「着いた・・・」
領主館の前で息が上がっているトウカは顔を上げ建物を見上げる。相変わらずインプの町の景観にあっていない立派な造りだ。
「さ、入るぞ」
繋いでいた手を離してイクサがドアを開ける。トウカとユウキはその後に続いて領主館の中に入った。
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「トウカ、手離さないでね?」
小さな声でユウキは言うと繋いでいる手をギュッと握った。ここは騎士団舎と違って色々な人が出入りしてるので初めて来たユウキが迷うと大変だ。
トウカは返事をしないで、同じように軽く手を握り返した。
「・・・・」
視線を前を歩いているイクサに向ける。表から見る腹筋もだが後ろから見る背中もセクシーだ。ハッキリ言って騎士の格好としては露出が高すぎる。
「・・・トウカ?」
トウカがちょっとだけイクサの背中を見つめていると、後ろから禍々しい病みオーラと共にユウキが呟いた。冗談でも『イクサを見つめてた』みたいなことを言えば一瞬で抜刀されて殺されるだろう。
返事を待っている間にもユウキの片手はゆっくりと直剣の方に伸びていく。笑顔でこういうことをするので本当に怖い。
「いや、リリスさんに会うの久しぶりだなーってさ・・・」
とりあえず言い逃れの言葉を言う。するとゆっくりと背後のユウキの禍々しさが消えていった。トウカは肩の荷が下りたかのようにハアとため息を漏らす。
「でもさ、領主さんも女だよね・・・。トウカは何でそんなに女の子と縁があるの?」
「え?いや、たまたま・・・じゃないかな?」
「ホント・・・?」
ユウキのその声でトウカは思わず足を止めてしまう。さっきと明らかに感じが違った。
「あ、ああ!たまたま女の子が多いだけだよ!本当本当!!ユウキが一番だから!!安心しろ!」
繋いでいた手を解いてトウカは振り返る。ユウキは潤んだ目でこちらを見つめていた。
「ホント?ボクのこと一番好き?」
「もちろん!一番だ!!」
「結婚してって言ったらオッケーしてくれる?」
「え!?そっ、それは・・・」
どうやらイクサは空気を呼んで、先に領主室前まで行ったらしい。離れる前にトウカに舌打ちをして。
「トウカ、オッケー、してくれるよね?」
周りの人が立ち止まって二人を見始める。なんだか空気が悪くなってきたような・・・。彼女を困らせたとか思われてるに違いない。
「ま、まあ。場合によるけど・・・」
「・・・・・・♪」
若干睨まれるように見つめられた後、いつもどおりに抱きつかれた。ああ、本当に怖かった。二人の光景を見て周りの人も去っていく。何人かに聞こえるように舌打ちされた気がするけど・・・。
「好きぃ、トウカ~♪」
何事も無かったかのようにユウキは頬擦りしてくる。さっきのは本当にあったことなのかちょっと疑い深い。ま、可愛いからいいか。
「・・・・・」
静かにユウキを撫でながら、トウカはイクサの待つ領主室へ向かった。