私が光となれたなら   作:メイア・カルテシア

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エピローグのようなものです。
ここまで読んで下さった方、本当にありがとうございます。


またあなたと

「ここは……?」

 

目を覚ますとそこに広がっていたのは、どこまでも続いていそうな一本道と、これまたどこまでも続いていそうな草原が道の横に広がっている光景。

私はその道の真ん中にポツンと佇んで、周りの景色を眺めていた。

 

 

その時だった。

「陽」と私の名を呼ぶ声が後ろから聞こえてきた。

その声には聞き覚えがある。

その声の主を、私は知っている。

 

その声は、また聞きたいと望んだ声。

「──久しぶり」

もう聞くことはないと思った……あの人(・・・)の声。

 

「え……?」

陽は情報を整理できずに固まった。

「……あれ?思ってた反応と違うなぁ……もう少し泣きつかれると……」

 

「な、なんで……ここに……」

思わずそう漏らす。

それもそうだ、今目の前にいる人物はずっと昔に亡くなったはずなのだから……

 

「いやぁ……何でと言われてもなぁ……」

「……ここは……どこなの?」

「さぁ?それも知らねぇな……」

 

どうやらこの人も何もわかっていないようだ。

でも、そんなことよりも……

 

「それよりも先に──」

そう言っている途中で、陽は目の前の者に抱きついた。

「あぁ……いや、何でもない……」

 

「うぅ……うっ……ひっく……」

陽はその者の胸に顔を埋め、嗚咽を漏らす。

 

あぁ……あの人だ……

あの人なんだ……

 

「……」

その者はそっと陽の頭を撫でた。

「ごめんな、一人にして……寂しかったよな……」

「ううん……私こそ、ごめんなさい……」

 

 

「私……私……」

「大丈夫、焦らなくていい」

そう言って陽を落ち着かせる。

 

「ゆっくりでいい……言いたくなかったら、言わなくていい」

陽の声から、それがただ事ではないことはわかった。

でも、それを無理に言わせる必要なんてない。

 

人なんて過ちの一つや二つくらい、みんな犯してる。

言いたくないなら言わなくていい。

それで傷つかずに済むのなら、それでいい。

 

でも、陽ならきっと……

 

「……私……いっぱい殺しちゃった……」

「罪の無い妖怪を……いっぱい……」

 

「そうか……」

「ごめんなさい……私……」

 

 

「大変だったな……」

「え?」

その言葉に驚いた。てっきり、怒られると……

軽蔑されると……思ったのに……

 

それが、せめてもの私への罰になると思ったのに……

 

「お前がそんなことを理由も無しにする奴じゃないことくらい知ってるよ」

「それに、今こうやって犯した過ちを反省できてるじゃないか、それだけで十分だ。何か訳があったんだろ?そんなに思い詰める必要はない。頑張ったな……」

 

何があったのかは知らない。

でも、こいつが十分苦しんだことはわかる。

こいつを裁くのは俺の役目じゃない。

なら俺は、せめてこいつの側に居てやらないといけない。こいつが一人にならないように……

 

それに、きっと地獄の閻魔サマとやらもこいつが救った人たちのことも見てくれるはずだ……

こいつを今無理に責める必要はない。

 

「でも、私は……」

「その話はおしまい。後ろばっか見てないで、前を見ようぜ」

そう言って、その話題を打ち切る。

 

「……」

この感じ、懐かしいな……

 

「またカッコつけた……」

 

「い、いいだろ⁉別にカッコつけても……」

「ふ、ふふっ……」

ああ、この感じ……あの頃みたい……

この人の、たまにカッコつけたこと言うところも変わっていない。

 

いいの?

本当に……こんなこと……

私が……

 

いや……ダメだ……

私には、行くところが……

 

 

「で、ここはどこなのかな……?」

私はその人から離れて、再度辺りを見渡す。

「さあ?ただ道があることしかわからないな……」

 

この人はそう言ってるけど、私にはここが何かわかったような気がする。

だって……そうじゃないと、これの説明がつかない。

 

「あの世……なのかな?」

「……そうかもな」

 

私は死んだ、だからここに来て、そしてこの人に出会った。

「だったら、この道はどっちかが天国に、もう片方が地獄に通じているのかな?」

 

ここにあるのは一本道だけど、進める方向は二つある。

死んだ私とあの人がここにいて、二つ行き先があるとすればそういうことだろう。

 

 

「そうだったら、どうするんだ?」

 

 

「……あなたとは、違う方向へ行く」

 

「何故?」

「だって、きっとあなたが進む道は天国に通じているだろうから……だから、私は……」

そう、これでいい。

この人と反対に進めば、私の行くべき場所に行ける。

 

だから、この人とはここでお別れ……

これはきっと、地獄に行く前の最後のご褒美か何かだろう。

もう、思い残すことはない。

 

 

「じゃあ、俺はお前に着いていく」

その言葉に、私は困惑した。

「え?何で?どうして……私着いてきたらあなたも……」

 

その言葉に一度ため息をついてからその人は話し出した。

「お前が言ったんだろ?俺はお人好しのバカだって」

「それは……」

「お人好しのバカはお前のような奴を放っておけないんだよ」

 

 

「それに、次の行き先が地獄ってのも、なかなか面白そうじゃないか……」

あの人は、笑って言った。

 

……そうか、そうだったね。

この人は……こういう人だった……

 

私は二つの方向を見比べる。

まあ、どちらも変わらない風景なのだが……

 

「じゃあ、こっちに行く」

私は直感で選んだ道を指差す。

 

その道の先がどこに繋がっているのかはわからない。

地獄なのか、天国なのか……

はたまたそのどちらでもない場所なのか……

 

「じゃあ、行こうか」

あの人はそう言った。

私は、あの人の隣に並んで一緒にその道を歩き出す。

 

 

「……こうして二人で旅するのはいつぶりだろうな?」

ふと、そんなことを聞かれた。

「さあ?もう……ずっと昔のことだよ」

もうずっと……ずっとずっと昔のことだ。

「そんなに経ったんだな……」

本当に、そう思う。

 

 

そういえば、一つ気になっていたことがある。

もしあなたに会えたら、聞きたかったことが……

 

「ねえ……」

「?」

 

「私……あなたの遺言、ちゃんと守れたかな?」

 

そう言ったら、あの人は少し笑った。

「ああ、守れてるよ。その目を見ればわかる」

「そう……」

それなら、よかった。

 

「なあ」と、そう言ってあの人は続けた。

「よかったら、お前が見てきた世界を教えてくれよ」

 

「長くなるよ」

少なくとも一、二時間では終わらない。

 

「いいよ、先はまだまだ長いしな」

 

それもそうだ。まだ先なんて見えない。

時間はたっぷりある。

 

「そうだね……じゃあどこから話そうかな?」

 

ゆっくり、一つずつ話していこう。

 

この旅は、まだ始まったばかりなんだから……




八月が終わりますね……
そして、本小説「私が光となれたなら」は今回で最終回となります。
改めて、ここまで読んで下さった皆様、本当にありがとうございます。
余談ですが、この小説はもとから八月一杯で終わらせようと思っていたのですが、何故か書いていく内に「あれ?これ終わるの?」と段々と不安になっていきましたが、無事終わらせることができてよかったです。
本当なら十話ほどで終わるつもりでした。(まさかの十五話)
この小説は私が別で書いている幻想滅失録の前日譚に当たる話なので、正直本編の方を読んでいない方などは入ってきずらいだろうな……と思っていました。
実際、そこまで伸びたという訳でもないのでまあ予想通りかな……というところもあったけれど、とりあえず三日ごとに投稿をするという裏目標が続けられてよかったです。
まあ、こちらに専念していたので本編の方が疎かになっていましたけど……
まあ、少し長々と語りましたけど……
改めて、本小説は最終回となります。
この小説の続きといいますか、本編の方はまだまだ続きますので、本編「幻想滅失録」の応援の方をよろしくお願いします。

この小説がよかったら、お気に入り登録してくださると嬉しいです。感想、コメント等もお待ちしてます。
それでは、本編の方でまたお会いしましょう。
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