魔王の仔ですが世界に光を優しい人になります   作:ジャック・オー・ワンタン

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第17話:オーソシエと裏切り

「うわあああああ!!あれがオーソシエか!」

「テラ、少しは落ち着きなさい。」

 

目の前に聳え立つ巨大な樹を見て僕は目をキラキラさせた。人生に一度は見たいと思っていた神木オーソシエ。それが今、目の前に!!あぁ!なんて神々しいんだ!!なんて大きいんだ!!流石は樹齢一万年の木・・・そしてオーソシエの葉は煎じて飲めばあらゆるデバフも治す万能薬となり、樹は杖にするとあらゆる傷を治す魔法を使えるとされている。

 

ただ近年オーソシエの希少性とその力が悪用されないために国が規制を行って厳重管理を・・・

 

「魔王様、もう着きますよ。うんちくを語るのはそこまでにしてください。」

「はーい。」

 

プルートに怒られた僕は返事をして船から降りるとアナンケ共和国へ到着する。空飛ぶ船が珍しいのか街の人達はこちらを見てざわめいていた。

 

「港に船を止めたが良かったのだろうか?」

「船に変わりはないから問題はないでしょう。では・・・参りましょう。」

 

どことなく適当なことを言ったプルートを先頭に早速、アナンケ共和国の首相官邸へ向かう。入り口でウラヌスがエアリエルの使者という体で門番から首相エウアンテの謁見が認められると会議室にて彼とその孫娘であるスィオネにソルバースのことを伝えた。

 

「ふむ、ソルバースが侵略作戦を・・・」

「奴らはヴィーナスと手を組み、エアリエルを奪った。各国はこのことを楽観視しており当てにできない。どうかアナンケのご協力をお願いしたいのです。」

 

ウラヌスの懇願にエウアンテは暫く考える素振りを見せた後、落ち着いた口調で答える。

 

「ウラヌス殿、先の戦いでエアリエル女王ミランダが逝去したことは承知した。ソルバースとヴィーナスの事も理解した。だが、ここは知っての通り永世中立国。協力をするとは簡単に言えんのだ。」

「・・・。ではソルバースがフレア大陸全ての国を本当に侵略しても中立を保っていられますか?」

 

エウアンテに対し、プルートは思い切ったことを尋ねた。

 

「然るべき時が来たら私達も動きます。今は中立を保つ・・・そういう事です。」

 

その問いにエウアンテの孫娘スィオネがそう答える。どうしてもアナンケは中立という立場を崩したくない様だ。どうして皆、こんなにも楽観的なんだろうか?

 

これじゃあ本当に・・・そう思っていた時だった。

 

「なんだ!貴方は!あっこら!今は会議中で!待ちなさい!!」

 

外から門番の声が聞こえてくると同時に会議室の扉が開くと満身創痍のヴィーナス兵が一人、僕らの前に飛び出してきた。えっ?ヴィーナス兵!?なんでここに?まさか・・・!!

 

「申し訳ございません。首相。今、つまみ出します。」

「構わん。それより見たところ渦中のヴィーナスの兵・・・だが、何故(なにゆえ)手負いなのだ?」

 

エウアンテは冷静な態度でヴィーナス兵を見る。

 

「は、はい・・・此度、ヴィーナスの第二皇女ウェヌスがヴィーナス本国への離反を決意したのですが本国の攻撃を受け、命からがら逃げてきた次第・・・エウアンテ様。どうか・・・仲間をお救い下さい!!」

 

ヴィーナス兵は今にも土下座しそうな格好でエウアンテに懇願する。しかし、そんなヴィーナスに領土を奪われたウラヌスは疑いの声を上げた。

 

「信用できんな。それは我々エアリエルの様にアナンケも我が物にする為の方便ではないか?アナンケの者を騙してここを手にする・・・違うのか?」

「そ、そんなことは滅相もない!!」

「そうか。どの道我々が助ける義理は無いな。」

 

本当にそうだろうか?だとしたらそんな手を使わなくてもエアリエルみたいにソルバースと結託して正攻法で落とした方が効率がいい。それにこの傷・・・明らかに行く度の戦闘を乗り越えてきた傷だ。わざわざ一国奪うためにそんな傷を負って芝居を打つだろうか?

 

「・・・くっ、見捨てられた以上・・・この命、ここで散らすまで。同志を守れぬ兵に生きる資格など・・・」

「まっ、待って!待ってよ!分かった僕は信じる!信じるよ!!」

 

遂に自殺しようとするヴィーナス兵を慌てて止める。・・・間違いない。ヴィーナスに裏切り者が出たのは!!

 

「う、疑ってすまない。君主を想う気持ちは伝わった。本当にヴィーナスを裏切ったのなら助けに行くとしよう。」

「あ、ありがとう・・・!」

 

ウラヌスも一転してヴィーナスの裏切り者を信じる。

 

「そうと決まればヴィーナスを裏切った第二皇女ウェヌスを助けに行くべきです。参りましょうか?」

「うん。」

 

プルートに頷き、反ヴィーナス勢力の救援へ向かう。突如として起こったヴィーナスの内部分裂・・・それが僕達にとって一筋の”光”になろうとしていた。

 

◇◇◇

 

ヴィーナス領の砂漠地帯に入った僕達は先のヴィーナス兵の情報を頼りに反ヴィーナス勢力の捜索を行う。適当な場所に船を止めて広大な砂漠に降りるも灼熱の環境が僕らを襲った。

 

「あ、暑い!!溶けそうだよ!」

「ヴィーナスの砂漠地帯は過酷な環境で知られているわ。」

 

ここでも冷静なマーキュリーに暑くないのか?と思わず言いそうになってしまう。木はおろか草すら生えてないこんな砂漠に居るなら早く助けないといけない。せめてオアシスさえあれば話は変わってくるのだが・・・

 

「おい!あそこに誰かいるぞ!!」

 

ウラヌスが何かを見つけて指差すとそこにはアナンケにやってきたヴィーナス兵と同じ格好の兵士とそれを率いる小柄の褐色肌の少女がメイスを片手に辺りを警戒していた。

 

「お前ら!絶対に死ぬな!約束だぞ!!」

「は・・・し、しかし!」

「諦めるな!もうすぐでアナンケだ!多分・・・はっ!」

 

すると少女は僕らに気付いたのかこちらを見てメイスを構えて言った。

 

「追手か!くそっ!アタシが倒してやるぞ!!」

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