視線に入るサンタの脛毛を見てると、なんか攻撃したくなくなるな。空気でうにゃうにゃ動いたら物凄く気持ち悪そうだし。毛深いって良い事なさそうだな、保温くらい?
「トウカ、普通に攻撃するの?」
「いや、一気に片付けたいからアレをやる」
「アレ?」
トウカはズボッ、と雪から刀を抜いて右手に持つ。
「もしかして・・・」
「ああ」
返事を返すとユウキは喜びを噛み締めるように両手に力を込めた。目をキラキラさせている。
「マザーズ・ロザリオをやる・・・!」
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「合図をしたら、同時に走ってサンタの背後に回りこむ。そのあと片足ずつマザーズ・ロザリオの11連撃を放つ。そうすれば一気にHPを減らせる筈だ」
「オッケー!トウカ、マザーズ・ロザリオ初めてだけど大丈夫?」
「大丈夫だ。ユウキと同じ『型』じゃないと思うけどしっかり決めるさ」
刀をヒュッ、と音を立てるように上下に振った後、ユウキと静かに拳を合わせた。ユウキが勢い良く押すようにやってきたので少し痛い。
「痛ぇっ」
「がんばろうね、トウカっ!」
さっきの半ヤンデレ状態からは想像もつかない天使の笑顔だ。自慢のそれを見せ付けてユウキは直ぐに直剣を構えた。
今まで様子見だったサンタの目がいっそう怪しく光る、もう不審者だ。ユウキを狙っているように見えてしょうがない。
「オオオオオオオオオオオ!!!!」
空に向かって思いっきり叫んだサンタは右手に持っていた袋を思いっきり投げた。武器と思っていたが、どうやら飾りだったらしい。最初から持っていた意味はあったのだろうか。
自由になった両手を高く上げると、一瞬の速さで地面に振り下ろした。
地震と変わらないくらいの揺れと、舞い上がった雪による吹雪が二人を襲う。両目をしっかりあけてられない。でも、攻撃するとしたら今しかない!
「ユウキィ!」
トウカは出来る限りの大声で隣にいるユウキに叫ぶ。返事をしたのかはわからないが叫んだ直後にユウキのいる位置の吹雪の向きが変わったのは確認できた。聞こえているのだろう。
それを信じてトウカはグっと力を込めて右足を踏み出し、走る。若干体を前かがみにしてあまり雪が当たらないようにする。
振り下ろされているサンタの左手を右回りに走り、右足に向かってさらに加速する。股の近くを通る時に、擦るように何かとすれ違った。恐らくユウキだ。つい、ニッと口元が緩んでしまう。
右足の裏に着くとトウカは素早くターンして正面を向いた。ここで踏み止れないと、タイミングを逃してしまう。
左を向いてみるとユウキが笑顔でこっちにVサインをしていた。サンタの後ろは吹雪がなく視界がハッキリしている。ステージ全体攻撃じゃなくて良かった。
ほぼ同時にジャンプして、互いに持っている剣を一撃目の型に合わせ、叫んだーーーーー!
「「マザーズ・ロザリオ!!」」
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「なんか、あっけなかったね」
「・・・そうだな」
トウカは雪の上に大の字になっている。何か色々疲労が一気に来た。しばらくこうしていようと思う。
足に対してのダメージがあそこまで大きいとは思わなかった。サンタは余程足を冷やしていたんだろう、可哀相に。
ユウキはというと、しゃがんでトウカを見ている。さっきトウカが刺した刀を持って自分の直剣と組み合わせポーズを作った。
「どう?二刀流!」
剣先を合わせて、ドヤ顔だ。
「見栄えはいいけど、危ないからやめろ」
様になってるのは認める。だが調子に乗って振り回されたら確実にダメージを受けること間違い無しだ。刀に傷が付くの必死だし。
「ぷぅ~・・・うりゃっ!」
頬を膨らませて不満げな顔で二本の剣を雪に挿した後、ユウキは助走をつけてトウカに向かって思いっきりダイブした。トウカの腹部に衝撃が走る。
「グッ!!」
現実じゃないことがせめてもの救いだ。ハッキリ言って痛い、ズキンズキンする。良く見てみるとHPバーが少し減っていた。
やっぱりダメージになる威力なんだな、ユウキのダイブは。助走が原因とはとても思えない。
そのままユウキは顔近くまで進軍してきて、頬擦りを始めた。相変わらずいい肌触りだ。しばらくは離れないと思うし離すつもりも無い。ドヤッ
トウカはユウキを撫でながら、視線を上に上げる。
そこには雪がしんしんと降っている中に目立つ文字でcongratulations!の文字が光っていたーーーー。
《quest3:カップル限定クリスマス特別クエスト》clear!