魔王の仔ですが世界に光を優しい人になります   作:ジャック・オー・ワンタン

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第9話:忍び寄る魔の手

「私の魔法を魔王に?」

 

プルートの放った言葉を聞いてマーキュリーは僕を見る。果たして彼女は首を縦に振るだろうか?と思いつつ様子を伺うと残念ながら首を横に振ってしまった。

 

「ダメね。教えられないわ。」

「やっぱりそうですよね?魔王の子供なんかに魔法なんて・・・」

「そうじゃないわ。貴方には魔力を感じないの。」

「えっ?」

 

断った理由を聞いてキョトンとする。

 

「貴方には魔法を扱う力・・・即ち、魔力が備わっていない。魔力が無ければ魔法なんて使えっこないわ。」

「成程・・・魔法を使う以前の話ですか。」

 

マーキュリーの言葉にプルートは自身の顎を撫でる。魔法が使えないのも無理はないだろう。今まで無能力だったからソルバースでも実戦の授業にはまともに出してもらえなかったしそればかりか剣術や弓といった基礎的な戦闘までも教えて貰えなかった。・・・ただ無能力という理由だけで。

 

「でも、魔法を教えれない訳ではないわ。」

「えっ?教えられないって言いましたよね?」

「それは魔力がないからよ。なら単純に魔力をつけるとこからやればいいわ。」

「確かにそれであれば時間はかかれど魔法は使えますね。」

 

マーキュリーの言葉にプルートも納得する。成程、魔力が無いのなら先ずはそこから付けることをやればいいのか。

 

「いいわ。教えてあげる。」

「えっ!?いいんですか?」

 

先程と打って変わりあっさり魔法を教える事を承諾したマーキュリーに僕は驚く。

 

「さっきはああは言ったけど闇の能力を魔法に変えることは諦めきれないしね。それより早くこの村を出たかったの。付近の魔族残党は倒しちゃったし拠点を変えたかったもの。」

 

あぁ、やっぱりそれは諦めてなかったんだ・・・と心の中で呟きながら苦笑する。でもこれで魔法を使えるようにはなりそうだ。

 

「では、準備が整い次第我々にお声かけ願います。お荷物もたくさんありそうですので・・・」

「あら、貴方達が運んでくれてもいいのよ?」

「ええっ!?」

「冗談よ。・・・じゃあ、早速。」

 

マーキュリーが村を出る為、支度しようとした時だった・・・

 

「た、大変だァァ!」

 

突然、村の男の一人が慌てた様子でこちらへ向かってくる。騒ぎを聞きつけたのか村の者達の大半が広場に集まり、目の前で息を切らした男を見た。

 

「何事だ?」

「はぁ、はぁ、はぁ、大変だ!ソルバースの兵隊が武装してここに来てるんだ!!」

 

その報告を聞いた僕とプルートは顔を見合わせる。ソルバースがビクトリア村に!?なんで?僕達がここにいることは知られてないはずだ!

 

「なんでソルバースが!?」

「そ、それが・・・ここまで来る道中で聞いたんだけどよ。どうやらソルバースはビクトリア村を正式なソルバース領にしたいらしいんだ。」

「な、なんだと!?約束が違うじゃないか!!」

 

ソルバースがこちらに向かう理由を聞いた村人達は驚きと怒りの声を顕にする。約束?一体この村はソルバースとなんの約束を交わしたのだろうか?

 

「成程、そういう事ですか?」

「どういう事?」

「ビクトリア村は昔、ソルバース王国領から外れて独立した条約を交わしたのよ。」

 

プルートの代わりにマーキュリーがそう答える。彼女曰くビクトリア村は元々ソルバース王国領だったらしいが独立を希望していた村人達の意見を尊重した先代のソルバース国王がビクトリア村の独立を認め、条約を結んだ。

 

しかし近年、先代ソルバース国王が崩御し、息子である現在の国王が若くして即位してからこの条約を突然棄却したという。

 

正に自分達で発展してきた村の人達にとっては晴天の霹靂もいいところだろう。とても胸糞が悪くなる話だ。

 

「ソルバースは今の国王になってから好戦的な思想へ変わったと聞いています。なんでも穏健派は皆、追放され現国王であるサン国王の実質的な独裁が始まっていると。」

「なんだよそれ・・・僕達はそんな話、全然聞かされてなかったよ?」

「お偉いさんってのはそういうものよ。」

 

ソルバースの実態をプルートに聞かされて僕は唖然とする。そんな国で今まで生きて来られたのは奇跡としか言いようがない。寧ろ無能力だったのによく殺されなかったなと思っている。

 

そんな事よりも今は・・・この村をどうするかだ!流石に放っておけない!!

 

「プルート。村の人を守ろう!」

「えっ?貴方本気で言ってるの?」

 

村を守る決意をした僕にマーキュリーは驚く。

 

「あっ!マーキュリー様!ちょうどいい所に!」

「お願いします!マーキュリー様!村を・・・俺達のビクトリアを守ってください!」

 

村人からも懇願されたマーキュリーは「うーん」と頭を抱えながらも溜息を吐いて言った。

 

「あーもう!やればいいんでしょ?やれば!分かったわよ!」

「あ、ありがとうございます!マーキュリーさん!」

「こんなことこれっきりよ!ちゃんと身体で返しなさいよ?」

「えっ?」

 

見返りを求めてきたマーキュリーに僕はその内容を聞いて耳を疑う。え?身体?どう言うこと?

 

「どうやらゆっくりはしていられませんね。私も戦うとしましょうか。」

 

プルートはそう言うと魔導書を広げて戦闘態勢に入る。突如迫ってきたソルバースの魔の手・・・僕らはビクトリアを守る為、奴等と相対することにするのだった。

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