魔王の仔ですが世界に光を優しい人になります   作:ジャック・オー・ワンタン

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第15話:魔王の居場所

陥落したエアリエルから脱出し、何とか山岳地帯を抜けると船はそのまま僕らの拠点となっている屋敷へと向かう。行く宛がない彼らを放ってはおけないし、屋敷も広いから余裕はある。それにあの一帯はプルートのかけた魔法で誰も寄せつけない場所・・・身を隠すには持って来いの場所だ。

 

「こんな森の中に屋敷があるなんてな・・・。」

 

船から降りたウラヌスは屋敷を見て驚く。まぁ、誰もがこれを見たら同じ反応をするだろう僕もそうだったし・・・

 

「にしても・・・この船、操作は魔法だけで完結できるようね。エアリエルの兵士達が動かせたのは膨大な魔力を持つエルフ族だったのも理由になるわ。」

 

マーキュリーはそう言って屋敷の傍らに低空で浮かんでいるソルバースの船を見る。本当にどんな技術を使って造られたのだろうか?でも、一つ言えるのはこの船が手に入ったおかげでかなり遠くの場所まで行けるようになったことだ。これさえあれば他国に向かうことだってできる。

 

「船は奪えたが・・・我々は多くを失った。母上も領土も城も・・・」

 

ウラヌスは悔し気な表情を浮かべながら拳を握りしめる。しかし、そんな彼に部下である兵達が声を上げた。

 

「王子!まだです。私達はこうして生きてます!」

「ヴィーナスとソルバースから我々の土地を奪還し、もう一度建て直せばよいのです!」

「お前達・・・そうだな。命さえあれば幾らでもやり直せるな!」

 

部下の言葉にウラヌスはエアリエル奪還と復興を夢にする。そうだよね。命があれば何度でもやり直せるんだから。僕も頑張らないといけない。

 

「ウラヌス殿、貴君はこれから如何されますか?」

「ソルバースとヴィーナスが我が国を襲ったことで奴らが侵略作戦を進めていることが証明された。この事実を他国にも伝え、協力を仰ぐ必要がある。お前達よりも私が言った方が信憑性は高いだろう。」

 

確かに幾ら外交と交渉術に長けたプルートでも他国の説得には限界があるがウラヌスは一国の王子だ。彼がこの事実を伝えれば他の国も協力してくれるかもしれない。

 

「でしたら我々が使者として向かいます。ウラヌス様はお休みになられてください。」

「いや、私が直々に行ってこそ信じて貰えるだろう。・・・とはいえ外交は母上がやっていたから分からんな。」

「では、私も同行しましょう。他国に協力を付けるなら詳しい人が居た方が宜しいかと・・・」

 

プルートの自ら同行するという提案にウラヌスは深く頷いた。

 

「あぁ、母上と話をしていた貴君の説明は分かりやすかった。是非とも力を借りたい。」

「尽力しましょう。魔王様とマーキュリー殿は屋敷でお待ちください。」

「分かったよ。」

 

こうして僕とマーキュリーはエアリエル市民を預かって屋敷で待機するとプルート、ウラヌスは兵達を連れて船を飛ばす。帰って来るのは数日後・・・他国への協力要請は彼らに任せるとしようか。

 

◇◇◇

 

翌朝、長く感じたエアリエルの出来事を忘れるかのように僕は屋敷の庭園で栽培しているドクダミとハトムギ、ウコンに水を与えていた。・・・あれから植えて大分経ったけど大きくなってきたな。そろそろ収穫時かな?そしたらこれで良いポーションが・・・あ、思わずよだれが出たよ。いけないいけないっと。

 

「貴方、それ飽きないの?」

 

そう声を掛けてきたマーキュリーは呆れた表情でこちらを見てくる。

 

「飽きないよ。だって植物だもん!」

「何よその理由・・・。」

「植物は人よりも素直で正直なんだ・・・ほら。」

 

僕はイチゴを収穫すると採った実をマーキュリーへ差し出す。プルートに頼んで特注の肥料を使って育てたイチゴだ。実も大きいしなにより甘い。

 

半信半疑な様子のマーキュリーは恐る恐るイチゴを口にする。すると彼女は目を見開いてあっという間に平らげてしまった。ほら、思った通りだ。

 

「美味しい!こんなに甘いイチゴ食べたこと無いわ。」

「口に合って良かったよ。ニンジンもジャガイモもいい具合に育ってきたし。収穫したらカロンに美味いもの作ってもらおう。」

「ふふっ。楽しみにしてるわ。」

「・・・うん。」

 

微笑むマーキュリーに対し、僕は急に浮かない顔をする。

 

「どうしたのよ。」

「いや、その・・・エアリエルで僕が皆の命と引き換えに自分を犠牲にしようとしたけど・・・僕、結局今の今まで何もできてないなって思って・・・。」

 

心の中で抱え込んでいた想いをマーキュリーに打ち明ける。何故だろう・・・魔王の力が発現する前は他人に悩みを打ち明ける・・・なんてことはなかった。

 

そもそも悩みを明かせる人が居ない・・・といえばそうなのだが唯一の理解者であったルナにもベスタ達に虐められた時の弱音や悩みを言う事すらしなかった。それが今、自然とできている。

 

マーキュリーは僕を見ると深く溜息を吐いた。

 

「何よ。その程度のことを悩んでたの?」

「えっ?」

 

思わぬ答えが返ってきて僕は彼女に顔を向けた。

 

「貴方が戦えないからとか誰かの役に立つとかそんなこといちいち考える必要は無いわ。だってそんなこと考える歳じゃないでしょ?」

「そ、そうですけど・・・。」

「今は私達に戦うことは任せたらいいわ。」

「マーキュリーさん・・・ありがとう。」

 

笑みを取り戻し、感謝の言葉を伝える。あぁ、僕に居場所ってあったんだ。ソルバースに居た時は誰からも無関心で毛嫌いされていたのに今はある。こんな僕でも仲間を持てるんだ。

 

「そうだ。貴方に付いていく理由の一つが貴方に魔法を教える事だったわね。」

「え?はい・・・そうでしたね。」

 

マーキュリーは微笑むと杖を僕に向けて言う。

 

「じゃあ、教えようかしら。貴方に魔法を。」

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