魔王の仔ですが世界に光を優しい人になります   作:ジャック・オー・ワンタン

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第3話:魔王の仔

「我ら魔族が街を襲っているにも関わらずこの期に及んで仲間割れとは・・・人間はやはり愚かだな。」

 

屈強な魔族は僕らを見ながら呆れた言葉を漏らす。デ、デカい・・・なんだこの魔族。さっきの魔族の比にならないくらい大きいよ。

 

「う・・・うぐ・・・」

 

魔族を前に流石のベスタも躊躇いの表情を浮かべる。今、微かに足が後ろに行こうとしたよね?

 

「ベスタ!戦うなら街の奴ら逃がさないと!」

「お前、馬鹿か!こんなやべぇ奴。俺達三人でも無理だろ!」

「狼狽えるなイカルス。俺達三人要ればこんな魔族でも朝飯前だ。」

「いい度胸だな・・・」

 

ベスタの言葉に魔族は拳を構えて戦闘態勢になる。戦闘素人の僕でも分かる。これコイツらでも絶対勝てないやつだ。

 

「いっくぞおおおっ!!」

 

そして三人同時に各々の能力を纏った飛び蹴りを繰り出し魔族にお見舞い・・・に見えたが結果は思った通りだった。

 

「なっ・・・!!」

 

自分達の攻撃を右手で軽々と受け止め、「この程度か?」と言わんばかりの表情を浮かべる魔族にベスタ達は目を見開いて驚いたのも束の間、魔族は彼らの足を掴んだまま地面に叩きつけてあっという間に蹴散らしてしまった。

 

「ぐはっ・・・嘘・・・だろ?」

 

砂煙が上がる中、震えながら半身を起こしたベスタは頭から血を流して魔族を見上げる。満身創痍となった彼の姿を見てルナや民衆は言葉を失い、絶望の表情を浮かべた。自分達にとって頼もしく安心できる英雄が呆気なくやられたのだ。無理はないだろう。

 

「どうした?三人要れば俺でも朝飯前じゃなかったのか?」

 

魔族はベスタの目の前まで歩み寄ると彼に先程の言葉をそのまま返した。先の一撃でアドニスとイカルスは頭から血を流したまま気絶しており戦える状況ではない。

 

「では次は俺の番だ。良いな?」

「・・・くっ!?」

 

拳を振り上げた魔族にベスタは焦りと絶望の顔を浮かべるが僕に一瞬目を向けた途端、笑みを浮かべた。・・・一瞬過ぎた。気が付けば僕の目の前に魔族の拳が迫っていたのだから。

 

「えっ?」

「ああっ!!」

 

戸惑う僕の耳に絶望するルナの声が聞こえた途端、これまで感じたことのない強い衝撃が襲い掛かると僕の身体は空高く吹き飛んでそのまま地面に叩きつけられる。思いのほか痛みは一瞬だった。うつ伏せに倒れた身体はびくとも動かず意識もぼんやりし始める。これが俗にいう瀕死ってやつらしい・・・。

 

「まさか・・・仲間を盾にしたのか!?」

「仲間?笑わせるなよ!俺はただ無能力のゴミを始末しただけなんだよ!」

「テラ君!嘘・・・テラ君!!」

 

勝ち誇ったベスタの笑い声と僕の名前を泣きながら呼ぶルナの声が徐々に遠ざかっていく。あぁ・・・僕死ぬんだ。無能力としてロクでない人生を歩んで最後の最後でベスタに身を守る為の道具に利用されて・・・ははっ。もう笑いそうになってくるよ。

 

ルナ、泣かないで。僕はきっとこうなる運命だったんだ。だから自分を責めることも誰かを恨むこともしないで欲しい。君は・・・君だけは幸せに生きるんだ。唯一悔いがあるなら君にポーションの作り方を教えてあげれなかった事だろう。

 

意識も遠ざかり瞳の光も消えた僕は暗闇と共に迎える死を受け入れようとした瞬間、ドクンという心臓の鼓動の様な音と共に僕の耳に・・・いや脳裏に声が聞こえ始めた。

 

『テラ・マーテル・・・我が仔よ。貴様は此処で死ぬべきではなない。』

 

貴方は誰?そう聞きたいが問う権利は無いらしい。そんな僕に構わず声は勝手に話し続ける。

 

『貴様は自分の事を無能力と思っているだろう。無論、貴様以外の人達もな・・・。』

 

その通りだ。だって僕は能力が無い。ただそれだけの理由でこうして惨めな死に方をしたんだ。唯一の救いは理解者が居てくれたことだろう。

 

『だが貴様は無能力ではない。寧ろ、発現が遅いだけなのだ。』

 

・・・どういうことだ?僕が無能力じゃない?何の冗談だ?

 

『テラ・マーテル!貴様は我、”魔王の仔”だ!今こそ魔王の力、魔王の血筋だけが使える能力を発現する時だッ!』

「・・・はっ!」

 

声がそう言った途端、僕は現実に戻されると瞳の明かりを取り戻してゆっくり立ち上がる。

 

「なっ・・・!?」

「何だと!俺の攻撃をまともに受けたのに立ち上がっただと!?何故だ!!」

 

立ち上がった僕を見て魔族とベスタは驚愕する。正直、なんで立てたか自分でも分からない。でも体中から力が漲ってくるんだ。今にも溢れそうな・・・とてつもなく強い力を!!

 

「テラ君!大丈夫?傷の手当てを・・・」

「それは大丈夫だよ。ルナ」

「えっ?」

 

僕を見るや否や傷の手当てをしようとするルナを止めて魔族を見つめる。・・・集中しろ。僕の中にある力を解き放つんだ!一気にじゃない!少しずつだ!

 

「ぐっ・・・ううっ!!!」

 

両腕を交差させ、気持ちを集中させると僕の周りに風が吹き、辺りにあるものを吹き飛ばす。そして・・・僕の腕に影の様なものがうねりながら現れて纏わりつく。

 

「ッ!?ば、馬鹿な・・・その力は!!」

「おい・・・マジかよアイツ・・・」

「嘘・・・テラ君が?」

 

僕の能力にその場の全員が驚く。僕が発現した能力・・・それは火、水、土、風、光、はたまた治癒の様な能力に分類されず魔王の血筋のみが発現する禁忌の能力・・・

 

魔王の力こと”闇”だった。

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