私が光となれたなら   作:メイア・カルテシア

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気付けばもう七話ですか……


暗雲

ある日の昼頃──

「これまた珍しいこともあるんだな」

魔理沙は神社への訪問者へとそう言った。

 

「あら、私のことを引きこもりとでも思っているのかしら?」

訪問者は魔理沙へそう返す。

 

「はぁ……で、何の用だ……フラン(・・・)──」

神社へ訪問してきたのは一人の吸血鬼の少女だった。

 

 

「にしても……」

魔理沙は周りを見渡すが、いつも彼女の側にいるメイドの姿は見えなかった。

「咲夜はいないんだな……」

「咲夜は買い出し中よ」

彼女は即座にそう返答する。

 

 

「私とあなただけで事足りる話だから、一人で来たのだけれど──」

フランと呼ばれる彼女は神社の中からその様子を見ていた陽を見た。

「初めて見る顔ね……」

 

 

「……あいつが目的か?」

魔理沙は少しの警戒心を露にして言った。

「いいえ、違うわ」

フランは首を振って否定する。

 

 

 

「私がここに来た目的はあなたよ──魔理沙」

フランは魔理沙のことをじっと見て言った。

「どういうことだ……?」

その意図がわからない魔理沙はフランに目的を尋ねる。

 

 

 

少しの間を空けてフランは言う。

「──近々、大きな戦いが起こるわ」

「は……?」

魔理沙は思わずその声を漏らした。

 

 

「そこで……とある存在を倒したいの……」

「だから私は、その戦いで疲弊したところを叩こうと思っているの……そのために人手がいるのだけど……後はわかるわよね?」

 

「私に手伝えってことか……」

「ええ、そうよ」

魔理沙がそう言うと、フランは頷きながら肯定した。

 

 

「……お前一人じゃ何とかならないのか?」

「できるならここに来ていないわよ……」

 

(まあ、それもそうか……)

 

 

 

 

(……何の話をしているんだろう?)

陽は神社の中から顔を覗かせて二人の様子を見ている。

しかし聞き耳を立てているのだが、距離があるためか会話の内容はよく聞こえない。

 

「……はぁ」

陽は聞くことを諦めて、話が終わるまで待つことにした。

 

 

 

 

「此度、私が倒そうと思っているのは……いずれこの地に災いをもたらす存在」

 

「いずれ……?どういうことだ?」

いずれ災いをもたらす──この言葉に魔理沙は引っ掛かる。博麗の巫女としては聞き逃せないことなのだろう。

「フフッ、それは直にわかるわ」

しかし、それについてフランはそう返す。

 

「一体何が起こる?」

そう魔理沙が聞くが、

「それは答えられないわ」とフランは回答を拒否する。

 

 

 

「聞いたところでどうにかできるものではないもの」

「……何なんだ、そいつは?」

魔理沙がそう聞くと、フランは顎に手を添え、少し間を空けて話し始めた。

 

 

「それはこの幻想郷全てを破壊しうる存在──」

「放って置けば、いずれこの幻想郷は滅びる」

 

 

「あなたの今すぐにでも倒しに行きたいという気持ちもわかるわ……でも、そういう訳には行かない……」

 

「それはまだ完全には目覚めていない……」

「……目覚めていない内にやれば──」

「それができればよかったのだけれどね……」

目覚めていない内に倒せばいいのではないかと言い終わる前に、フランはそれを否定するように言う。

 

 

 

「今のそれはまだ目覚めていない、あるいは成長し切っていないとも言えるわね……」

「成長……?」

「ええ、それは時間とともに成長し、強くなる……けれど、今はまだちゃんとした形すら持っていない」

 

 

「目覚めていない今の……ちゃんとした形を持たないそれを倒すことは至難の技……」

「それに……私たちがどうしようにも、それはいつかは目覚める──」

 

 

「けれど……それを討ち取るタイミングとしては戦いで疲弊したその時が絶好の機会──」

 

 

「後に回せば回すだけ……時間が経てば経つだけ、それはどんどん手がつけられなくなっていく……」

「早急に決着をつけるべき相手──」

 

「それが目覚めたてで力を付けておらず、さらに疲弊した状態……まさにそれを討ち取る絶好の機会──あなたは協力してくれるかしら?」

フランは魔理沙にそう問いかける。

 

 

「………」

魔理沙は考える……いや、考えるふりをしているだけで答えなど決まっている。

「……強制参加の間違いじゃないか?」

魔理沙は言った。

 

博麗の巫女という立場上、そういう存在を放って置くことはできない。

フランはそれを分かって言っているのだろう。

 

 

やはりこいつは性格が悪い、魔理沙はそう思った。

そして、「わかった」と魔理沙はフランの提案を受け入れた。

「フフッ、いい返事が聞けてよかったわ」

フランのその言葉に何か言うことはできなかった。

 

「それじゃあ、その時が来たらよろしくね」

そう言ってフランはこの場を立ち去ろうとする。

 

 

「なあ……」

「?」

 

「お前、私が断ったらどうするつもりだったんだ?」

立ち去ろうとするフランに魔理沙はそう問う。

 

 

それに対しフランは、少し考えてから言葉を紡いだ。

「……そうねぇ、その時は私たちで何とかするしかないわね……」

「でもよかったわ、あなたが協力してくれるようで……」

 

 

 

「──おかげで私が家事をせずに済みそうだわ」

そう言い残して、フランは飛び去ってしまった。

 

 

 

 

フランが飛び去ったことを確認した陽は、魔理沙のもとへと向かった。

「ねえ……何を話してたの?」

単刀直入に陽は聞いた。

 

「……何でもない、ただの世間話だ」

魔理沙はそう返した。

 

 

 

「そんなことより、さっさと今日もお前の記憶を取り戻しに行くぞ」

「……うん」

そうして、人里の見回りに行く魔理沙に陽がついていく。

 

 

 

 

その光景にも大分慣れたものだ。

またこうして、人助けをして、帰ってきて、一日が終わる。

 

 

いつか、私の記憶が完全に戻った時──

私はこの神社から去る。

今は私を監視するという名目で魔理沙ちゃんが私の面倒を見てくれているけど……

いつまでも迷惑は掛けていられない。

 

だから、記憶が戻った時には……

 

少し寂しいけど、いつかはしなくてはいけない……

今度こそ……私一人でも大丈夫だと証明するためにも……一人立ちをする……

でも、たまには……ここに顔を出すことにしようと思う。

 

まあ、今こんなことを考えてても仕方ないか……

まずは記憶を取り戻さないといけないしね……

 

 

さて、今日も人助けを頑張ろう。

 

 

 

 

 

それにしても、魔理沙ちゃんは何の話をしていたんだろう?

 

 

 

その日から、魔理沙ちゃんから張り詰めたような空気を感じるようになった。




本編の方を進めれてなくてごめんなさい
前日譚が終わったら頑張って進めます。

感想、コメント等お待ちしてます。
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