二人は家を出て、近くの草原で羽を伸ばす。今日は風が強いので、音を立てて草が揺れている。
トウカは振り返って自分の羽を確認して、ゆっくりと助走をつけながら、走る。
サッ!
黒い羽を大きく開き風に乗って浮遊する。
「よ、っと!」
ユウキも続いて加速し飛んで、トウカの隣まで移動する。
「どうも森から行くらしいんだが、シルフの森は凄いからな」
「だね。シルフでも迷うって聞いたし。時間がかかりそう」
ユウキが言うと、トウカは頷いた。
そしてユウキに訊く。
「取り合えず、森に着いたら探索しよう。今日中には見つけられるはずだ」
「うん!がんばろっ!」
伸ばしてきたユウキの手にハイタッチして、さらに加速した。
すこし飛んでいると、直ぐに森が見えてきた。綺麗な緑色の木々が沢山、高く生えている。何か、空からの進入を拒まれている感じだ。
トウカは目を少しだけ細めて木々を見る。若干の違いはあるが、ほぼ同じで区別が難しい。
(あまり時間を使いたくないな・・・)
森を少し進んだところでトウカはユウキに合図する。それを見たユウキは無言で頷いた。合図が伝わったことを確認したトウカはゆっくりと急降下を始めた。
本来ならもっと安全な着地のやり方があるが、別にダメージを受けることは無いのでどうでも良かった。
それにできるだけ時間を無駄にしたくは無い。チョン、と足の先を着けてトウカは着地する。
2、3回足をトントン動かして感覚を確認する。
(問題ないな)
トウカは上を向いた。
いええええええええいいい・・・・・
声と共にユウキが羽を消して落ちてくる。空中で羽を消したのでますます加速している。
体を大の字にして、笑顔で見上げているトウカ目掛け少しずつ近づいてくる。トウカが体を動かそうとした時にはもう遅かった。
ドン!
音と共にユウキがトウカに命中して風が舞う。
「これはダメージだろ・・・」
勢いで少し地面にめり込んだトウカは声を振り絞って言った。
「ううん、ダメージじゃないよ!ギリギリで調節したから!」
ユウキはトウカの上から避けると手を伸ばす。無言で掴まってトウカも体を起こした。
「そういう問題じゃないだろ・・・」
ダメージにはなっていなかったが念のためお腹を手で押さえる。現実なら確実に肋骨が折れていただろう。
「いいのいいの♪」
そう言いながらユウキはある物を口にしていた。ビターよりも濃い、ほぼ黒色のチョコレートの様な形状だ。
ユウキは物凄く速く口を動かして、食べて数秒でもう半分近く食べきっている。これはインプ専用アイテムで個人能力を高めることができる。
普通のインププレイヤーなら一列くらいで十分だが、二人のレベルだと今ユウキが食べているくらいの量が必要だ。
「ん!」
未だ口を動かしているユウキはまだ食べていない部分をそのまま顔を動かしてトウカに向ける。
「ふぉうかも、ふぁべて!」
そう言われトウカも反対側に口をつける。パリっと噛んで、少しずつ食べ進める。しかし、このチョコの先にはにっこり顔のユウキがいて集中できない。
パリパリパリパリパリ
ゆっくりと食べ進めているが、何となく気まずい。別に誰かが見ているわけではないが恥ずかしい。何とか食べ進め、最後の一列まできた。
ユウキと頬がくっついて口だけしか動かせない。
パリッ
ユウキの唇に触れるか触れないかの距離でトウカはチョコを噛み切る。
「ちぇっ、もうちょっとだったのに~」
そう言うとユウキも残りを食べきる。
(やっぱり理由があってのことだったか)
トウカも食べきると気を紛らわせるように強く言った。
「行くぞ、ユウキ!」
「うん!」
二人はゆっくりと森の中へと歩き進んだ。