「速いね~!」
「もちろん」
「あっという間だね♪」
「ああ」
10分も経たないうちにマイホームの近くまで来た。結構全速力で飛んできたトウカは少し息が上がりそうになっている。
周りの草はサーと音を立てて揺れて二人が帰って来たことを知らせているようだ。
ゆっくりと地面に着地してトウカは魔法を解いて、羽をしまう。ユウキを掴んでいた手を離すが、彼女が離してくれない。
「着いたぞ、離せ」
両手でユウキの髪を撫でると、渋々腕を解いてくれた。
「なあ、ついでにここで強化すれば?」
「そうだね、やってみるよ!」
ユウキはアイテムから先ほどしまった金鉱が入った袋を取り出し片手に持って、もう片方の手で直剣を抜いた。
邪魔しないようにトウカはユウキの立っている場所から少し離れる。
「ハッ!」
袋をぎゅっと強く掴んで、ユウキは空中に向けて思いっきり投げる。そして直剣を後ろに下げると袋が落ちてくるのを構えて待つ。
家の屋根の高さくらいまで上がった袋は一気に加速して落下を始めた。
ユウキは二歩ほど下がると、すぐに助走をつけて落ちてくる袋目掛けて直剣を伸ばした。
すると直剣の先に袋がぶつかって中身が飛び出すが、直剣はそれを吸収していく。角ばっていた金鉱が空中で形を無くして、一つずつ取り込まれていく。
無数の斬り傷があったユウキの直剣の側面が、少しずつ綺麗になりやがて傷のない新品同様の光りを取り戻した。
「復活した~!」
直剣を上に上げたまま、ユウキは笑顔で喜ぶ。
(あんな強化方法が・・・)
遠くで腕を組んで見ていたトウカは適当に使わない刀を出し、それを手に持ってユウキに言った。
「なあ、せっかくだし威力試してみたら?」
「わかった~!」
大きく手を振るとユウキは直剣を構えて、片足で力強く一歩踏み出し横一線に直剣を振った。
紫色の残像のような攻撃がトウカのいる方に向かって波のように広がる。鳥のような速さで、あっという間にトウカの近くまで接近してくる。
トウカは刀を構えたまま、攻撃を待った。いくらいつも使っている来国よりも劣るとはいえ、強度は申し分ない。ユウキの攻撃も刃先に当たれば真っ二つに分かれるはず、と思っていた。
「ッ!」
しかしユウキの波状攻撃はトウカの刀を丁度真ん中で折り、右頬に傷を付けた。落ちた刀は地面に落ちると破片になり消えていく。
「マジかよ・・・!」
予想外の威力に、トウカは少しだけ下を出して口元を緩ませた。
「トウカ!だいじょうぶ!?」
右頬の赤い傷を見たユウキはトウカの元へと走っていった。素早く直剣を鞘に収めて両手でトウカの右頬の傷を囲むように置いた。
「気にするな、これくらい」
「ダメ!」
口を小さくへの字にして、ユウキは顔を近づける。そして舌を出してゆっくりと傷を舐める。
もちろん無味無臭だが、舐められたトウカは少しゾクっとした。
「ちょ、ユウキ何やって・・・!」
「まだだよっ!」
トウカに少し強めに言って片手を肩に置いたままもう片方の手でポーションを出す。そこまでのダメージをトウカは受けていないが、ユウキは必死だ。
指を鳴らすように栓を開けてユウキは三分の一位のポーションを口に含む。まだ半分以上残っているポーションを放り投げると再び片手を肩に置いて顔を近づけた。
「ユウk・・・!」
トウカが言い終わる前にユウキは口付けして、舌を使ってトウカの腔内にポーションを送り込む。
舌は絡み合っていないが、口と口の隙間から液体が唇を伝って零れ落ちる。
「ぷはっ!」
何とかして顔を離して零れた跡を拭く。見る間でもないが、僅かに減っていたHPゲージは完全に回復している。
「治療かんりょー♪」
満面の笑みで右手でピースサインをしながらユウキは言った。その顔には恥ずかしい感じは全く無かった。
「お前なぁ・・・」
そう言った後、トウカは下唇を隠して軽く舌でなぞった。まだ、ユウキの感覚が残っていて何とも気になる。
「強化にも成功したし!家戻ろ、トウカ♪」
「・・・ああ」
ニコニコしながらユウキはこちらを見てくるが、正直今は目を合わせられない。
上機嫌で家に歩いていくユウキを見ながら、トウカも足を動かした。
《quest2:レア鉱材を探せ》clear!