「どーしてこうなった」
俺は転生した。それもフリフリのドレスを着た女の子に。
ピンクを基調とした派手な色のドレスに、金髪のロングヘアー、大きくパッチリと開いた赤色の瞳。
こんな豪華な服を着ている推定五歳以下の女の子。流石に俺が知る女の子の概念を逸脱している。
「アリスちゃんはかわいいわねっ! さっすが私の自慢の娘よ!」
それに加えて、俺に着替えをさせるたびにそう言ってくるケバいババアもいる。化粧で若作りするのも無理がありますよ。
ともかく、俺は転生した。それも俺がとてもよく知る人物に。
「ああ! 本当に可愛いわ! アリスちゃんこそハーゼンブルク家の宝よ!! どこぞのボロ雑巾とは違うわ」
アリス・ハーゼンブルク。それは前世でプレイしていた乙女ゲー『ラブロマンス・マギア』に出てきた悪役令嬢の名前だ。
おいおいゲームで登場する世界に転生するっていうのは聞いたことあるけど、性転換するってのはかなり珍しいんじゃないか?
男の俺がぶりっ子で腹黒いと有名なアリスに転生するなんて思いもしなかった! 接点どころか、めちゃめちゃ真逆の属性じゃねえか!
「ほんと、どこぞのボロ雑巾とは大違い。目障りな子、あの子さえいなければアリスちゃんが家を継げるというのにね」
アリスは乙女ゲーの悪役令嬢というやつだ。嘘を巧みに使い、可愛らしい見た目で姉の婚約者を魅了し、姉を婚約破棄まで追い込んだ。
その後、姉は誠実な態度や人間性でアリスの嘘を暴いていき、ついには周囲の人々からの信頼を取り戻した上でアリスの悪事を暴くことに成功する。
俺の母——マーガレットが言ってるボロ雑巾というのは、ゲームの主人公であるアリスの姉のことだ。
流石に破滅なんかしたくねえ!!!
アリスが歪んだのはこのババアのせいってのもあるだろう。このババアはとにかく性格が終わってる。血が繋がっていないとはいえ、同じ屋敷に住んでる人をボロ雑巾呼ばわりはないだろう。
「アリスちゃんはあんな子にならないためにも可愛くしましょうね〜〜。女の子は可愛らしさが何よりも大切だから!」
……は? 嫌だが?
その結果、男を誑かす悪女になって破滅するんだろ? そんなの真っ平御免だ。
それにラフロマンス・マギア……ラブマギの世界に転生したんだ。やってみたいことがある。
それは可愛い女の子で重武器を振り回すということだ!
ラブマギは戦闘システムもある。
この戦闘システムが簡素だが意外と作り込まれてて、戦闘システムメインにしたらもっと売れたんじゃないかっていうくらいだ。
それにここは異世界。ギルドや騎士団、魔法図書館など、ファンタジーにお馴染みな要素は一通り出てくるっ!
ならやってみたいだろう。可愛い女の子がでっけえ武器を振り回して無双するシチュエーションを!!!
でっけえ巨漢の戦士が使うような巨大な武器を華奢な貴族令嬢が扱う……なんていうロマン!
俺のロマンスは巨大武器にこそある!!! 王子様との恋愛なんてその辺の馬に食わせておけばいいのだ!!!
そのためにはこのフリフリとした服は邪魔だな。将来的にはこんな服装を着た状態で戦いたいが、今は動きにくいだけだ。
「やっ! フリフリ嫌い!」
「え……? どうしたの? いきなり……!? 前までフリフリ好きだったじゃないの!」
「やっ! あれがいいっ! フリフリ嫌い!」
ついでにあんたも嫌いって心の中で唱える。
俺が指差したのは子供用のズボンだ。つまり男物。ああいう動きやすい服の方が好みだ。
「あ、アリスちゃん! そんなもの履くなんてありえません!! こっちの方が可愛いじゃないの! こっちはどう?」
代わりに出された服もまたフリフリが着いた服だ。
却下! 圧倒的却下!!!
「やっ! フリフリやっ!!」
「これは? こっちはどうかしら? 私自慢の可愛い服よ」
「やっ! ひらひら、フリフリやっ!!」
「そ、そんな……。アリスちゃん、可愛いくした方がいいのよ。絶対にそうに決まってるわ!」
「や! あれがいい!!」
小一時間ほど、俺はわがままを言い続けた。
マーガレットはアリスのことを溺愛している。このまま俺が拒否を続けていればいい感じの妥協案を出してくれるだろう。
「わ、わかったわ。特注で作らせるわ。いい! それ以上のわがままはなしよ! わかった!?」
「あい」
「ああもう! アリスちゃんは可愛いんだからっ! そうね、そうよね。ちょっと変わった服も着たいお年頃よね!」
まあしばらくの間は動きやすさ重視で服決めるけど。
ふふん、それにしてもちょろいぞこのババア! 流石は愛想だけはいいアリスの身体!
これで第一関門は突破した。
けど、まだまだやるべきことがたくさんだ。先ずは華奢なアリスの身体でも武器を持てるように鍛える必要がある。
王子様とのロマンスなんざ必要ねえ!
俺は特大武器とのロマンスを選ぶぜ!!!
見た目だけはいい本編のアリスの姿で武器をぶん回してえ!!
そのためには十年間でめちゃめちゃ鍛えるしかない! そうと決まれば特訓開始だ!!