数分後、アイテムの効果が切れゆっくりと花の壁が消えていく。もうオロチの姿も炎も無く、来た時のように静かになっていた。
「行くぞ」
トウカはゆっくりと立つと、刀を持ってユウキの方を向いた。
「ん!」
にっこりとした笑顔でユウキは両手をこちらに差し出す。どうやら立たせて欲しいらしい。
「自分で立てよ・・・」
口ではそう言いながらもトウカは手を伸ばしてユウキの手を握り、体を起こす。よっ、と呟いてユウキはわざとらしくトウカに抱きつく。
「離せって」
「んー?♪」
ユウキはわざと聞こえないフリをしてトウカを足止めするかのようにくっついて離れない。
このままイチャつくのも良いと思うでも、それだと日が暮れそう・・・というかログアウトできなくなりそうなのでトウカはそのまま歩き出す。
すると今度は片腕に移動してぎゅっと両腕を絡みつかせてきた。
「多分、草薙剣がドロップされているはず・・・」
「激レアだねっ!でも、もう無いんじゃないかな?」
笑顔のユウキが発した言葉を聞いてトウカは足を止める。
「ちょ、どういうことだ?他に誰もいないが・・・」
「うん、他のプレイヤーが取ったんじゃないよ。激が付くほどのレア物だから、モンスターが倒されて直ぐに手に入れないと消えちゃうんだ」
「先に言えよっ・・・!」
それだけ言うとトウカは一瞬でオロチの居た場所まで移動して辺りを探す。図体が大きかったので一回り見た後、羽を出して空中からも見るが何も無い。
無言でホバリングしていると、クエストクリアの画面がユウキと一緒に表示された。クリア時間・技の威力などが細かく書いてあるがそこを無視してトウカはドロップアイテムの所を見る。
色んな種類のアイテムやユルドが表示されているが、何度繰り返し見ても<草薙剣>の文字は無かった。
「マジか~・・・。のんびり座ってたのが駄目だったのか・・・」
片手で頭を押さえながらトウカはゆっくりと着地する。すると、ユウキがちょこちょこ走りながら近くまで来て顔を近づけた。
「元気出してトウカ!今回は、まあ・・・アイテムをゲットできなかったけどボクがいなかったらオロチ倒すのも苦労しただろうし・・・ね?」
ユウキはトウカを見つめながら、褒めて褒めて!と言う風に頭を撫でて欲しそうにしている。
綺麗な紅色の瞳を潤ませながら、うったえて来るユウキを見ているとどうしても手が伸びてしまう。
「♪♪」
あ~、可愛い。本当に癒されるわ~。
目を瞑って嬉しそうなユウキの表情が、もう二度と手に入れることの出来ない<草薙剣>をゲットできなかったトウカの気持ちをかき消した。
「トウカッ♪」
ユウキが伸ばしてきた拳に自分のを合わせると、トウカは転移アイテムを使ってここを後にした。
《quest1:ヤマタノオロチ討伐》clear!