私が光となれたなら   作:メイア・カルテシア

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この小説から見始めた人も本編の方も読んでくださっている人も、ここまで読んでくださってありがとうございます。


記憶を求めて

「ありがとうねぇ」

「ううん、これくらいどうってことないから、また何かあったら言ってね」

 

感謝する老婆に陽はそう返す。

 

 

ここは人里──

あの後、紫や陽との話し合いの結果、記憶を取り戻すきっかけ探しのために人里へ訪れることになった。

 

人里でいろんなものを見せたりしてみたが、多少反応を見せるものはあったものの、そこまでの効果が見られなかったため、陽が言っていた──守り神として人助けをしていた、という発言を元に陽に人助けをさせていたところだ。

 

 

今終わったのは、困ってそうだった老婆の荷物運び。

魔理沙は陽の監視も兼ねて、離れたところから見守っていた。

そのことに陽は、何で手伝ってくれないの?とも思ったがそれは口に出さなかった。

 

 

結局、陽一人で全ての荷物を運ぶことになったが、老婆の前で嫌な顔をすることなく全ての荷物を運んだのだった。

 

 

「それじゃあ、またね」

「はい、さようなら」

別れを言う老婆に陽は笑顔で返した。

 

 

老婆が去り、陽一人となったところで魔理沙が近づいてくる。

「──で、どうだ?何か思い出したか?」

 

 

「……うーん、何か思い出せそうな感じはあるんだけど…」

しかし、陽の回答は何とも言えないものだった。

 

 

「これも駄目なのか?」

「ううん、今までのよりは何か思い出せそうな気がする」

陽には恐らくこれだろうという確信があった。

これまで試したものよりも、何かに訴えかけてくるような感覚が強く、さらには人助けの最中にまるで体に染み付いていたかのように、すんなりと体が動いたのだ。

 

 

「そうか……だったらこれを続けていったら、早く記憶を取り戻せるのか?」

「た、たぶん……」

「……でも、さすがに人里で困ってる人をちまちま探すのはキツいし、数も限りがあるよな……」

 

 

「陽」

「どうしたの?」

 

そこで、と言うように魔理沙は言う。

「人間じゃなくて、妖怪を助けるというのはどうだ?」

その提案に陽は微妙な顔をした。

「いや……どうだろ?やってみないとわからないけど……」

 

 

「でも、私としては人助けがいいな……」

「……妖怪は、苦手か?」

 

 

「いや、そういうことじゃないんだけど……」

「妖怪や怨霊とかの人間に害をもたらすものを相手する事もあったから……」

「あまり、妖怪にいい思い出がないの……」

陽もさすがに気まずいのだろう、その顔はあまり乗り気ではなかった。

 

 

 

まあ、こいつにもいろいろあったんだろう。

魔理沙はそう考えた。

「……だったら──」

 

 

「私の依頼を手伝ってくれないか?」

「魔理沙ちゃんの手伝い?」

 

「ああ、人間からの依頼も結構くるからさ」

「……まあ、それだったら」

 

「じゃ、人間からの依頼はお前に手伝ってもらうからな」

そう言う魔理沙には考えがあった。

 

これにより、陽の記憶を取り戻しつつ、自身の仕事を減らせるという算段だ。

 

「うん、魔理沙ちゃんの手伝いにもなるんだったら、私はいいよ」

陽はそれに快く了承した。

 

 

悪いな、陽。

面倒くさそうなものはお前に任せたからな。

 

少しばかりの罪悪感を感じながら魔理沙と陽はそう約束した。

 

 

数をこなせばその分記憶が戻るのも早くなるだろうと願って──

 

 

陽が魔理沙の手伝いとして依頼の一部を引き受けるようになったのはその翌日からのことだった。

 

 

◆◇◆◇

 

 

「こっちの方かな?」

森の中、道無き道を突き進む。

 

 

今回陽が頼まれたのは妖怪の退治。

まあ、細かく言えば妖怪が居るかどうかの確認だが……

 

最近、人里から程遠くないこの付近で妖怪らしきものを見たという目撃証言があり、本当に妖怪が居るのかどうかの確認をして、居た場合はその妖怪次第では退治するという仕事だ。

 

 

私自身、あまり戦闘はしたくないため居ないことを祈りたいが……

 

 

もう少し辺りを見てまわって、早く帰ろう。

 

 

◆◇◆◇

 

 

それは数十分後のことだった。

 

 

「大丈夫だよ、安心して。私は悪い妖怪じゃないからね」

 

ハプニングというものは何かにつけて起こるものだ。

現在、陽の目の前には一人の小さな少女が居る。

こんな森の中に居るにしては不釣り合いな少女が……

 

人里からそれほど距離はないとは言え、森の中──

付き添いの大人も居らず、子供一人。

 

そう、所謂迷子だろう。

 

 

「お父さんとお母さんとはぐれちゃったの?」

なるべく怖がらせず、優しく聞く。

 

「お、お爺ちゃんと……」

少女は泣きそうな声で言った。

「そっか……怖かったよね……」

 

 

「一人で頑張ったね……」

少女と目線を合わせて言う。

 

 

「心配しないで……私も手伝うから、一緒にお爺ちゃんを探そう」

手を差し出しながら少女に言った。

 

この子のお爺ちゃんは近くにいるのだろうか?

なるべく早く見つけてあげたいけど……

 

 

「うん……」

そう言って、少女は陽の手を取った。

 

 

さすがにまだ不安かな……?

あっ、そうだ!!

「尻尾モフモフする……?」

「……ううん」

陽の提案はあっさり断られた。

 

 

◆◇◆◇

 

 

ええっと、人里はこっちの方向かな?

妖怪を探すためにあっちこっち歩いてたから今の位置はよくわからないけど……

この子のためにも、なるべく最短ルートで行きたいかな…

 

そう思い、人里の方向と思われる方向へ進んで行く。

合っていればいいけど……

 

 

 

 

それは、少し進んだ時のことだった。

 

 

……何か臭う?

 

今進んでいる先の方から鼻につくような嫌な臭いが漂ってくる。

 

 

さっきまではこんな臭いなかったのに……

 

 

何だか……

 

 

 

嫌に……鉄臭い……

 

 

 

そこで陽は嫌な予感を察した。

 

「──止まって」

陽は少女にそう言って、止める。

「……?どうしたの?」

 

「ちょっとごめんね」

陽はそっと少女の目を隠す。

「?」

 

陽はゆっくりと進み、その先を見る。

 

 

 

 

 

 

「──っ」

言葉はでなかった。

 

 

そこにあったのは一人の大人の男。

 

 

その体は赤く染まり、所々食いちぎられたような痕があり、体のまわりには虫が集っている。

先程とは比べ物にならないほどの濃い血の香りが漂ってくる。

 

 

獣?

 

野生動物か何か?

 

 

動物か何かに襲われてしまったのだろうと陽は考えた。

すると、陽の耳に小さな声が届いた。

「うっ……あぁ……」

 

呻き声?

 

息がある?

まだ生きている?

 

 

よく見ると男の体は微かに震えている。

 

 

陽が男の側へ行こうとした時、背後から音が聞こえた。

「「──っ⁉」」

陽と少女は後ろを向いた。

 

 

「?」

そこに居たのは陽の側に居る少女より年上に見える容姿の子供。

 

その子供はゆっくりとこちらへ近づいてくる。

 

 

子供……?

 

 

少女は陽の服の裾を掴む。

陽は少女を自身の背中へと移動させ、庇うように前に立つ。

 

「大丈夫」

陽は小さな声で少女に言った。

 

 

「お姉さん、お姉さん。助けて、助けて」

こちらへと歩いてくる子供はそう言った。

 

 

「私、迷った。帰り、わからない」

片言な物言いの子供は徐々にこちらとの距離を詰めてくる。

 

 

迷子?

一瞬その可能性が頭を過ったが、その考えを捨て去り、すぐに警戒に切り替える。

 

 

「お願い、助けて」

 

 

 

「……ねえ」

すると、自分の背後にいる少女が声を上げた。

「あの子も迷子なんじゃ……」

あの子供のことが心配なのか、少女はそう言った。

 

 

「ね、ねえ…あなたも迷子になったの?」

少女は陽の背中から顔を出し、そう言った。

 

「迷子?うん、迷子」

子供は少女の言葉に反応を示した。

 

 

その様子を陽は分析する。

あまり、危害を加えてきそうな感じはしないけど……

 

 

 

だけど……なんだか、変な感じ……

 

 

 

少女は陽の背後から出て、子供の方へ少し近づく。

「──まって」

陽は少女を制止する。

 

「でも……」

やはり少女はあの子供のことが心配なのか、そう言う。

 

どうするべきだろうか……?

本当にあの子供を信じていいのだろうか?

 

 

「私も、迷子」

子供は少女の方へ近づく。

 

 

「大丈夫、あのお姉さんが助けてくれるから──」

 

 

少女がそう言ったその瞬間──子供の口が裂け、少女を飲み込もうと大きく口を開いた。

「──えっ?」

突然のことに少女は言葉を失い、動揺により体は指一本すらも動かなかった。




この過去編はあまり長々と続けようと思ってはいないので、時々(時々じゃないかもしれないけど)時間が飛んだりすることがあると思います。
感想、コメント等お待ちしてます。
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