ホワイトラビット社側の蹂躙劇はまだ続いていた。
エマァ、アルマと続いたのは剣部隊の副隊長格であるアンだった。アンが纏う蒼式の姿は高機動型ゲルググでは無かった。白式と全く同じ姿であるMS-14BR型高機動型ゲルググ改の姿だった。
ただ、白式と違う点は高機動型パックでは無く、ソロモン防衛戦と同じ、F型のバックパックと対ビームコーティングが施されたF型マリーネのシールドを持っている事だった。
武装は右手にBR型用のグレネードランチャー付きビームライフルを持ち、腰のラックにはビームナギナタ、シールド内に収容されているビームサーベルと予備のビームライフル、バックパックの追加式収容ラックには右側には試製型大型ビームライフル、左側にはジャイアントバズーカ。シールドで隠れてはいるが、左手にはロケットランチャーとアンのブチ切れ具合が判る装備だった。
無論、拡張領域にも大量の武装があり、ダブルオーパックのショットガンや予備のジャイアントバズーカ、四連装対艦用大型ミサイルランチャー等だった。
束さん達でも把握して無い装備がある。
それは、オデッサ基地で試作されたアッザムの主武装のアッザムリーダーこと、プラズマリーダーだった。
結婚前に国籍を入手しなくてはいけない為に欧州連合と同じだった大英帝国。今のイギリスの国籍を入手した時に問題が起こる。
それは、アンが辺境伯爵令嬢の時に幼馴染の大英帝国の第一王女エリザベス8世から承った、赤百合の獅子の紋章付き金時計を持っていた事だった。束さんと悪友のメアリー第一王女ですら、実物を見て驚く事態であり、現在の赤百合の獅子の金時計の持ち主は現女王陛下の近衛騎士団長であるシシリア団長だった。
無論、女王陛下とシシリア団長に目を付けられ、イギリスの宮殿に束さんと一緒に召還されて、シシリア団長と御前試合をやらされた際に騎士の名乗りでアンの本名であるアン・ベルファスト・フリークスとバレた。
所謂、アンの自爆だった。
無論、この世界でもフリークス家は貴族家として健在であり、同じベルファストの領主で辺境伯爵だった。
ただし、当主は女辺境伯爵だったが…
そして、フリークス家当主に問い合わせてもアンの存在は認めなかったが、9歳になるアンソニーと言う一人娘がいるのだが、もう一つのフリークス家の裏の家紋である蒼い悪魔の紋章付き短剣のアンの所持が決定打となり、アンは、イギリス国籍を入手する筈が、この世界のフリークス家の時期当主を女王陛下と義母となった女辺境伯爵のクラリスから認めらたフリークス家の長女として養女になる事なった。
蒼い悪魔の紋章とは、UC世界と同じくリークス家が外務卿又は外務省関連を務めながら諜報活動をする、今のMI6イギリス諜報機関の様な任務をしており、最もな理由は貴族令嬢時代に当主だった父親から次期当主としての当主教育が完了していた事だった。
女王陛下からは、かつての女王の御庭番だったフリークス家の復活の喜びから、MI6から数名の凄腕の女性諜報員を侍女として贈られ、ミハルに似た侍女長シエラに命じて事前に情報収集を調べていたら、もしかしたら、ロシアの国家代表で生徒会長の更識楯無が試験官として出る可能性が在ると報告を聞き、ミアを巻き込み作らせたのがプラズマリーダーだった。
カタパルトからアリーナに出たアンは相手となった更識楯無が纏うテンペスターの姿に眉を顰める。
侍女からの事前情報から、ロシアの国家代表の更識楯無の専用機はミステリアス・レディと情報が在った。
しかし、更識楯無が実際に実技試験で纏うのは、学園の訓練用のテンペスターだった。
「お姉さんを持たせるなんてね?」
「あら、負けた時の理由作りに旧式を使用するなんて、私、舐められたのかしら?」
楯無は、扇子で『遅刻よ!』とニッコリ笑いながら嫌味をぶつけ、二人の視線がぶつかり火花が散るがスタートコールが鳴るまではお互いに動かない。
スタートコールと同じく、互いに瞬時加速で距離を詰める。無論、先手を取ったのはアンのシールドクラッシュだった。
「私を舐めすぎ!」
「カッハァ!?」
マリーネのシールドは先が尖っており、アンは挨拶代わりにシールドの先端で楯無の喉元に突き刺した形だった。無論、絶対防御で肉体は守られてはいるが、衝撃までは守りられては居ない。
アンは、舐められた事に更に追撃する。
「アンタが本気になる様にスクラップにするまでよ!!」
シールド裏の左手に隠していたロケットランチャーと右手のビームライフルを楯無のテンペスターに向けて乱射する。
「ちょ、マジ!?」
楯無は咄嗟にパイルバンカーを盾にコールしてビームライフルのビームを防ぐが、シールドを貫通してくるビームライフルの威力に驚愕しながらも直撃を防ぐ為に手放し、手放したパイルバンカーはロケットランチャーを喰らい爆散する。
無論、パイルバンカーを囮に後進瞬時加速で脱出するがアンには見切られて遠心瞬時加速で背後に廻られジャイアントバズーカを背中に喰らう。
「剣部隊の副隊長を舐めるな!」
「マジで、強過ぎるんですが!?」
戦争と言う、実戦経験のあるアンと実戦経験の無い更識楯無の決定的な技量と経験の差が浮き彫りとなる一幕。
二世代型の中では最速のテンペスターでもMS-14系統をベースにISにした蒼式のパッケージでは、最速と重武装とされるBR型パッケージのスピードは比べる間もなく蒼式がスピードでは優位だった。
ぶっちゃければ、世代差による大人と子供の喧嘩とも言えたのだが…
更識楯無は、最初から機体の選択を間違えたとしか言えず、激昂したアンは更に追撃して、ビームライフルとジャイアントバズーカを拡張領域に収納し、入れ替わる様にコールしたビームナギナタを取り出して両刃を展開すると回転させながら、テンペスターを斬りまくる。
斬られて、散らばるテンペスターの装甲と電子部品だった何かが飛び散る光景だったが、ただ、やられる学園の生徒で最強の更識では無かった。
「やられ放しは、尺に合わないのよ!」
ビームナギナタを持つ腕を蹴り上げて、ビームナギナタを握る手は、ビームナギナタを手放す。更識は、拡張領域から予備のパイルバンカーをコールして短距離の瞬時加速でアンの蒼式の懐に入る。
「あぁ、こんなに楽しいの、アイナとの格闘訓練以来よ!」
教練時代に散々、自称ライバルのアイナに絡まれ、格闘訓練のみだったがバトルジャンキーだったアンがチラリとこんにちはと、パイルバンカーを持つ腕を掴むと一本背負いで投げ飛ばして距離をとり、見様見真似の短距離瞬時加速で更識のテンペスターに追い付き、肩を掴み引き寄せると左腕の固定装備の13ミリ速射砲を更識の顔面目掛け乱射する。
テンペスターの絶対防御を強制的に発動させると、シールドエネルギーが削り切られてシールドエネルギーは零となるのだった。
「痛たたた…派手にやられたわ…」
シールドエネルギーが無くなり、地上に降りた更識は纏っていた訓練用のテンペスターを観ると無惨にもズタボロであり、修復レベルは間違いなくFレベルに達するダメージだった。
無論、言い訳などしない。
ただ、一言だけ文句を言うとすれば、所属するロシアに対してだと思う。ミステリアス・レディを纏う前にロシアの担当から電話でミステリアス・レディの使用を禁じられた。
ミステリアス・レディの戦闘データを盗られる危険性と自信の保身を図る為だけに禁止するが、既に束さんのハッキングにより、ミステリアス・レディの能力は丸裸に解析されている事実はアンも更識も知らない。
確かに、ホワイトラビットの企業代表のパイロット達の技量は異常だった。まるで、実戦経験を積んでエースパイロットまで登り詰めたような感じだった。
敢えて挑発したけどまさか、受験生のアンは自ら副隊長だと言った。前に試験を受けたミアとエマァ、アルマの三人に共通するのは、妖精が画かれたエンブレム『ノイジー・フェアリー』と薄紫と白い塗装された専用機。
アンのエンブレムは蒼い悪魔だったが『剣02』のマークと4人は同じ軍を意味するマークからして軍人だったと解る。
「先輩、動けます?」
「大丈夫かな」
「怪我した振りで、私達のピットに一緒に来る様にと隊長から命令が来てますのでご同行を」
私は生徒会長の役職上、関係者に会わなければ成らなくなり、アンに言われたまま従う様に肩に担がれる振りをしながら、ホワイトラビット社の受験生が待機する待機室に連行されたのだが、逃げたくなる様な、専務らしき美女の剣幕から猛吹雪が吹き交う極寒の待機室の光景とブチ切れている篠ノ之博士が何処かで観たことがある二人とモニター通信で話す光景だった。
「束さん、キレちゃったからさ、悪友も抗議に手伝ってよ」
「「いやいや、それは束の仕事でしょ(ですわ)!」」
モニターに映る相手に私は顔が真っ青になる。
一人は、呆れた顔をしながらも旧友に会えた喜びを隠さないのは、第二回世界大会キャノンボール部門のアメリカの国家代表でアメリカ空軍中佐のナターシャ・ファイルス。
もう一人は、砕けたティーカップの持ち手を優雅に持ったまま、厄介事が舞い込んだとプリプリ顔でティータイムを邪魔されたと抗議するのは、現在の『血塗れの白百合の獅子』にしてタッグトーナメント部門の元イギリスの国家代表のイギリスの第一王女のメアリー第一王女殿下だった。
そして、篠ノ之博士、ナターシャ、メアリーの学園第一期卒業生である『悪戯好きの三魔女』が揃っている状況での不穏な会話だった。
その後、篠ノ之社長との面談だったが、面談前に織斑君の試験を一緒に見る様に言われ、専務のキリーさんと篠ノ之社長の二人の間に挟まれて観る事になるのだった。
最後の試験は一夏だった。
ただ、一夏から溢れ出す濃厚な殺気と表情は怒りに満ちており、目付きは何時も以上に剃刀の様に鋭かった。
正直言えば、怖い。
ピットで纏う、白式のパッケージはBR型パッケージにバックパックはF型だったが、装備はたった一つだけだった。
最も信用をしている武装の斬馬刀だった。
カタパルトから射出され、試験官は暮桜を纏う織斑先生だった。
お互いに無言であり、スタートコールと同じくして互いに瞬時加速で加速して、ソロモン防衛戦以来に久しぶりに観る真っ赤に加熱したヒートモードが入っている斬馬刀とビームの刃を展開する雪片がぶつかり合う鍔迫り合い。
「速いわね…」
「アタシでも追うのがやっとね…」
「もし私が試験官だったら、危うく、生徒会長の座を譲る所だったわ…まぁ、サボれるからやりたかったけど…」
ギロッ
「ナンデモアリマセン!」
千冬と一夏は何合も打ち合うが、互いに瞬時加速やリボルバー瞬時加速など、肉薄したり離脱したりと目で追うのがやっとだった。
「ちぃ!」
一夏の技量と一撃が重い攻撃に私は驚愕するしか無かった。後進瞬時加速で離脱を図れば、一夏はバックパックのスラスターと脚部のバーニアを全開に私を追撃する。
「くっ、くそ!」
自分は瞬時加速を使用しているのに一夏の専用機はバックパックのスラスターと脚部のバーニアの推力を全開にするだけで追いついてくる機体との世代差を感じる隔壁した性能。
無論、暮桜だって負けては居ないが、鍔迫り合いの瞬間だけ単一仕様『零落白夜』を発動させるが実体剣を使う一夏の機体からはエネルギーを奪えず、自分はエネルギーの回復が出来ずにエネルギーが減るばかりだった。無論、最悪ならサードシフトを使うつもりだった。
そして、一夏の瞳に写る憎悪の瞳、私は何を間違えたのかが理解出来ない。
ただ、あの時は一夏を守るだけに只管に我武者羅に頑張ってきただけなのに…
カッシュと気が抜ける様な音に気が付けば、一夏の機体から切り離された円柱形の物に目を見張る。
「ちぃ、増槽タンク!?」
バックパックの円柱形の装備は飾りだと思って居たのは増槽タンクだった。やはり、一夏の機体もスラスターとバーニアの高い推力ならエネルギーを食う可能性を考えれば解る事だった。
素人だと一夏を舐め切り、迂闊にもそれを見逃したのだ。
「くそ!
一夏!」
既に暮桜の九割のエネルギーを使わされ、向こうは増槽タンクでエネルギーは満タンに回復した状態に叫びたくなる。
なら、使ってやろう。
サードシフトを…
「真打・暮桜!」
まさか、本気で駄姉がサードシフトを使うとは束姉の言う通りだったし、自分の計画通りに駄姉がキレてくれた。無論、実弾やビーム兵器が豊富な半強襲型に近いBR型とビーム兵器は無いが実弾兵器が豊富でプロペラントタンクによるエネルギーの全回復があるF型のバックパックの組み合わせはアンの好きな組み合わせで合理的だった。
ただ、この組み合わせはBR型の全体の推力の20%の低下する代わりに使い捨てだが一度だけプロペラントタンクでエネルギーの全回復は出来る。
「絢爛・零落白夜!」
単一仕様でエネルギーを全回復しながら、雪片が展開するビームの刃がビームソードの様に展開する。しかし、俺も斬馬刀のリミッターを解除して更に真っ赤に刃が加熱する。
「シャラぁぁぁぁぁ!!」
「はぁぁぁぁぁぁ!」
再びの鍔迫り合い。
鍔迫り合いで飛び交う火花。
そして、鍔迫り合いを繰り返して行く内に互いの得物である斬馬刀と雪片に罅に入るが、二人は関係無く刃をぶつけ合う。
そして、機体より先に斬馬刀と雪片に限界か訪れる。
バッキィィィン
根元から甲高い音共に砕ける斬馬刀と根元からパッキリと折れた雪片の二つの武器の最後だった。
無論、此れで終わる二人では無かった。
「千冬姉は、一度も褒めてくれなかった!」
「グッハァ!?」
一夏が叫び、リボルバー瞬時加速で肉薄し、真打・暮桜の千冬の顔面をぶん殴り、千冬姉も負けずにぶん殴る。
だが、何故か千冬の心のダメージが深刻なのは、観ていても解る。
無論、アリーナには織斑千冬が暮桜に乗り、試験官をするのだから一目観たくて見学に来る生徒や教師が居る可能性が有るのを試験官達やキレている束とキリー。無論、管制塔にいる学園長すら二人の認識から抜けている状況に突っ込む人物は誰も居ない。
そう、姉弟による大喧嘩の始まりと弟による姉への趣旨返しによる大暴露大会の始まりに過ぎなかった。
「仕送りは有り難いし、助かるよ。
でも、月に二万だけは、流石にキツイ!!」
『えぇ、実弟に酷くない…』
と見学する生徒に囁かれ
「一夏、月に50万程仕送りした筈だ!?」
国家代表だったのだから、政府からは月に約二百万は貰って居る筈であり、千冬自身も遠征費や諸経費やら雑費を引いて五十万は仕送りしていた筈だった。
無論、犯人は半殺しにした女秘書に仕送りを頼んだ結果、横領により二万しか手元に渡らない事実。束は二人の話を聞き、即時に調べて更に待機室は極寒になる。
それでも、一夏は姉を殴る。
一夏は更にぶん殴る。
「私にも話させろ!」
千冬は殴り返して、一夏に叫ぶ!!
「一夏、済まなかった!!」
「今更、謝っても遅ぉぉぉい!」
「ぐっへぇ…」
一夏の全力の右ストレートが千冬の左頬に入り、ノックダウンして、フィールドの中央に大の字となり倒れる。
ただ、一夏もアリーナを見渡すと生徒やら教師が居る事実にポカンと一瞬だけ呆けたが、駄姉を回収して詳しく話を聴かなくては行けなくなり、ブリュンヒルデが負けた事実に静かになる客席を後にピットに戻るのだった。
千冬が自宅を汚部屋にするとか、炊事洗濯が壊滅的だとかのプライベートまで暴露したが、この爆弾発言は一夏の嫁の一部にまで刺さった様で某元お嬢様や某総隊長や某技術士官は酷く落ち込んだらしい。