洞窟から移動してトウカの家の中に着くと、ユウキは一目散にベッドに向かった。
「俺ん家だぞ・・・」
トウカの言葉を聞きながらも、ユウキはベッドに飛び込んで脱力する。少しだけ目を閉じた後、メニューを開いて鎧を外した。
楽な格好になったユウキは足をバタバタさせながら、両手でベッドの感触を確かめている。
「はぁ」
ため息を吐いて、トウカもベッドのほうに移動する。部屋に入った後、メニューから椅子を出してユウキの寝ているベッドに寄せて座る。
「トウカー♪」
ユウキは両手をこっちに向けてきた。何を求めているのかわからなかったので、取りあえずトウカも両手で触る。小さな手だがしっかりと暖かさが伝わってくる。
「もしかして、マザーズ・ロザリオを使ったほうが速く倒せたんじゃないか?11連撃ならあの中心部分にもダメージが足りたはずだが・・・」
トウカが言うとユウキは両手を頬に付けて体を彼の方に向けた。
「使うタイミングが大事なんだよ!オロチにもそのタイミングはあったと思うけど、全体的に防御が高めに見えたから大きなダメージが期待できないと感じて使わなかったんだ!でも、もしトウカが使おうとしてもボクは止めなかっと思うよ」
「受け継いだ俺でもまだ一回も試したこと無いぞ?」
するとユウキは笑顔で嬉しそうな表情になる。
「だって、トウカなら初めてでもアレンジを加えてやってくれるでしょ?ボク、アレンジされたロザーズ・マザリオを見てみたかったなぁ♪」
「いつか、クエストの時にでもやるよ」
「約束ね!」
「ああ」
ユウキが出してきた小指にトウカも小指を出して、合わせる。2、3回上下に指を振って確認した後、トウカは立ってメニューを開いた。
「じゃあ俺はそろそろ・・・」
ログアウトする、と言おうとしたが腕に感触があったのでユウキの方を見た。トウカの衣服を小さく掴んでいるユウキは少し俯いた後、ゆっくりと顔を上げて言った。
「行かないで、お願い」
ユウキと目を合わせたままトウカは取りあえずベッドの端に座る。台詞と表情がトウカの心拍を静かに上げる。
「・・・どうした?」
人差し指で少し紅潮しているユウキの頬を撫でる。ゲームの中とはいえ少しだけ熱くなっているのが指にしっかり伝わる。
「トウカと話してたらオロチのうにゃうにゃ思い出しちゃって・・・、ちょっと怖くなっちゃった!あはは・・・」
「・・・ッ!」
トウカは小さくクスッと笑うと、ユウキに両手で頬を挟まれる。ひんやりと冷たいが他のプレイヤーとは違う特別な感覚だった。
「ね、何で笑ったの!?」
「何でもないって、離せ」
ユウキが可愛いから、と言う自身も無くトウカははぐらかして、ユウキの手から逃れようとするが全く動かせない。
「筋力パラメータで俺は永遠に勝てないのか・・・」
「そうだね!何で笑ったか教えてくれるまで離さないから♪」
「マジか・・・」
言うつもりは無いトウカはユウキから離れるために?時間格闘した。