ピットに戻って来たミアは、かなり息が切れては居たが黒式には一切のダメージは無く、特殊パッケージのノームデスのレールガン以外の弾丸を全て使い切った感じだった。
但し、学科を強制変更されたミアは束姉とキリーに抱き着き、ただ只管謝りながら泣いていた。
黒式特殊パッケージ『ノームデス』
元はカルフォルニアベースのミアに届く予定だったトロピカルドムの専用の火力増強と後方からの火力支援が目的でミアとノイジー・フェアリー隊の専属の整備班により、製作が計画されたユニットだった。試作機の可変型火力支援モビルタンク『ヒルドブル』の60口径30サンチ砲を支援火砲とし、大型ガトリング砲にジャイアントバズーカや大型トマホークなど多彩な武装とギャロップのカーゴユニットのホバーユニットを利用した巨大なユニットとなる予定だったが、アルマとミアがパナマ戦線での負傷とノイジー・フェアリー隊の壊滅判定を受けたキリー・ギャレット少佐は、新設部隊の編成で宇宙に上がる事になった為、隊員全員へのソロモンへの移動命令と共にノームデスの製造計画は頓挫する。
しかし、ノームデス計画を諦め無かったミアは、黒式をベースに特殊パッケージとして再計画する。
ノームデスの主砲の予定だった大和型戦艦の副砲の三年式60口径155ミリ砲を利用を計画したが製造元では造れない事とノームデスのユニットにもISコアを用いた結果、黒式と併せた事でダブルコアシステムを構築する。
ダブルコアシステムから得た莫大なエネルギーは、浮遊するだけでは持て余してしまい、試作中の大口径のレールガンに着目して採用する。
武装は主力武装の155ミリレールガン、ジャイアントバズーカ、36連ミサイルランチャー、大型ガトリング砲、近接用に超大型トマホークと黒式本体の近接武器に超大型のヒートナタを装備する超重武装の特殊パッケージとなる。
そして、開発者は束さんとミアが共謀して完成させた、ミア専用のノームデス特殊パッケージだった。
無論、特殊パッケージの登録が難航した理由はダブルコアシステムがIS委員会からしたら眉唾物のシステムであり、三世代型ISの開発で難航している各国の現状と各国よりも四世代型を先行して製造し、更に五世代型のISを開発中のホワイトラビット社へのIS委員会からの嫌がらせの一環で特殊パッケージのノームデスの登録が難航した理由だった。
さて、話は逸れたが、ミアが何とか泣き終えてシャワー室に向かった後だったが社長の束と専務のキリーが織斑千冬の一言で凄まじい形相となり、待機室は極寒の猛吹雪となっていた。
「総員、注目!」
キレたキリーの号令に立ち上がり、ジオン式敬礼で返礼する。
「どうやら、織斑千冬は私達と戦争がご所望の様だ。
エマァ大尉、アルマ大尉、アン大尉、イチカ少佐。」
「「「「ハッ!!」」」」
残る実技試験のメンバーが呼ばれる。無論、一般枠の鈴とシャルロットは別のアリーナで一般の実技試験は終えているが、関係者として待機室に来ているが鈴は慣れてはいたが、軍人としての目付きの変貌した一同にシャルロットの顔は真っ青だった。
「叩き潰せ」
キリーの怒りが集約した、一言だけの命令だった。
束姉は千冬に呆れ返った様に試験に手を抜かせる積りが、地獄が待っている試験官達が無事な事を祈りながら一夏達の専用機の試験で使用を禁じた武装のロックを外す作業に取り掛かる。
ジオン軍全体にも言えたのだが、実力者揃いの整備班を泣かせる奴等は叩き潰せと言われる程に大切に扱われ、一夏達の学園での専用機の整備はミアが担当する事が辞令が下っており、一年戦争中でもミアがモビルスーツの整備をやっていた事からミアの整備の実力は信用されていた。
その千冬の一言で、学園の試験官が叩き潰される不幸は本意ではないが、千冬が撒いた種である為、整備班は自分達の命綱との教えをジオンの教練で叩き込まれた一夏達を止めるのは束的に無理だった。
そして、試験で使用を禁じていた武装を装備したエマァが纏う黒式の妖精部隊カラーがピットへ向かい、対峙する試験官との試験が始まる。
エマァの黒式は、エマのリックドムカラーの黒式とは違い、高機動でありながらハイパワーと重装甲を両立した妖精部隊のカスタム仕様だった。
「よくも、ミアを泣かせてくれたわね!!」
ブチ切れたエマァも試験官が纏うテンペスターの放つマシンガンの弾丸を正面から受けながらも、瞬時加速で加速して重装甲の装甲でマシンガンの弾丸を跳ね除けながら突進する。
「まっ、マシンガンが効かない!?」
「此奴は、お釣りだ!」
エマァがコールしたのは、使用禁止の武装の一つの高威力のシュツルムファーストとダブルオーパックのショットガンだった。すれ違い様に試験官の顔面をシュツルムファーストでぶん殴り、大推力のスラスターを全力にしながらシュツルムファーストを手放すと後進してショットガンを放ちシュツルムファーストを誘爆させる。
一見無茶な機動だが、ホワイトラビット社のISの中で推力値で最強格のティターニアに次ぐ推力がある黒式ならではの戦い方であり、リックドムやプロトタイプリックドムⅡ等の機体を乗りこなすエマァだからこそ出来る芸当だった。
エマァの追撃は終わらない。
シュツルムファーストの誘爆を食らい落下するテンペスターをエマァの黒式が首元の装甲を掴み、落下は阻止されるが、ジャイアントバズーカをエマァがコールした事に試験官は背中に冷汗が流れる。
「まさか…まさかよね?」
「…」
ゴッツンと音と共に頭に当てられた、ジャイアントバズーカの銃口と無表情化したエマァに恐怖に試験官は気が狂いそうになる。
試験官は顔が引き攣りながら、まさかと思うが、エマァが無言のまま引き金を引く。
ズッドォォォン
無表情で無言のままのエマァは、黒式のテンペスターを握る左腕がジャイアントバズーカの弾頭の爆発に巻き込まれて壊れ様とも、ジャイアントバズーカの引き金を引き続けた。途中、ジャイアントバズーカが弾切れになれば、新しいジャイアントバズーカをコールして何度も引き金を引く。
カチカチ
「チッ、弾切れか…」
弾切れで、予備のジャイアントバズーカをコールしたが反応は無く、全てのジャイアントバズーカを使い切ったエマァは、舌打ちしながら試験官を観ると、泡を吹き舌を出したまま白目を剥いて気絶しており、ISは解除されて居たのだった。
気絶した試験官を地上に降ろすと試験が終わり、エマァは興味を無くした様にピットに戻るのだった。
アリーナの管制塔では、ホワイトラビット社の試験を観ていた生徒会長の更識楯無は、アリーナで起きた蹂躙劇を前に顔を真っ青にする。学園の実力者では三番目の山田先生が全く歯が立たなかった現実。
「やはり、パイロット候補科に移して正解だな」
待機室から戻ってきた織斑先生の一言に受験生がキレたのだと更識楯無は確信する。
そして、実力では学園5位の元パナマの国家代表だったリナ先生もエマァという受験生に蹂躙されていたのだから。
そんな最中だった。
「織斑先生!」
ブチ切れた学園長が管制塔に入って来たのだ。
普段なら温厚な学園長だったが、虚ちゃんからの秘匿通信の内容では、学園では最難関とされる整備技術科の受験生、ミア・オリムラさんを独断で強制的にパイロット候補科に変更させたらしい。
そして、彼女を推薦していた企業であるホワイトラビット社からは猛抗議の嵐であり、受験生であるエマァ・オリムラさんの蹂躙劇は、ミアさんを泣かせた私達への報復らしい。
勿論、残り三人のアルマ・オリムラ、アン・オリムラ、織斑一夏も同様に報復は決定事項であると言われ、残りの3人を相手をする予定だった教師達は、先にホワイトラビット社の推薦枠の受験生を相手をしたリナ先生や山田先生達の様に医療棟送りとなるのではと戦意喪失状態であり顔色は蒼白だった。
「貴様の独断で、試験を利用した報復で既に三人の教師が医療棟送りだ!」
「彼らの専用機を没収すれば解決では?」
織斑先生のホワイトラビット社の受験生から専用機の没収。これは、ホワイトラビット社からの報復で、学園が火の海となり私達の死を意味する事を全く理解していない。
織斑君の一件で夜叉となった篠ノ之博士の容赦の無さを理解する、私にしたら更識の力を使ってまで織斑先生を止める決意を内心していた。
無論、教師達の戦意喪失状態では試験は出来ない。
しかし、ホワイトラビット社からの要求は一つだけだった。
試験の継続を篠ノ之束社長から要求されたのだ。
私は、副会長で三年生のイギリスの代表候補生であるウィルキンソン先輩を呼び出す。
勿論、入学試験が終わったら生徒総会で織斑先生に今回の入学試験の責任を取らせようかと思うが。
「更識会長、逝ってきますわ」
ISスーツに着替え、死刑宣告を母国の女王陛下から受けた様に哀愁漂うウィルキンソン先輩がピットに向かうのだった。
ただ、本当に逝かないで欲しいと願い、私もアンとの試験の準備に着替えに向かうのだった。
アルマの番となりピットに向かうと、ティターニアを纏う。原型だったモビルスーツはケンプファータイプのモビルスーツであり、推力値だけならホワイトラビット社のIS中でトップの加速力と防御力ならエマァの黒式に次いで重装甲に分類されるアルマの専用機だった。
武装は実弾系のケンプファーとは違い、ビームライフルとしても使えるビームマシンガンとビームサーベルを標準装備としながらジャイアントバズーカやダブルオーパックのショットガン、シュツルムファーストにホワイトラビット社の武装では最強格の対IS用爆弾を使用したチェーン・マインを装備しているミアの黒式とは性格が違う意味で、高機動を加えた重装甲かつ重武装の専用機だった。
そして、元となったティターニアと同じく強襲攻撃にも重装甲を利用した防御戦にも対応が可能な機体だった。
アルマのティターニアと一夏とアン、キリーの専用機を併せ、ISの世代の分類上、ビーム兵器を用いる点で五世代型である。ただ、IS委員会に没収される可能性から書類上は三世代型と登録されている。
この時、ウィルキンソンは織斑先生を此処まで恨む事は無かった。薄紫と白で塗装された目の前の機体には、両肩と両足のスラスターを見るだけでも、自分の専用機の推力と比べたら十倍では利かない加速力があると判断する。
もし、キャノンボールで使用するティーアズの高機動パッケージを使用しても追い付けないのは明白であり、ハリネズミの様な武装が全身隈無くマウントされている時点で勝ち目すらないと理解する。
スタートコールと同じく、アルマのティターニアは、チェーン・マインを背中のラックから取り出して右手に装備し、拡張領域からも予備のチェーン・マインを呼び出して両手にチェーン・マインを装備する状態だった。
無論、ティターニアの全身にあるスラスターは全力であり、全開にしただけでブルーティアーズを纏うウィルキンソンが瞬時加速をした時と同じスピードだった。
「はっ、速い!?」
通常の人間なら、ティターニアの全力の瞬時加速で圧死する可能性があるが、フラナガン機関出身だったアルマには身体強化を受けた影響で全く問題は無かった。
全力の瞬時加速でブルーティアーズの前に出たアルマは、チェーン・マインを振り回してブルーティアーズを雁字搦めで拘束する。
「先輩、チェーン・マインの起爆トリガーを引いて良いですか?」
「チェーン・マイン?」
「はい、巻き付かれているのは、全て対IS用爆弾です♡」
「あぁ、神よ…」
ニッコリ笑いながら、巻かれているのは対IS用爆弾だと教えられ、私は胸元で十字を切り顔を真っ青にする。
例え、チェーン・マインから切り抜けたとしても彼女の専用機が全身に纏う武装だけでも当たれば確実に20回以上は軽く死ねる自信と推力の差で逃げられない事に加えてBT兵器の無い射撃型のブルーティアーズの紙装甲を恨みながら、私は降伏を選ぶのだった。