許した。
まだ両親との距離感は遠くに感じたが、近い内に暮らせるだろう。ただし、妹の箒は奈良からの道場の師範の話では全く手に負えないモンスターに育ったので師範自ら叩き潰したが、効果は全く無かったと聴いた。
「箒ちゃん、ダメかも…」
ちーちゃん。もとい、織斑千冬だが、今現在はドイツに居るのは同級生だったクラリッサとメアリーから聴いていた。弟の一件で間違ったのに、クロエことくーちゃんの妹であるラウラを教育しているが、また、いっくんの心に闇を抱えさせた様にラウラも軍人にしては幼い餓鬼に育った様で失敗したのだろうが、千冬は気付いて居ない。
「束、話を聴いてる?」
「聴いてるよ。
悪友。」
悪友で悪戯仲間で同級生にして、イギリスの第一王女からの電話だった。無論、両親が事故死したセシリア・オルコット子爵令嬢の代表候補生としての自覚が足りない事への相談と彼女の専用機たるブルーティアーズの基礎設計の依頼だった。
無論、メアリーの頼みだから基礎設計は行うが、インターフェイスによる遠隔操作によるBT兵器の開発に関しては断った。
理由ならメアリーが納得したが、システム開発担当者達は納得しなかった。
「束さんでも、あんなに脳に負担が掛かるシステム、ゴミだと思うのに懲りないなぁ」
「確かに、セシリアの空間把握能力と射撃能力は逸材だとは思うわ。これ以上に束には迷惑は掛けたく無いわ」
「そう、言ってくれるのは悪友だけだよぅ」
結局、システム開発担当者はBT兵器の実験した被験者に多少の死者が出たようだが、システムの開発には成功した。
しかし、セシリアはBT適正がAにも関わらず数機のビットしか扱えず、メアリーに許可を取り、ハッキングから得たBT兵器のシステムを改良して、セシリア以上の空間把握能力の高さとBT適正がSS適正を持つマドカに専用機として使わせていた。
その他、隠れ家の護衛に数機のISの機体を製造していた。
マドカ専用機はBT兵器搭載型でイギリスのブルーティアーズ計画の基礎設計の開発に関わった技術情報から開発中のブルーティアーズの欠点を改良し、高い火力と高機動性に重点を置いた、八岐之大蛇。
8基の有線式の親ビットの中に無線式の子ビットを20基積ませた機体で過去に開発した白騎士に次ぐ、アーキタイプのIS。ビーム兵器なら満点だった機体だったが、束さんの技術の限界とジェネレーターの開発が難航して、レーザー兵器に落ち着いた機体だった。
スコールの専用機 須佐之男
第1回の世界大会のアメリカ代表だった過去の戦い方を参考に彼女の性格を反映した機体。
ナノマシンによる爆炎操作と純粋な格闘戦による近接型のISで、専用武器は草薙剣。単一仕様を使う為のコマンド武器であり、全身に爆炎を纏いながら相手を殴り倒すスタイルの機体。
オータムの専用機は二人の日本神話に基づいた機体だったが、オータムの産まれが北欧だった為に悪戯心が騒いで開発した機体だった。
機体を纏ったら女神の服装にされた挙句、男性が居たらラッキースケベなシチュエーションだが、本人からしたら胸が無いからとしか言えない姿でオータムがキレた。
「たぁぁばぁぁねぇぇ!!
マジでふざけてんか!」
この機体を纏ったオータムがキレた理由は、マドカに次ぐ空間把握能力とナノマシンによる自然操作への論文に目を付けた私は、ナノマシン操作による植物成長能力の増大と自然の天候操作能力だった。
北欧神話のオーディーンの妹である愛と生命の女神ヴァーリの能力を模範した能力だった。
無論、機体が散布するのはナノマシンを組み込んだ様々な樹木や草花達。一気に成長させて一瞬で樹海に変える能力と単一仕様の天候操作は作って来た機体の中でも一番のヤバい機体だった。
単一仕様『世界樹の降臨』
樹海への地形変化能力に世界樹の製造による空気中へのナノマシンの散布。
世界樹下で散布されたナノマシンによる天候操作能力による落雷や竜巻などの自然による厄災。
女神ヴァーリの北欧神話の一文から得たヒントだった。
機体の性能にはオータムは気に入ったが、専用機を纏った姿にキレたのは、私のせいでは無く、服装まで変わり胸の辺りが女神の服装に近く、胸が薄いオータムに屈辱的な格好になった為だった。
専用機登録した後で、追加による胸当ての装甲は付けたが、あの服装は胸が無いと服装がズレ落ちて胸ポロリは確定だった。
オータム専用機ヴァーリ
オチとも言えた最後のオータムの機体だった。
新たにクロエを家族に加えてから4年。
いっくんと再会は間近だった。