TS悪役令嬢は特大武器で無双したい   作:路紬

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特大武器のお披露目

 数日後、私は王都にあるルミナス学園へと来ていた。

 

 王都はなんだか落ち着かない。人は多い、視線は感じる、思いっきり動けない!

 

 この三重苦のせいで危うく泣きそうになるところだった。それに今日に限っては服装も。

 

「お母様。今日は実戦試験ですよ」

 

「分かってるわアリスちゃん。それがどうかしたの?」

 

 そろそろ五十歳が見えてきたババアに、アリスちゃんと呼ばれた時は卒倒しかけた。今もそうだ。

 

 流石に若作りはきついって。もうそろそろ現実を受け入れてくれよ。

 

「このフリフリのドレスはなんでしょうか? とても動きにくいのですが……」

 

「何を言ってるの! とっても可愛いじゃない! いい? 実戦試験といえば、王子様だって見学に来られるんだから! おめかしはしなくちゃいけないでしょう?」

 

 だからと言って今から戦うというのに、お姫様みたいなクソ動きにくいドレス着させるバカがどこにいるんだよ!?!?

 

 いや、ここにいたわ……。

 

 腰に巻いたコルセットや、やたらと高いヒール、ひらひらとしたレースなどなど。とにかく動きにくい要素たっぷりだ。

 

 こんな姿でも戦えるように鍛錬はしたけれど、パッと見だと実戦試験を舐めてるような姿だ。

 

「いいことアリスちゃん! エレナは学園ではとっても人気と聞いたわ! アリスちゃんも負けずに可愛く! そして強く! 人を魅了しなくちゃいけないのよ!!」

 

「はいはい。分かりましたよお母様」

 

「はいは一回って言っているでしょう! 全く、言葉遣いはエレナの方がマシね」

 

 ババアもといマーガレットお母様はこの数年間で大きく変化した。特にエレナお姉様への扱いは激変と言ってもいいだろう。

 

 ふふん、さすがエレナお姉様。エレナお姉様の溢れる魅力に気が付いたに違いない。

 

 エレナお姉様はとても美しい。音速を超える剣技はいまだに理解できないけど、学園で屈指の人気を誇るという点には納得だ。

 

 それに比べると私は童顔がすぎる。エレナお姉様のようなクールビューティー路線を攻めたいが、私にはあまりにも似合わない。

 

 可愛い系路線しか行けない自分の容姿が恨めしい。やはり私はパワーで全てを捩じ伏せるしか……。

 

「そういえばアリスちゃんは武器はどうしたの? 試験には武器の持ち込みが必須なのでしょう?」

 

「安心してくださいっ! すでに会場に運び込んでいますから! さて、そろそろ時間なので行ってきますね!」

 

 時計を見たら試験の時間が近づいていた。

 

 さて、お待ちかねの試験の時間だ。私にとっては新武器のお披露目なのだが。

 

 ルミナス学園の実戦試験は現役の教師を相手に行なわれる。場所はルミナス学園の闘技場。その試験は多くの学生や貴族たちが見学している。

 

 ゲームでも主人公……エレナお姉様はこの闘技場で行なわれる授業の見学中に、王子と出会う的なイベントが起こる。アリスもよくこの闘技場に来ていた気がする。

 

 この闘技場はいわば出逢いの場みたいなものだ。もっとも私が出逢うのは王子様ではなくて、武器なのだが。

 

「次! 試験番号100! アリス・ハーゼンブルク!!」

 

 私の名前が呼ばれた! 私はるんるんで闘技場の中へと入っていく。

 

 闘技場はまばらだけど見学席に人がいる感じだ。私の対面の奥側に試験を担当する教師が立っている。

 

 そこそこガタイのいい人だ。腰には片手で扱えそうな細身の剣がある。この感じ、剣士タイプかな?

 

「アリスちゃーんっ!! 頑張ってねー!! 私! 応援してるからっ!!」

 

 と周りの視線を気にせずにエレナお姉様がぶんぶんと手を振りながら、私に声をかけてくる。

 

 ふっ……エレナお姉様。周囲を気にしないその胆力、流石ですわ。

 

「ふん、お前、あのエレナ嬢の妹か。なら、手を抜くわけにはいかんな」

 

 あれ? なんかこの人怒ってない? 声色ちょっと威圧感あるんだけど。

 

 下手に刺激しないようにここはお淑やかに振る舞うことにしよう。

 

「エレナお姉様と比べたら私はまだまだですわ。試験官様、どうかお手柔らかにお願いしますね」

 

「同じような言葉を去年も聞いたっ! あの時、俺は何が起きたのかわからないまま気を失ったんだぞっ! 屈辱だ……絶対に手を抜かん!!」

 

 えぇ……逆にヒートアップしたんだけど。エレナお姉様どんな勝ち方をしたの……?

 

「さあ武器を出せっ! 俺は女だろうが容赦はせんぞ!!」

 

 試験官が腰の剣を引き抜く。鞘から抜かれると同時に、刀身に炎が纏うっ!!

 

 剣士ではなくて魔法剣士タイプっ! あの手のエンチャント系の武器は見た目以上に色んなことができる。

 

「これは代々継承されてきた魔法剣技っ! さあ、お前も武器を抜くといいっ!」

 

「ふふっ、なんて……なんて素晴らしい剣なのでしょうかっ! 私! ガラにもなく興奮してきました!」

 

 私は特大武器に魂を捧げているが、ああいう技巧派の武器も好きだ。特に魔法でエンチャントされた剣は男の子のロマンだ。今は女だけど。

 

 こんなに素晴らしいものを見せてもらった。なら、私も抜かねば無作法というもの。

 

 本気で相手をしよう。

 

「来なさい、星砕き」

 

 私の右手にはめた指輪が光を放つ。次の瞬間、私の右手側に巨大な鎚が現れた。

 

 大きさは二メートル以上。柄の先端には巨大な四角形に整えられた巨岩がついている。

 

 星砕き……それは巨大な隕石を加工して作られた私専用の武器だ。並の人間には持ち上げることすら不可能なこれを持ち上げるために、今まで鍛錬してきたっ!!

 

「さて、始めましょうか……っ!!」

 

「ちょ……ちょっと待てっ! そ、それがお前の武器!? え!? なんでそれを軽々しく持ち上げているんだ!?」

 

「気合と根性ですっ! さあ行きますねっ!!」

 

「み、見かけ倒しを!! そんなまやかしこの俺に通用するとでも思ったか!!」

 

「見かけ倒しかどうかはご自身の身でお試しくださいませ!!!」

 

 私は星砕きを右手だけで握りしめて前へと突進する。試験官は炎を強くして私の攻撃を防ごうとするが……。

 

「どっっっせえええええい!!!!」

 

「ぐわっ!?!?」

 

 星砕きが剣の刀身を粉々に砕き、試験官を大きく吹っ飛ばす。これが私のホームランの力ですわ。

 

 ……ってあれ? 流れで試験官ぶっ飛ばしたけど、試験これでよかったのか……?

 

「アリスちゃんすごーい!! さすがアリスちゃん!」

 

「あれがハーゼンブルク家の……」

 

「お、俺、ちょっとトラウマが……」

 

「あんな小さな身体でなんてものを振り回すんだ……」

 

 エレナお姉様は興奮しながらぶんぶんと喜んでいるが、周囲の人から何か腫れ物を見るような視線を感じる……!

 

 も、もしかしてやりすぎた!?

 

 こ、これで悪役令嬢って勘違いされたらどうするの!?!?

 

 あーやってしまった! もう少し軽めの武器を使うべきだった!!

 

「あー恥ずかしい……。ついついはしゃぎすぎてしまいました……あははは。はぁ……」

 

 私は肩を落としながら会場を後にする。

 

 変な噂を立てられないようにと願うばかりだ。

 

 

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