魔王の仔ですが世界に光を優しい人になります   作:ジャック・オー・ワンタン

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第18話:砂漠の狂戦士

「ま、待って!僕達は敵じゃないよ!アナンケに逃げてきた人から話を聞いて此処にきたんだ!」

 

メイスを手に身構えている少女に僕は慌ててそう告げる。

 

「アナンケ?ってことは・・・テーベからの?本当か?良かった!!」

 

僕達が味方であると知り、少女は喜びの声を上げる。皆、似たような狂戦士(ファイター)の格好をしてるけどあの少女が反ヴィーナスのリーダー格、ウェヌスだろうか?

 

「貴女がウェヌス・・・ですか?」

「ん?アタシか?そうだ。アタシがヴィーナスの第二皇女のウェヌスだ!・・・ッ!」

 

軽く自己紹介したウェヌスは瞬時に顔色を変えると自分よりも大きなメイスを片手に辺りを見渡した。

 

「お前ら気を付けろ!追手だ!ヴィーナスの兵が来やがるぞ!」

 

彼女の言葉通り、砂漠からヴィーナス兵が次々現れると僕らを包囲して武器を構えてくる。あの砂の中にこんなにもいたのか!?そもそもこんな暑い地面の中によく隠れていれたな・・・。

 

「魔王様、関心なされているようですが油断は禁物です。来ますよ!」

「あ、うん!分かってる!」

 

プルートにそう言われて僕も身構えて戦闘態勢をとる。マーキュリーから教わった魔法・・・ここで実践する時だ!

 

「各兵!配置に付け!弓部隊は船の護衛も行うのだ!」

「「はっ!」」

「よし!うてっ!」

 

ウラヌスの指揮でエアリエル兵らは弓と槍を構えると弓兵がヴィーナス兵目掛けて矢を放ち、一気に攻めようとした彼らの出鼻を挫いた。ナイス!ウラヌス!!

 

「くそっ!エアリエルの残党め!」

「残党?我々エアリエルは滅んでいない!それを今、見せてやる!その風に忠義を!」

「「その風に忠義を!!」」

 

合言葉を交わしたウラヌス達は士気を上げて次々とヴィーナス兵を蹴散らしていく。

 

「エアリエルの兵!助太刀する!!」

「すまない!」

「お前達!無茶はするなよ!怪我をしてる奴らは前線に出るな!」

 

そんな姿を見て反ヴィーナスの狂戦士達もエアリエル兵らと肩を並べて戦い始める。善戦してはいるが状況が状況だ。先ず、ざっと反ヴィーナスの面々はウェヌス含めて6人程と少人数・・・内、半数が腕や脚に怪我を負ってまともに戦えない有様だ。

 

「くっ!怪我さえしていなければ・・・無念!」

「おい!死ぬな!しっかりしろ!」

 

そんな中、負傷していた兵の一人が膝を付き始める。見たところかなり深い傷を負っているようだ。幾ら体力と力がある狂戦士でも等しく人だ。砂漠の過酷さも相まって疲弊してしまったのだろう。

 

「な、なぁ!お前達魔法使いか?コイツ、怪我治せるだろ?な!」

「ごめんなさい・・・回復魔法は使えないの。」

「私も攻撃魔法はともかく回復魔法は専門外。しかし、その兵は一刻も早い措置が必要ですね。」

「嘘だろ・・・!」

 

回復魔法が使えないマーキュリーとプルートにウェヌスは絶望する。彼女に介抱されている兵士の顔色も次第に悪くなっていく。

 

「負傷兵を船まで運ぶんだ!我々が追手を食い止める。」

「でしたら私も加勢しましょう。」

「私もやるわ」

 

勢いを増していくヴィーナス軍に対して遂にプルート、マーキュリーも戦い始め、あちこちで攻撃魔法と能力を纏った攻撃の爆発が起こり出す。

 

「くそっ・・・アタシは仲間を守れないのか?アタシ・・・」

「ウェヌスさん・・・」

 

隣で弱っていく兵士を見ながら悔しさを滲みだすウェヌスを見る。正直、僕も戦いに参加したい・・・けど、この兵士を見殺しには出来ない。それにここには回復魔法も回復の能力も使える人が居ない。なら今、彼女達に”光”を齎すことが出来るのは誰か?

 

・・・いや、僕しか・・・いない!!僕に回復魔法は使えないけど・・・”あれ”を作れる!!

 

「ウェヌスさん!その人、僕が助けます!」

「えっ?お前が助けてくれるのか?」

「はい!」

「助けるって・・・テラ、貴方いつの間に回復魔法なんか・・・」

「それは使えないよ。でも・・・」

 

驚くマーキュリー達に僕は外に出るときに今まで肌身離さず肩に掛けていた鞄を開けるとプルートは「成程・・・確かに」と納得の言葉を漏らす。

 

鞄を開けた僕は屋敷で栽培していたドクダミと道中で採取していたヨモギから抽出した液体を試験管の中に入れて調合する。

 

「それってまさか・・・!!」

「ポーションか!?」

 

調合された薬を見て、マーキュリーとウラヌスは驚く。そう、僕が先ほどの薬草で作ったもの・・・それはどんな傷でもあっという間に治すポーションだった。

 

「ちょっと失礼!」

「おい!何すんだ!」

 

兵士をウェヌスから引きはがし、生成されたポーションを彼の口に数滴流し込み、残りを出血の酷い箇所に塗っていく。ドクダミの抗菌作用、炎症を抑える作用とヨモギの止血、リラックス作用を生かしたこのポーションなら怪我を治せる。

 

その証拠に・・・ほら!この通り、兵士の傷もみるみる癒されていく!

 

「う・・・ウェヌス・・・様?」

「す、すげぇ!治ったのか!?お前!ありがとな!」

「い、いや・・・出来る事をやっただけですよ。」

 

感謝を示すウェヌスにそう謙遜する。この手のポーション作りはソルバースに居た時からやってきた。人に試したことはないけどしっかり薬草の知識を身に付けていたから案の定、効果はあったようだ。

 

「まさか魔王様の植物好きが命を救うとは・・・予想もしませんでしたね。」

「えぇ、そうね。」

 

僕の植物オタクにプルートとマーキュリーは呆れながらも何処か誇らしげに微笑む。

 

「よし!敵の増援も無くなった!今のうちに離脱できるぞ!」

 

気が付くとヴィーナスの兵らは粗方片付いており、ウラヌスがウェヌス達を船へと誘導する。

 

「ありがとな!アンタが居ないとアタシの仲間は・・・」

「無事で良かったよ。もう大丈夫だよ。」

「あぁ!」

 

笑みを浮かべるウェヌスに僕も微笑み安堵する。しかし、それは何処からか聞こえてきた一声にて直ぐに打ち消されてしまった。

 

「その仲間を裏切ってのうのうと生きていたか・・・ウェヌス。」

 

現われたヴィーナス兵とそれを率いる女性を見て、ウェヌスは戦慄する。

 

「・・・!アディ姉!!」

 

 

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