ソードアート・オンライン ブロッサムフィール   作:偽帝

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第1話~絶剣~

「ふあああー・・・」

 

 

ベッドに寝そべっている少年、トウカは欠伸をして目を細めた。部屋・・・家には他に誰もいないので、静かに自分の声だけが響く。ゲームの中だが、眠い。

 

 

草が風に揺れる音が部屋の中からでも聞こえる。こうしている間にも時間が過ぎていくが今はどうでもいい。

 

 

時々こうして体を動かしたくない時がある。

 

 

今、トウカがいるのは現実世界ではない。ここはALO---、アルヴヘイム・オンラインの世界だ。つまり現実の世界ではないので、寝るという行為はあまり意味が無い。疲れは取れないし、ただの動作の一つと言っても可笑しくない。

 

 

だがそんなこと今はどうでもいい。考えるのも無駄に感じる。

 

 

トウカはゆっくりと体を窓の方へと向ける。こうぼんやりと景色を見ることがあまり無かったので少し新鮮だ。時間的に夕方なので、丁度夕陽に照らされ、視界に広がるシルフ領の首都・スイルベーンの町並みが光り輝いて見えた。塔の様な形をしている建物が多く、多くのプレイヤーでにぎわっているのがここからでも感じ取れる。

 

 

トウカの家は、シルフ領の中にあるが、彼の種族はシルフではなくインプだ。勿論、インプという種族が嫌いなわけではないし、インプの町が気に入らないわけでもない。過去に初めてスイルベーンを訪れた時、あまりの幻想的な町の美しさにトウカは心を奪われた。だから、インプの町に住むよりもこっちに来てわざわざ異種族住居税を払いシルフ領内に家を建てた。

 

 

再び体を動かして視界が天井に戻る。

 

 

(・・・やることが無い)

 

 

手を伸ばして、ベッドの横に置いておいた刀を取る。実際は少し重いらしいが、これくらいは簡単に片手で持てるように設定されている。

 

 

名刀・来国。

 

 

前に、たまたま探索に行った洞窟で偶然見つけた代物だ。モンスターやボスのドロップではなく、道端に落ちていたような感じでゲットした。

 

 

おそらくこのゲームに同じものは無いだろう。

 

 

刀の手触りを確認した後、もう一度壁に掛ける。

 

 

「・・・もう終わるかな」

 

 

ベッドの感触が心地よいのでもうちょっとこのままでいたい気持ちがあったが、現実での事を考えて仕方なくあきらめる。

 

 

片手を頭の下に当てて、もう片方の手で指を振りメニュー画面を出す。そして一番下のログアウトボタンを押し、次に表示されるメニューで○をタッチする。

 

 

足から徐々に体が光に包まれて、トウカはログアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。適当にアイテムを買っておくために、トウカはスイルベーンに向かった。

 

 

万が一のために、刀を手に持つ。

 

 

アイテム欄に他の武器は入っているし、最悪魔法でも対処できるが刀は手放せなかった。

 

 

「本当、綺麗な街だな」

 

 

空を飛びながらトウカは呟いた。

 

 

トウカの家からシルフのスイルベーンは目と鼻の先の距離で別に飛んでいくほどの距離ではなかった。しかし、空から見るのと下から見上げるのとでは全く印象が違う。空から見る景色が好きなので、トウカは敢えて飛んでスイルベーンに向かう。

 

 

スイルベーンの上空に入り、トウカは羽を震わせて空中で止まる。そしてゆっくりと速度を落として、町に下降する。最初の頃は体の感覚がフワっとして少し苦手だったが今はもう慣れた。

 

 

小さく羽を震わせながら、ゆっくりとスイルベーンの街に足を付ける。

 

 

シルフとは違う黒色の羽を消すと、二、三回肩を回す。周囲には当然シルフしかいないので、異種族のトウカを必ず一度見てから通っていく。トウカは気にせずに、近くの店を片っ端から寄ってある物を買い占める。

 

 

ある物とは、ワープ用のアイテムだ。

 

 

ワープといっても他の場所に転移するアイテムではなく、そのエリアの中で移動できるいわば、狭範囲エリア用のワープのアイテム。今からすぐに使うわけでじゃないが、これがあると色んな角度から相手を攻撃できる。どのボスにどの角度からの攻撃が一番効き目があるのかというのも試せるので、トウカにとっては重要なアイテムだ。

 

 

「まいど~」

 

 

店のNPCに軽く頭を下げるとトウカはメニューを開いてアイテム欄を確認する。

 

 

案の定ワープのアイテム数は最大まであった。

 

 

 

(暇だし、どっか探索にでも・・・)

 

 

そう思い羽を出そうと思っていた時、スイルベーンの広場の方で沢山のプレイヤーが集まっていた。それに気づいたトウカは羽を出さずに、広場に向かった。

 

 

広場に辿り着くと、掲示板らしきところで何人ものプレイヤーが掲示板を囲むように会話していた。少しだけ顔を出して掲示板を見ると、大きな文字で目立つように書いていた。

 

 

『<絶剣>、また勝利!今日現在、127連勝中!!!』

 

 

 

(絶剣・・・・・?)

 

 

トウカは誰のことを言っているのかわからなかった。しかも今日現在ということは今、まさにリアルタイムでやっているのだろう。

 

 

トウカは適当に話を聞いてみた。

 

 

 

 

 

 

数分後、トウカは広場から少し離れて聞いたことを整理した。

 

 

話によると、

 

・数週間前掲示板にデュエル求む、の申し込みが現れる。

・面白半分で指定された場所に行ったプレイヤーが今日まで立て続けに敗北、未だ勝利者がいない。

・サラマンダーのユージーン将軍の使う8連撃よりも凄い11連撃を使う。

・毎日午後3時、新しく実装されたアインクラッド24階の小島に現れる。

・勝てば絶剣が使う11連撃を受け継げる。

 

 

 

(面白そうだな・・・)

 

 

興味の沸いたトウカは口元を少し緩ませると、近くにある表示板の時計を見た。

 

 

午後3時17分。

 

 

絶剣のデュエル開始時間は過ぎているが多分大丈夫だろう。17分経って127人倒しているんだから、きっとまだ戦っているはずだ。そう思ってトウカはさっき買った物とは別のワープアイテムを出して呟いた。

 

 

丸い結晶のアイテムを手で掴んで言った。

 

 

「転移、アインクラッド第24層」

 

 

 

その言葉を言い終えると、光と共にトウカは転移した。

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