二人はゆっくりと部屋の中に足を踏み入れていく。扉が開いているおかげで何とか中が見えるくらいでほぼ真っ暗だ。
「オロチは必ずいる・・・!」
直剣をギュッと握ってユウキは辺りに気を張り巡らせる。ゆっくりと目を閉じると蜘蛛の糸のような細い線が瞼の中から視える。
口を小さく開けながらユウキはオロチがどこから出てくるかを探っている。同じ事をトウカも出来たがここはユウキを信じて近くで見守る。
チリッ
僅かに静電気に触れたような感覚がユウキの体を走る。パッと目を開くとユウキは一点を見る。
トウカもユウキが向いている方に顔を向ける。暗闇でも他の種族よりもハッキリとした視界があるインプはこういう場所でも自由に動ける。
二人の視線の先には壁に開いている二つの穴があった。小さな四角形で大きな岩くらいの大きさの穴が二つ。
じっとそこを見ていると両方の穴に明るい二つの光が現れる。
右は水色、左は赤。小さく光っているそれが動いたのは一瞬だった。
「ッッ!!」
光の正体がわかった二人は素早くジャンプして、攻撃をかわして下を見る。
硬い地面を粉々に砕いた二匹の蛇は手ごたえが無いのを確認すると空中の二人向かって襲い掛かる。
「こいつらかッ!」
二匹の蛇は別々に攻撃せず、近くに顔を近づけて口を大きく開いた。目の色と同じ色の光が口の奥で輝きだす。
「ヤバッ!」
苦笑いでそう言ったユウキは咄嗟にトウカにくっつく。
「おい!止めろって!」
「トウカッ守ってッ!」
短い会話の間にも二匹の龍は咆哮を放とうとしている。魔方陣が出現していないが、このレベルのモンスターの咆哮なら十分な威力があるだろう。
片手にユウキが絡み付いているのでトウカは片手で魔方陣を出す。素早く手を動かすと魔方陣は透明なバリアに変化する。
とりあえずユウキと自分の周りを囲み終わった瞬間ーーー。
蛇たちが咆哮を放った。赤目からは炎、水色からは氷。二つがトウカたちの目の前で合わさり威力が倍増する。
ピシピシとバリアの中心から皹が入り、少しずつ広がっていく。
「クッ!」
ギリギリで何とかトウカがもたせているとユウキがバリアの近くに行った。
「ユウキ!」
トウカが叫ぶとユウキは片手をこちらに出した。そして大丈夫、と合図すると持っている直剣が紫色を纏う。
「反射・・・!」
小さく呟いたトウカはその様子を見守った。反射系の魔法を纏わせた直剣を両手で強く握ってユウキはバリアの真ん中を斬った。
「らああああああっ!!!」
バリアの端から端を綺麗に一直線に斬ると、硝子の砕けるような音と共に消滅する。同時に炎と氷の咆哮が直剣に触れる。
咆哮は直剣を一瞬飲み込んだが、直ぐにはじき出し蛇の方向へと反射する。二匹の蛇はそれをかわすが、反射された咆哮は奥の壁に命中する。
突き刺さるように深く壁が食い込んで崩壊する。トウカとユウキは羽を使いホバリングしながら崩れていく壁を見つめる。
「ホント、発想が凄いな」
「へへ・・・♪」
ユウキの頭に自分の頭を小さく寄せる。嬉しくなったユウキは両手でトウカの体を抱きしめた。
「離せって・・・!」
「ん~、や~だもーんッ♪」
手を解くためにトウカは体を揺らすが一向に取れない。やはりユウキの筋力パラメータは相当高いらしい。
何とかして解こうと体に力を入れた時、再び壁が崩れる音がした。そこには先ほどの二匹の蛇の他に別の色の目を持った六匹の蛇がいた。
「ここからが本番だね・・・!」
怪しく目を光らせる六匹の蛇を睨みつけながらユウキが言った。