「はふぅ・・・」
息を吐いたユウキは、自分の両手をトウカの顔に伸ばした。
「この耳やるね・・・ボクをここまでにさせるなんて」
そう言って自分で感触を確かめる。流石に生えている本人なので加減がわかっているのか、軽い手つきだ。
「相手がトウカだから、ずっと触らせたんだよ?他の人であそこまでさせたら串刺し確定だよ!」
「そっか・・・」
仮にナンパ目的のプレイヤーがノリで触ったら絶対キレるな。カップ麺が出来上がる時間で体中に何個穴が開くやら。ああ、想像するだけで怖い。
「トウカのほっぺもぷにぷにだー♪」
「システム的に、全プレイヤーが同じだろ」
「ボクにとってはトウカは特別だからさ♪いいのいいの♪」
小さな親指と人差し指で両頬をつままれる。何となく頭を撫でると、頬をぷにぷに押して返事を返してくれた。相変わらずの笑顔である。
こんな可愛い少女に『特別』と言ってもらえるのは凄く嬉しい。何て幸せなことだろう。よし、こうなったらもう永久に独占しよう、そうしよう。
勝手にそう決断したトウカはそのままユウキの体を起こした。片手だとちょっと力が要るがこれくらいなんとも無い。ゆっくりとユウキの体を起こすと反射的なのかユウキが手を伸ばしてくれた。
それに掴まってトウカも体を起こす。所々に雪が着いていて、染み付いている部分もあるが、そのうち乾くだろう。
チラッと視線をユウキに送る。自分が着せたポンチョ型の衣服で雪を完全ブロックしていた。さすが高級品。
雪が溶けてもしかして透けるか!?、とか思ったがそういえば仮に雪が溶けてもユウキは胸当てをつけていた。
「残念だ・・・」
「何が?」
「いや、なんでもない」
「え~、気になるじゃんっ!」
「なんでもないって」
耳元で呟くようにトウカが言うと、「うん、わかった・・・」とユウキは返事を返した。
少し俯いていて、表情は伺えないが何か恥ずかしそうにしている。
「ドキドキするじゃん、トウカのバカっ///」
ユウキは聞こえないように小声で言ったつもりだが、この距離なのでまる聞こえだ。
でもあくまで聞こえないフリをする。もし、『聞こえてる』とか言って赤面顔で直剣を振り回されたらたまったもんじゃない。
「さ、立つぞ」
「うん」
『せーのっ』っとタイミングを合わせて、二人同時に立つ。できれば、もう狼には出会いたくない。あまり時間を食わずにボスの所に辿り着ければベストだ。
「んしょ」
「だいじょぶか」
「ん・・・大丈夫」
ユウキを支えて、体勢を立て直す。いつものことだが必ず体を預けてくる。
「離れろ、進めない」
「えー!?もうちょっとだけっ」
「そのお願いに乗ったらまた二時間くらい動けないから駄目だ」
「むぅ・・・」
トウカに指摘されてユウキは考え込んだ。
しかし数秒後にその構えを解いて、人差し指を立ててトウカのほうを向いた。本当に考えたのか、ただポーズをとっていたのかは定かではない。
「ならさ!家でクリスマスパーティーの時、最後にぎゅ~ってして?」
目を輝かせながら言い寄ってきたユウキに少し圧倒される。ここまでされるともう断れない。
「ま、まあそれなら・・・」
「ありがとっ、楽しみにしてるねっ♪」
ユウキは身を屈めて表情を伺う体勢を取って、笑顔を作って見せた。行動が狙っているとしか思えないが、本人にはその気は無いのだろう。単に純粋なだけなのだ。
それにしても、ぎゅ~を期待ってどうすればいいのやら・・・。
疑問を頭の片隅に置いて考えながら、取りあえずトウカは進むことにした。
ユウキの機嫌がいい時にボスまで辿り着ければ・・・。