魔王の仔ですが世界に光を優しい人になります   作:ジャック・オー・ワンタン

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第4話:闇

僕は息を整えながら両腕に纏った闇で拳をつくる。自分が魔王の仔・・・信じられなかった。でも信じざるをえないだろう。こうして能力”闇”を扱えているのがその証明だ。とはいえ、これでも制御するのにかなり苦しい。

 

こんな噂を聞いたことがある。魔王の能力”闇”は強力な力を得る事ができる反面、制御できないと闇に呑まれて自我を失ってしまう・・・と。聞いただけでも恐ろしいがその危険を今、僕は体験させられている。・・・ぶっつけ本番で。

 

「その力は・・・闇!まさか・・・魔王様の・・・!」

 

僕の能力を見た途端、魔族は先程の威勢を捨てて慌てだす。

 

「い、いや・・・まだ分からん!魔王様に子供が居たなど・・・!?」

 

どうやらまだ疑いが勝っているらしい。・・・やるしかないようだ。気持ちを集中させ、今にも呑まれそうな力を抑えながら拳を振り上げながら地面を蹴った。

 

「向かってくるだと!やらせん!」

 

魔族は臆することなく先のベスタ達の様に攻撃を受け切る姿勢をとった。大丈夫!僕はやれる!ここで負けたら本当にルナを・・・皆を助けることが出来なくなる!それだけは絶対に避けないといけない!戦闘は初めてだけど・・・

 

「どうにでも・・・なるッ!」

 

そう自分に言い聞かせて振り上げた右腕を纏う黒いオーラから漆黒の稲妻がバチバチと音を立て始める。魔族の目の前まで迫ると右足を軸にして腰を回転させながら思い切りその右腕を放った。

 

鼓膜が破けそうなほどやや甲高い自分の雄たけびと漆黒の稲妻がチカチカと白黒の景色を目の前に映すと同時に魔族に放たれた拳は受け止めた手を跳ね除け、筋骨隆々な腹筋に直撃する。

 

「ぐおっ!!まさか・・・この力は・・・本当に!?」

 

僕の一撃を喰らい、ようやく自身の嘗ての長であった魔王の力であると理解したのも束の間・・・魔族は白目を向いたまま悲鳴を上げると漆黒の稲妻から発光した光と共に消滅し、僕らの前から跡形もなく消えさってしまった。

 

はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・やったのか?というか魔族を倒したことよりも一気に疲れが身体にのしかかっていることに衝撃を受けている。これが魔王の力・・・闇なのか?それより自我を保てているとという事は力を抑えて扱えたんだな。

 

既に消えてしまった黒いオーラと稲妻が纏っていた自分の右腕を見てそう実感する。兎に角、魔族は倒せたから一難去った感じかな?

 

「おい!!」

 

違う、一難去ってまた一難ってとこだろう。ベスタの呼ぶ声に反応して民衆へ顔を向けると彼らは魔族を倒して守られたにも関わらず僕を差別の目から敵意の目に変えて睨んでいた。

 

「まさか無能力じゃなくて魔王だったなんてなァ!魔族を此処に呼んだのもテメェの仕業だろう?」

「違うよ・・・そんなこと・・・」

「黙れ!この”魔王の仔”が!」

「誰か!憲兵を呼んで頂戴!この異端児を殺すのよ!」

 

ベスタに続くかのように民衆は「ここから出て行け!」「”魔王の仔”!」「魔族を呼んだ黒幕」と罵詈雑言を飛ばしながら能力が付与された石を次々投げつけてくる。そんな彼らの圧力に能力を使った直後の身体で対応出来るわけもなく僕は渋々生まれ育った国・・・ソルバースから出て行かざるを得なくなった。しかし、ルナはただ一人"魔王の仔”である僕を心配そうな顔で見つめていた。

 

ごめんルナ。もう僕は君の傍にいてあげられない様だ。君の知らない植物の話も、約束していたポーションの作り方も・・・もう二度と教える事は出来ない。だって僕は異端である魔王の仔なのだから・・・

 

「ごめん・・・ごめんよ・・・」

 

散々な目に遭っている自分の不運を呪うよりも未だ石と罵声を浴びせてくる民衆への憎しみよりも・・・いつも傍に居てくれた人が悲しむことに僕は傷ついた。

 

遠ざかっていくソルバースの街・・・そこにはもう魔族達の姿はなく、代わりに僕の捜索を始めた国の兵士達が持つ松明の明かりが夜を照らす。あぁ・・・これからどうしようか?

 

◇◇◇

 

「ここまで来たら流石に追ってこないよね?」

 

月光が美しい夜、ソルバースからやや離れた見渡しの良い高原までやってきた僕はようやく一息つくと近くにある岩の上に腰掛けた。

 

さて、これからどうしようか?衣類や道具、大好きな植物の苗や種子等々も持ってこれず何もない状況だ。かと言って今からこっそり取りに帰ろうものならソルバースの兵士に即御用、最悪魔王の血筋を絶やす為に処刑されるだろう。

 

それに魔王の仔と分かった以上、僕の家はもう家宅捜索に入られているに違いない。丹精込めて作った野菜や植物もみな処分だろう。

 

「本当に・・・魔族よりタチが悪いよ。」

 

そんな愚痴も夜風に乗って消えていく。結局、このまま僕は死ぬのだろうか?宛てもなく”魔王の仔”という事実を広められ人知れず息絶える・・・そんなの絶対嫌だ。でも一文無し道具無しの今、何が出来るというのだろう?僕はどうしたら・・・・

 

「お困りのようですね?」

「うわああああっ!!」

 

突然、何者かに声を掛けられ僕は驚きのあまり思わず座っていた岩から落ちる。こんな人気のない場所でいきなり話しかけられたら心臓止まるって!てか誰!この人!見た感じ魔導士っぽいけど・・・僕は地べたに座ったまま話しかけてきた魔導士の男を見る。

 

「あのすみません・・・貴方は誰ですか?」

「えぇ、よく聞いてくれました。」

 

魔導士の男はかけていた黒淵の眼鏡を上げてどこか嬉しそうな笑みを浮かべた途端、今度は僕の目の前で急に跪いて頭を下げ始めた。え、怖い。何この人。なんで僕に跪いたんだ?

 

「あの・・・どうしたんですか?」

 

魔導士の男に恐る恐る声を掛けると彼はそのまま自らの素性を明かした。

 

「私はプルート。15年前、勇者と共に散った先代魔王様の側近であり、今度は貴方の側近として馳せ参じました。ここに忠誠をお誓いします!新たなる魔王様!!」

 

 

 

 

 

 

 

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