「……」
「お連れいたしました」
目の前にいるメイドに連れてこられたのは紅魔館のテラス。
そこにはお茶会でもするかのようなセットがあり、二つ用意されている椅子の内の一つには彼女が座っていた。
「生憎の天気ね……魔理沙」
曇り空を見ながら椅子に座る彼女は言った。
「呑気なもんだな、フラン」
「……まあ、とりあえず座りなさい」
そう言って、フランは自身の反対側の席へつくことを促す。
それに対して魔理沙は少しため息をつきつつも、椅子に座った。
「で?全部お前の読み通りか?」
魔理沙はそう切り出す。
「まあ、大方は……」
「大方ねぇ……」
嫌味のように魔理沙は言う。
「……あなたはどこまで分かっているのかしら?」
それに対してフランはそう返す。
「紫の話だと、妖怪が集まってできていた集落から妖怪が消えたらしい」
「集落はもぬけの殻……おまけにこれと似た失踪事件が何件か起こっている」
「それと、最近妖怪や霊がかなりの数殺されている」
魔理沙は八雲紫から聞いた情報を合わせて伝える。
「失踪に連続殺害……ただでさえ何件か大きな異変が起きているというのに……この世界も世紀末ね……」
他人事のようにフランは言う。
「はぁ……何でこうも面倒事ばかり起こるんだ?」
「……大きな異変はこれで何件目なの?」
「……この二つを合わせて五つぐらいか?」
魔理沙は嫌な顔で数えて答える。
「……言い表すなら、五大異変ってとこかしら?あなたも大変ね」
「大変って思うなら手伝ってくれよ」
そう言う魔理沙に、
「丁重にお断りさせてもらうわ」とフランは答えた。
「まあ……とにもかくにも、これで分かってくれたかしら?」
「……」
被害状況から早急に対処すべき案件であることは明白。
嫌でも理解せざるを得ない。
最近起きている事件も、フランの言っていた災いとやらの仕業なのだろう。
「……お前が私をここに呼んだってことは、お前の言う大きな戦いというやつが近いのか?」
魔理沙が聞いた。
「いえ──」
それに対する返答は否定の言葉から始まった。
「もう始まっているんじゃないかしら?」
「始まってる……?」
その言葉に耳を疑った。
外の景色を見るも、戦いが起こっているような気配はない。
いや、ここに来る途中で幾度か爆発音が聞こえたような気がする。
だとしても、今こうして外を見ているのにその様子が見えないのは……
「結界術……それとも転移術かしら?」
「どちらにせよ、相手方も相当の手練れね……」
フランはそう分析する。
魔理沙はそれで納得したのか、フランにそれ以上のことは聞かなかった。
「……いつでも出れるよう、準備なさい」
フランは魔理沙を見て、そう言った。
少しの緊張が魔理沙に走る。
「終わったらすぐに行くわよ」
そうして、フランと共に戦いが終わるのを待つことになった。
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「……は……はは……」
思わず笑いが込み上げてくる。
してやられたと言うべきか、まだまだ実力不足だったか…
森の中で少しよろめく足取りに、ボロボロになった服─
戦いに敗れはしたものの、鏡影の目には殺意が宿っていた。
まあ……どちらでもいい……
「次会った時は……殺してやる……」
──己に初めての敗北を味わわせた強者への殺意が……
「
幻影は進み続ける、かの者を打ち倒すその時まで──
「………」
「………何だ?お前に構ってやるつもりは無いぞ」
そう言って鏡影は木々の生い茂った森の方を見る。
「──嫌でも構ってもらうから心配しなくていいわよ」
鏡影が見ていた方向の木の影から人影がその姿を現す。
「お前……吸血鬼か……確か名前は……」
「──フランドール・スカーレット、冥土の土産にでも覚えて逝ってちょうだい」
そう告げ、剣を取り出しフランは戦闘体勢に入る。
フランは急速に接近し、鏡影との距離を詰める。
そこから放たれる一閃を鏡影は受け止めようとする。
「──⁉」
しかし、鏡影はフランの初撃を見誤る。
鏡影の想定よりも、フランの動きが速かった。
咄嗟に後ろに下がって鏡影は直撃を避けるが、剣先が鏡影の胴を掠める。
フランの攻撃を避けるために後ろに下がった瞬間だった。
鏡影の頭上から無数のナイフが降り注ぐ。
ナイフを弾き、それを放った者を探す。
「………!」
しかし、鏡影はすぐさまその場から離れた。
その直後、自身の居た場所を一筋のレーザーが通過する。
「……ほう、思ったよりも手厚い歓迎だな」
突如として襲った不意打ちを全て避け、それを行った者たちの姿を見る。
「そちらこそ、思っていたよりも元気そうじゃない」
フランは皮肉のように言った。
フラン、咲夜、魔理沙が鏡影を囲む。
(こいつら……このタイミングを狙って来やがったな……)
正直、一番嫌なタイミングだな……
先程の戦いでかなり消耗した上に、そもそもとしてまだ時間が必要な状態……
本気で殺りに来ているということか……
魔理沙が放った弾幕を軽々と避け、咲夜の投げたナイフを弾き、フランの攻撃を避けて距離を取る。
(やはり、一番厄介なのはあの吸血鬼か……)
(ならまずは……)
背後から放たれたフランの攻撃を避け、木々の中へ隠れる。
三人の周りを回るように移動し、途中で気配を消す。
三人は各々鏡影の奇襲に警戒し、構える。
この世は弱肉強食──
強い奴が生き残り、弱い奴から死んで行く。
そしてこの場で一番弱い存在は──
(まずはこのメイド──!!)
鏡影が現れたのは咲夜の頭上──
咲夜が鏡影の不意打ちに気付くのが一瞬遅れる。
戦場での一瞬は、戦いの決着がつく時間として十分。
一瞬の内に、振り下ろされた鏡影の腕が咲夜との距離を縮める。
その距離が数センチとなった時──
「──⁉」
咲夜の姿が消えた。
それと同時、鏡影の背後からナイフが降り注ぐ。
鏡影は影を自身を被うように展開し、それを防ぐ。
「……」
影を解き、周りを見渡す。
すると、少し離れた位置にメイドが立っているのが見える。
(瞬間移動……?)
一瞬にして姿を消し、次の瞬間には別の場所に現れる……
いや……だとしたら先程のナイフは?
フランが接近し、剣を振るう。
鏡影は後ろに下がって避け、鏡影が下がった位置に魔理沙が攻撃を放つ。
鏡影は影を壁のようにして防ぐ──
だが、魔理沙の放った攻撃が当たった瞬間、影が弾けるようにして消えた。
「──?」
鏡影は体を反らして壁を貫通して飛んできた攻撃を避ける。
攻撃を避けつつ、飛んできた物を見る。
(札……)
(なるほど……退魔の札という訳か)
それを確認した瞬間──
視界の端に銀色に輝く物体が映る。
(また……)
ナイフは影で防ぐ、吸血鬼と巫女の攻撃は避ける。
ある程度対処法は決まった。
あとは奴らの能力がわかれば……
メイドの方はある程度の目星はついている。
ナイフが自身を囲うように現れる。
鏡影は影を駆使してそれらを全て弾き飛ばす。
背後からのフランの不意打ちを身を翻して避けつつ、フランに向けて腕を伸ばす。
「……」
魔方陣……
鏡影の伸ばした手の先に魔方陣が展開される。
次の瞬間、魔方陣からレーザーが放たれた。
フランは剣を盾のようにして防ぐ。
フランがそれに気を取られている間に、即座に鏡影は移動する。
次の瞬間、鏡影が現れたのは咲夜の背後──
しかし、一瞬の内に咲夜の姿は消え、代わりにナイフが鏡影を取り囲むようにして現れる。
一瞬──
たった一瞬──
それがまばたきをするだけの時間だとしても……
たとえそれよりも速かったとしても……
一瞬──たったそれだけがあれば、咲夜には十分だった。
「時間停止……か……」
ポツリと鏡影が呟いた。
それに対して咲夜が反応を示した。
一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにいつもの涼しい顔に戻る。
「停止中に攻撃を加えないのは能力の仕様か……?」
「なあ、答えてくれよ……」
鏡影は振り返り、咲夜を見る。
「──
弱ったところを奇襲しよう作戦スタート
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