「はあ・・・」
ため息をついてユウキの頭から手を離すとトウカは刀を地面に挿した。そのまま片手で持ちながらユウキのほうを見る。
「後ろにいろ。もしかしたら危ないかもしれない」
「うん、わかった」
トウカを少しだけ見て頷くと、ユウキはトウカの後ろに付く。顔だけをヒョコっと出してしがみ付きながら様子を見る。
目を閉じたトウカは詠唱を始めた。しかし回復系や能力変化の魔法のようにプレイヤーの周りを単語が回っていない。
一つ一つトウカが呟くたびに言葉が火の玉の様に変化して持っている刀に伝わっていく。少しずつ紅色になっていく刀の先はもうマグマの様に紅い色をしている。
(これはサラマンダーが得意な炎の高等奥義・・・!)
トウカは目を輝かせながら見ていた。本来炎系の技が得意なサラマンダーの中でも5人も使えない奥義系の技をインプであるトウカが使おうとしているからだ。
しかも相当な威力だろう、もしかしたら本家のサラマンダーよりもレベルが高いかもしれない。
「断罪せよ・・・煉獄!!」
言うと同時に刀を地面から抜く。するとトウカの場所からオロチまでの一直線の距離に通路のように火柱が上がる。
マグマの噴火のような勢いの火柱は下手したら触れただけでHPゲージが黄色までいくだろう。トウカは刀を両手で握り力を調整する。
少しでも気を抜けば直ぐに制御が効かなくなってこのフロアの全マスに火柱が上がって二人ともゲームオーバーだ。
火柱はオロチを囲むとゆっくりと距離を詰めていく。直ぐに危険を察知した七つの蛇は再び咆哮を放とうとするが魔法が発動しない。
「魔法の無効化もあるんだ・・・!」
ユウキはそう呟きながら驚いていた。あの威力に魔法無効化の能力、一体どれだけ強い技なのか。どうしてデュエルの時には使ってれなかったのか。しかしその疑問は直ぐに消えた。
(きっと、トウカのやさしさだよね・・・)
口元を緩ませたユウキは抱き締めているトウカの脇腹に頬すりする。彼女も1人の女の子なのでトウカの思いやりだと考えると少し胸の奥がキュンとなる。
「くすぐったい・・・」
身を捩じらせながらトウカはさらに集中する。すると目が赤色に変化して火柱がさらに太くなる。
一つの火柱が一匹の蛇の胴体を貫く。動けなくなった蛇はもがいてる内に体力を失い目の色が失われていく。
(距離を掴んだ・・・!)
トウカは次々と蛇の動きを封じ、あっという間に七匹は行動不能になる。あとは体の中心の核となる部分を破壊するだけだ。
「ッ・・・!」
固目を瞑ると何十時間も何かを見ていたかのような視力の疲れを感じる。同時に頭がグワングワン揺れているような感覚が走る。
少しふらつきそうになって両足に力を込める。やっぱりこのレベルの技は体力・精神共に負担が大きい。
火柱の力が弱まったのでオロチは持てる力の全てを使って抜け出そうともがく。その威圧がトウカまで伝わりさらに火柱が小さくなる。
まるで目の前に自分と同じ大きさの蛇がいるかのような恐怖。ここでもし判断を間違えたら自分は死・・・そんな焦りが込み上げてくる。
一筋の汗が頬を伝った後、トウカの耳に何かの感触が合った。しかしトウカには顔を動かさなくてもユウキが顔を近づけていると判った。
「ボクがいるからね。大好きだよ、トウカ♪」
「ああ」
(こんな時にそんな言葉言うなよ・・・)
一度目を閉じた後にトウカはゆっくりと深呼吸する。すると、雑念が消えて再び火柱の威力が元に戻る。
「ハアッ!」
一声と共に新たな火柱がオロチの体の真下から突き抜ける。同時に三本の火柱がそれぞれ違う方向にオロチの核を貫いた。
トウカは刀を握る手に力を込める。すると魔法の威力が強くなって火柱がオロチの核に皹を入れた。