数時間後、すっかり空が明るくなった頃にユウキはログインした。
「おはよぉ、トウカぁ~♪」
再び強く抱きしめながらユウキは言った。ログアウトするときも抱きしめられていたので、トウカの腕がミシっと音がした。
「痛い・・・」
ダメージになるかならないかのぎりぎりの痛みをよく受けているが、相手がユウキなら怒る気にはならない。
「あっ、ごめん!痛くない?」
ユウキは素早く腕を解いて心配そうにこちらを見る。トウカは体を起こして腕を何回か回した後、「大丈夫だ」と言うとユウキはホッと胸をなでおろした。
「ここから出ようぜ。材料は集まったんだし」
布団をしまってトウカは小さな袋をユウキに手渡した。
「これに入れればいいんだね・・・!」
袋を受け取ったユウキは置いてある金鉱の山の所に行くと、両手ですくって袋に入れた。その後、閉めるために紐を結ぶと光と共に消えていった。
「・・・これでアイテム欄に入ったの?」
「ああ。そういうやつだからな」
「そっか♪」
トウカにニコっと笑顔を返すと、トン、トンとジャンプしながら近づいてくる。そして両手両足を開いて抱きつき空を見上げた。
「トウカ、どうやって戻るの?」
話かけてユウキはゆっくりとその顔を近づける。
「おそらく、羽だけじゃ相当疲労すると思うから魔法を纏って飛んでみるさ」
言い終わってトウカはギリギリまで顔を近づけていたユウキを指で突っつく。
「あうう~」
ユウキは自分の頬を押さえると、わざとよろけながら場所を移動して今度は正面からトウカに抱きついた。
「しっかり掴まっとけよ、ユウキ。危ないから」
「うんっ!」
お互いに顔を見合わせて、トウカは羽を出した。空間ギリギリまで黒い羽を開いた後、炎と闇の魔法の詠唱を始める。
何単語か言っている間に、何を思ったのかユウキも一緒に詠唱し始めたのでトウカは片手で彼女の口を塞ぐ。羽を出していないユウキまで言ったらたぶんまた最初からやる羽目になるだろう。ちょっとめんどくさい。
トウカが言い終わると既に羽には赤と黒色の円形の魔方陣が展開されていた。抱きついてそれを見ているユウキはトウカに口を押さえていた手を離してもらう。
「これを羽に纏わせるの?」
「ああ。もうそろそろ羽が変化するはず」
するとタイミングよく、羽についていた魔法陣が消えて、動物の骨格のような骨が翼を覆った。先程よりも広く羽を広げることが出来て、自動で一回動くとバサっという音と共に小さな羽と骨が落ちる。
しかし飾りとほぼ同じようなものなので、地面に落ちると直ぐに消える。
「おお~!」
口を縦に開いてユウキは驚きの声を上げる。
「じゃ、行くぞ・・・!」
トウカはユウキがしっかりと抱きついてるのを確認して、少しだけ膝を折ってしゃがむ。その後素早く空中に浮くと羽を上に向かって伸ばすと一気に上昇する。
「わわっ!」
風がヒュウウと音を立てながら頬を滑っていく感覚に、ユウキは驚きながら下を見た。さっきまで足をつけていた場所がどんどん遠くなっていく。
エレベーターの何倍もの速さで上がっていくのでユウキは少し怖くなったのかぎゅっとトウカの衣服を強く握る。
「もう着くから、大丈夫だって」
「ホント?」
「上見ろよ」
トウカの声でユウキは顔を少し上げた。同時に視界が眩しくなり、目を細める。瞼を閉じていても眩しいとわかるくらいで、穴から出てきたことが感じ取れた。
「だっしゅつ!」
ユウキは片手をグーにして空に突き上げる。
「帰るぞ」
「うん!」
辺りを見渡して安全を確認したトウカは、一気にホーム・・・シルフ領へと向かった。