魔王の仔ですが世界に光を優しい人になります   作:ジャック・オー・ワンタン

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第11話:ソルバースの野望

「随分時間がかかっていると思っていたらこのザマとはな。」

「も、申し訳ありません!!ガニメデ様!」

 

現われた大男に将校達は震えながら頭を下げて謝罪する。どうやらあの男が今回の親玉の様だ。名前は・・・確かガニメデだったな。年に一回行われている軍事パレードでよく見かけていた人だから僕でも知っている人だ。

 

「なんだ?まさかあの魔王の小僧と魔導士2人相手に負けたとは言わんよな?」

「そ、それが・・・奴らはかなりの手練れでして。」

「ふむ・・・」

 

将校の報告にガニメデは僕らに顔を向けるとこちらまで歩み寄ってくる。危険を感じたのかプルートはすぐに僕を守るようにして身構えた。

 

「余程その小僧が大事らしいな。」

「ソルバース四天王が一人、”業火のガニメデ”。貴公の実力は承知しております。」

「ほう?俺を知ってるのか?物知りじゃねぇか。」

 

ガニメデは不敵な笑みを浮かべると将校達の方へ顔を向けた。

 

「おい、帰るぞ。」

「えっ!?侵略は良いのですか?」

「国王の気まぐれだ。村ではなく国を制圧したいそうだ。」

「国を制圧?それってどういうことですか!?」

 

彼の放った言葉に僕は思わずそう尋ねてしまう。

 

「フン、気になるか?じゃあ特別だ教えてやる。」

 

ガニメデはこちらに振り返ると僕達に衝撃の告白をする。

 

「我が王、サン国王はこの大陸の7つの国を征服し、ゆくゆくは世界統一を目指す計画・・・その名も『フレア計画』を此度、発動された!」

「フレア計画?・・・世界を征服だって!?」

 

明かされたソルバースの野望に唖然とする。

 

「くだらないわね。それを本当にやり遂げるつもりなの?」

「どうとでも言え、お前達もいずれ我々の力に膝を付くことになる!」

 

呆れるマーキュリーにガニメデはそう返すと僕に目を向けた。

 

「てぇことだ小僧。せいぜいその首を洗っとくことだな。」

 

ガニメデはそれだけ言い残すと倒れた兵士達を起こして撤退する。

 

「プルート!」

「ええ、今の話が本当ならとてもまずいことになりましたね。」

 

フレア計画の内容を聞いてプルートは顔を顰める。もし、この世界がソルバースに征服されたら・・・考えただけでもゾッとする。

 

「魔王様、貴方の事です。もしやとは思いますがソルバース相手に戦う・・・そうお思いですか?その覚悟はありますか?」

 

プルートの言葉に僕は先程のソルバース兵らが踏みつぶしたビクトリア村の畑を見やる。・・・許せない。こんなことをする奴らが世界を牛耳ることがあってはいけない!!

 

だから・・・!!

 

「・・・アイツらと戦うって覚悟が出来てる訳じゃない。でも!父さんが・・・先代魔王が言っていた世界に光を齎すって意味がこのことかもしれない。ソルバースという”闇”から世界を救う。その先にある未来が・・・そうなんだと思う。」

「・・・分かりました。では私も付いて参りましょう。」

 

ソルバースと戦う決意をした僕にプルートは膝を付いて改めて忠誠を誓う。

 

「はぁ・・・面倒ね。でも私も付いていくわ。ソルバースのやり方は好きじゃないし、それに貴方に魔法を教えるって役目を果たさないとね。」

「マーキュリーさん・・・ありがとうございます!」

「呼び捨てでいいわ。」

 

マーキュリーもまた僕に付いていくことを決意してくれる。この2人がいてくれるだけでも凄く心強い。

 

「あ、あの・・・」

 

するとビクトリア村の人達が僕らの前に集まってくる。あ、やべ・・・この人達に魔王の仔ってことバレてるよね?石投げられるな・・・。咄嗟に身構えて彼らを見た。

 

「村を救って頂きありがとうございます。」

 

しかし、村の人達は石を投げるどころか頭を下げて感謝の言葉を述べる。

 

「えっ?でも・・・僕、魔王ですよ?」

「魔王でも関係ない。寧ろ気付かされた。本当の魔王はソルバースの王だとな・・・」

 

村の長老らしき男は頭を上げながらそう言ってくる。まぁ、それは否定はしないし、何よりこんな暴挙に出たソルバース王は僕以上の魔王かもしれない。

 

「お願いします。魔王様。マーキュリー様。どうかソルバースを止めて頂きたい。」

「我々の村はこんなに荒らされた。だが他所の村や国でもこれが起こったら・・・ただでは済まない。」

「皆さん・・・」

 

懸命に頭を下げる村人達を見る。この人達・・・自分達の畑を荒らされて苦しいはずなのにそれが他の場で起こることを危惧している。こんなに優しい人達が何処にいるだろうか?

 

「はい!絶対にソルバースを止めてみせます!」

 

この人達の為にも僕がソルバースの侵略計画を止めないといけない!だから進もう。・・・全ては世界に光を齎す為に!

 

◇◇◇

 

 マーキュリーを仲間に加えた僕とプルートは彼女を連れて屋敷に戻ると早速、今後の方針について話し合った。

 

「ふうん、中々悪くない屋敷ね。」

 

屋敷の一室を見渡しながらマーキュリーはそう言うと椅子に座ってカロンが出した紅茶と茶菓子を口の中に放り込む。

 

「では、今後についてお話ししましょう。まず、ここがソルバースです。そしてここが我々の屋敷がある場所・・・」

 

プルートは地図を指差しながらソルバースと屋敷の位置を確認する。

 

「ソルバースから一番近い国は・・・”風の国エアリエル”ですね。」

「エアリエル?」

「エルフ族たちが多く住む国ね。」

 

聞き覚えのない国の名前に首を傾げた僕にマーキュリーがそう簡単に説明してくれる。場所はソルバースから北東部にある場所で標的となる7つの国の中で一番ソルバースに近い。間違いなく最初に狙われる国だろう。

 

「先ずはエアリエルに赴き、統治している女王に事を伝える必要があるでしょう。」

「でも・・・信じてくれるのかな?」

「エアリエルの女王は他国からの侵略に対してかなり敏感な方です。話は聞いてくれるでしょう。」

「じゃあ、決まりね。」

 

マーキュリーは立ち上がると杖を持って準備を始める。気が早いけどゆっくり出来ないのも事実だ。ビクトリアと違って標的は”国”だ。下手をしたら一国が滅んでもおかしくはない。

 

それだけは絶対に阻止しないといけない!

 

「善は急げと言ったものです。さあ、魔王様。参りましょう。」

「うん!」

 

プルートに頷き、僕もエアリエルへ向かう準備をする。こうして僕らの世界を守る戦いが始まる。

 

全てはこの世界に”光”を齎す為に・・・世界を”闇”から守る為に・・・

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