(さて・・・)
トウカは刀を構えたまま、小さく息を吐く。
(どうしようか・・・)
「ねえー」
意識を集中しようとしたが、ユウキに話かけられる。集中が途切れて、トウカは少しイラっとした。
「何で固まってるの?」
「良いだろ!考えてたんだよ!」
「何か思い浮かんだ?」
首を傾げてユウキは言った。言い返したら直ぐ返してくるので、考える時間が無い。
それにしても、
(絶剣がこんな子だとは思わなかった・・・)
多分、戦った誰もがそう思っただろう。見た目と強さが、一致しない。
「ねー、聞いてる?」
ユウキは不満げに頬を膨らませる。その後、何を思ったのか自分の指で頬を押して無邪気な笑顔を作った。
「♪♪」
(何がしたいんだ・・・?)
トウカはそう思った後ため息を吐いて、腕を挙げ地面に刀を挿した。刀の硬度が高いので、少しだけ地面にひびが入る。
「!」
それを見たユウキはトウカに釘付けになる。ユウキは次は何をするのかとワクワクしながら自分の直剣を握り締めた。
トウカは目を瞑ると、両手を胸の辺りで近づける。すると両手の内側に水色の魔方陣が表れ、光りだす。
水色の光がトウカの手を光らせると、小島の周りの湖の色が少し変わる。
ドォン!!
突然、小島を囲んでいる湖から何本もの水柱が表れる。二人のいる小島を完全に囲んだ水柱をユウキは口をポカンとしながら開ける。
「わー・・・!」
彼女を攻撃するための魔法なのだが、肝心の攻撃対象であるユウキが目をキラキラさせて見つめているので、中々次にいけない。
水柱の噴射と太陽の陽射しが合わさって、ゲームの中とは思えない自然の風景を作り出している。
「おい、やるぞ!」
不意打ちはしたくなかったのでトウカはそれだけ言った。静かに両手を合わせると、小島から左右で水柱が合わさる。
やがて大きな水の玉になると龍の姿になっていく。水柱から生まれた二匹の龍は空に向かって咆哮する。
響きがビリビリと感覚を刺激する。忠実に現実の動物の音声を再現しているらしいのだが、一体何の動物を合わせたのだろう。
その後お互いの体をクロスするように龍が舞うと、見上げているユウキに向かって急降下を始めた。
ユウキは相変わらず目をキラキラさせながら龍を見ていた。
やがて双龍がユウキの目の前まで接近しーーー。
ドシャァァァァ!!!
ユウキにぶつかると二匹の龍は消滅し、大量の水となって小島を覆い尽くす。
「---ッ!!」
ユウキの位置を把握したトウカはすぐさま刀を抜き、走り出す。
(これなら動けない・・・はず!)
彼女のことだからさっきのようにまた出てくる気がするが、気にせずトウカは目の前まで来る。
ユウキのいる場所で水の動きが若干違うので覚えなくても別に外れはしない。だが、予想外が多そうな絶剣の彼女なので油断は出来ない。
トウカは刀を強く握るとその地点に向かって振り下ろした。瞬間、水が割れるように割けてトウカの縦の一撃がユウキの肩に命中する。
ユウキの肩から胸の辺りまで綺麗に赤く傷跡がついている。
「あッ!」
刀が命中したと同時に水が完全に消える。ユウキは肩を押さえながら後ろに下がった。
トウカも連撃するつもりはなかったのでその場で止まる。
(・・・・・)
再びユウキを見ると、彼女のHPバーはようやく黄色まで減少していた。ユウキは肩を押さえるのをやめ、直剣で体を支える。
それでもまだ口元を緩めていた。
「凄いね。ウンディーネじゃないのにこんな高度な魔法・・・!」
「種族に囚われていたらいつまで経っても魔法を使いこなせないからな」
「そうだね・・・!」
少し苦しそうな顔をしながらも、ユウキはまだ笑っていた。