シュンッ
音と共に視界が変わる。まぶしい光が目を閉じていても感じ取れるほどだったが、直ぐにそれは消えた。
目をゆっくりと開けると、そこは目的地、新装版アインクラッド第24層。
ワープ地点から少し歩くと、絶剣が戦っている木の場所に着く。
この階は自然が多く、静かな階だが予想通り少しうるさかった。音の正体であるデュエルをしている場所に向かってトウカは歩き出す。
距離が少しずつ縮まるにつれて、遠くからはハッキリ見えなかったものが見えた。
山のように積まれているデュエル敗北者のアバターの山。種族関係無しに何十人ものアバターが山になって積み上げられている。その周りにはいろんな種類の武器が地面に突き刺さっていた。おそらくこの負けたアバター達の物だろう、ピンからキリまでレアな武器が沢山ある。
(凄いな、負けすぎだろ)
山を見上げた後、トウカは正面を見た。大きな木の下に、広いフィールドがある。
きっとここが戦いの場所なんだろう。
よく見ると、二つの人影があった。
キン、キンッ
剣と剣が擦れあう音が、静かに響いている。絶剣がどういう風貌なのか気になるが、丁度砂嵐が舞っていて視界が悪くて見えない。
刀を手で持ちながら、トウカはしゃがんで今まさに行われている戦いを見る。
トウカは途中からの観戦だが、それでも明らかに挑戦者に勝ち目が無いのは直ぐに見て取れた。挑戦者の表情を見ても、もう半分くらい勝負を諦めているような顔だった。
挑戦者が舞っている砂嵐に混乱していると突如、細剣の先が現れ挑戦者の胸を斬った。綺麗に縦一直線、挑戦者の胸を斬り、赤いダメージ痕が光る。相当な速さだったので、アバターが悲鳴を上げるまでインターバルがあった。
「グアアアッ!!」
傷の部分を両手で押さえ悲鳴と共に挑戦者は地面に倒れると赤い光と共にこの場から消えた。トウカは立ち上がって刀を持つとフィールドの近くまで寄った。
「あーあ。つまんないなぁ」
少女の声が聞こえた。
同時に剣が振り払われて、音を立てて砂嵐が消える。するとゆっくりと絶剣の姿が露になる。少女の様な幼い顔で、特徴的な長い髪。片手に細い直剣を持ち、動きやすい鎧を身に着けていた。
トウカの存在に気づいた絶剣の少女はこちらを向いて、無邪気な笑顔を作る。
「君もボクにチャレンジしに来たの?」
「ああ。気になってね」
「そっか。じゃ、デュエルする?」
「今戦ったばかりだろ、直ぐで良いのか?」
「うん。さっきのチャレンジャーさん、物足りなくてあまり疲れてないからさ・・・!」
絶剣の少女はそう言うと、メニューを出現させて何かを押した。数秒後、トウカの前にメッセージが表示される。
[Yuukiさんがデュエルを申し込んできました。デュエルしますか?]
トウカはYesを押して、ゆっくりとフィールドに入る。
「ねえ、君何て名前?」
そう言いながら、絶剣・ユウキは直剣を構える。
「トウカ。君と同じインプ」
静かに抜刀して、トウカも刀を出す。足を動かして動きやすさを確認して、ユウキの方を見る。トウカがここに来た後から誰一人として来ていないので今、24層のこのエリアはとてつもなく静かだ。山になって倒れているアバター達ももうログアウト状態なので、誰一人として動くものはいない。
二人の間を静かに風が吹き抜ける。
「トウカ、ね。よろしく・・・!」
「・・・、こちらこそ」
トウカが言い終えると同時に、デュエルのカウント画面が現れる。
10、9、8、・・・
「君は楽しませてね!」
ニッコリと笑ってユウキが言った。
「もちろん」
トウカも口元を緩ませて返事をして、カウントを待つ。
3、2、1・・・
「ゼロォ!!」
0になった瞬間、ユウキが元気に叫びながらこちらへ走ってくる。無邪気に笑みを作りながら、片手で強く直剣を握っていた。スタートで飛び出そうと思っていたトウカは直ぐに足を止めて、ユウキに叫んだ。
「お前が言うなぁ!!」
タイミングをずらされたトウカはそう返しながら、向かってくるユウキに対して刀を構えた。
(タイミングずれた・・・)
少しイライラしながら、トウカはユウキを見た。テンポ良く足音を立てながらユウキはこちらに向かってくる。トウカは前に出ずその場でユウキが接近してくるのを待った。
キィン!!
剣と刀がぶつかり合い、音を立て風を切った。