あと3、2・・・。
バサバサッ!!
「うわっつ、な、何!?」
二人のいる洞窟の上をカラスのようなモンスターが飛んでいった。突然のことで驚いたユウキは体をビクッと震わせて上を見上げる。
もう、姿は無かったが数秒間空を睨みつける。
(今がチャンスかな)
「うっ・・・」
トウカはわざとらしく今ログインしたかのように少し眩しそうな表情をする。ユウキは避けようと思ったがそれよりも先にトウカが体を起こしたのでお互いに向かい合う体勢になる。
「・・・さっきまで腕に絡まってなかったか?」
「アハハ、何かトウカの顔をもっと近くで見たくなったから・・・」
「なんだそりゃ・・・」
頬を紅くして、少し照れ気味でユウキは言った。もしかしたら、あそこで黙ってキスしたほうが良かったのかも。
時々上目でこちらを見てくるので思わず手を差し伸べて、撫でてしまう。その時にユウキが「もうちょっとだったのに」と小さな声で呟いていた気がした。
小さく頬を拭くわませて、ふぅ~と息を吐くとユウキはトウカから降りて布団に入った。顔の半分だけを出して、隣にいるトウカを見ている。
「じゃ、俺は見張りを・・・」
ユウキに背を向けてトウカは布団から出ようとした。が、片腕を掴まれる。振り返る暇もなく、再び布団の中に引き込まれてしまう。
「ボク、トウカが隣にいないと落ち着かないなぁ・・・♪」
小悪魔のような笑みを浮かべているユウキは、そのまま体を近づけると両手を広げてトウカに抱きつく。
「お前なっ・・・」
はぁ、とトウカがため息を付いている時にユウキはメニューからログアウトを押していた。
「じゃーね~っ♪」
「ちょっ、ユウキ!このままじゃあ・・・!」
トウカが言い終わる前にユウキはログアウトしてしまい、ぐたっと体だけが残った。強めに抱きしめていたのかなかなか抜け出せない。
「ロックしたな・・・!」
筋力で負けているトウカは諦めてそのまま仰向けになる。ユウキの意識は現実にあるが、抱きしめているアバターからはほんのり良いにおいがする。
(何時間このままなんだろうか・・・)
数時間この体勢を維持することになると思うとちょっとハードに感じるが、そこにユウキがプラスされるのでまんざらでもない。いいにおいもするし平気だ。
何とか手を動かして、ユウキの頬を撫でる。このままだと、恐らく撫でることがこれから日課として組み込まれるのは間違いないだろう。ま、悪くなさそうだし。
何回か撫でた後、トウカは空を見た。さっきよりも空は暗くなっていて時々星が光ってとても幻想的だ。
ユウキに抱きしめられながらログアウトされた以上なにも出来ないので、トウカは黙って空を見ていることにした。