「♪♪」
目を瞑って嬉しそうなユウキがもっとわしゃわしゃして、とおねだりしてきたが、トウカはいったんその手を止める。どうやら魔方陣の展開が完了したようだ。
「いよいよかなぁ・・・?」
トウカは顔を光っている魔方陣に向ける。どうやらユウキはくっついたままでも、応戦できるらしい。というか多分ボスは出ないと思ってるんだろう。
念のため刀の近くに右手を置いておこうとトウカは思ったが、今髪から手を離したら確実にユウキはムスッとするだろう。機嫌を悪くするのは確実だ。
魔方陣の模様一つ一つが中心に向かって消えていく。そして、全ての模様が真ん中に集まったと同時にボウっと暴発したように膨れた。
周囲の雪が舞って、視界が遮られる。顔にも体にも雪がかかり、思わず目を瞑る。一瞬の冷たさと当たる衝撃がイラっとする。
適当に雪をはらってトウカは目を開けた。すると、ユウキは頭にどっさりと雪を積もらせていた。
偶然とはいえこうもうまく頭に積もるとは。ユウキは色んな意味でラッキーかもしれない。雪像の専門家とかに頼めば良い作品が出来そうだし。
ユウキの顔に掛からないように素早く手を動かして雪を退かす。もうそろそろ、姿を現すころだろうか、視界がハッキリしてきた。
少しづつシルエットが見えてくる。ここから見る限り結構小さい。バトルになったらデカくなるとかか?
しかし小さな姿の正体は・・・・・、
ハリネズミだった。
「「ハリネズミぃっ!?」」
口をそろえて言ってしまう。っていうかシルエットよりも結構小さい。ってかなぜにハリネズミ?トナカイとかじゃなくて?
「はぁ~!可愛い~♪」
ユウキは目をキラキラさせてハリネズミを見ているが、流石に触ろうとはしていない。
浮いている小っちゃなハリネズミは威嚇こそしてないが、物凄い針だ。ヤマアラシ並に鋭い。迂闊に触ったら手に刺さるだろう。
特に声を出すことも無くハリネズミはこちらをじっと見ている。
「多分ボスじゃないな」
「ボクもそう思う~」
ユウキの語尾が延びている。余程ハリネズミに癒されているんだろう。あと三時間位したら体がふにゃら~としてそうだ。
「キュン!」
??????
反射的に顔をハリネズミのほうに向けた。鳴いたであろう当のハリネズミは何事も無かったかのようにしている。
「今、鳴いたよね?」
「ああ。絶対鳴いた、しらばっくれやがってシステムの癖に」
ここで、『ざまあ』みたく口元を緩めてきたらブチ切れていただろう。絶対このイベント考えたやつ性格悪いわぁ。何となくそう感じる。
「トウカ、抜刀しちゃ駄目だよ?」
「え?」
ユウキに言われて見てみるといつの間にか刀の柄を握っていた。体がハリネズミに対して苛立っていた証拠だ。
可愛いのは認める、が下衆そうに見えて仕方が無い。
取りあえず刀から手を離してトウカは顔を上げる。すると、ハリネズミは道案内するように先に行ってしまった。
スピードがゆっくりなのでまだ目で追うことが出来るが、早くしないと見失ってしまうだろう。
「取りあえず、追ってみよ?」
「そうだな。行くか」
どこに向かって行くのかわからないが、取りあえず二人はハリネズミを追った。