速いような、そうでもなかったような……
昨日は魔理沙ちゃんとお茶を飲んで、ゆっくりするだけで一日が過ぎた。
何の変哲もない、ただぼーっとしただけの一日だったが、陽にとっては特別な日のように感じていた。
夜にはいつもより少し豪華な料理を食べ、よく輝く星空を二人で見た。
それが、魔理沙ちゃんと過ごす最後の日だった。
◆◇◆◇
そして今日──
「……もう行くのか?」
「うん、早い内に行こうと思って」
早朝──朝ごはんを食べ、少しだけ魔理沙ちゃんと談笑した後、ついに神社を去る時が来た。
明るい朝の内に、とりあえず今日の夜だけでも過ごせる場所を探そう。
「ま、困ったらいつでも戻ってこいよ」
「うん、わかった」
「またねー」
そう言って陽は神社を去って行く。
その姿を魔理沙は最後まで見送った。
◆◇◆◇
さて、どうしたものか……
とりあえず神社を出たところまではよかったけど、これからどこへ行こうか……
現在の手持ちは魔理沙ちゃんが念のためにと渡してくれたお金が少々──
これで数日は宿とかに泊まったりすることは出来るけど…
早く考えないとなぁ……
さすがに野垂れ死にたくはない。
とりあえず人里に向かいながら、その道中にも良さそうな場所がないか見よう。
◆◇◆◇
「あとどれくらいかな……」
今は歩いて人里へ向かっている道中──
空を飛んですぐに向かうよりも、その道中も調べながら行こうと思い、徒歩で向かっている。
しかし、あまり良さそうなところは見つからない。
やはり人里か、そのすぐ近く辺りかな……?
あまり妖怪とかが近くにいるところは嫌だな……
◆◇◆◇
「………」
大分歩いた……
かなり歩いた……
そろそろ人里が見えてもおかしくないくらいのところまで来た……
なのに……
なのに……
ない!!!!
いいところがない!!
何で?こんなに歩いたのに?
「はぁ……」
思わずため息が漏れる。
それもそうだ、かれこれ一時間近く歩いた気がするのに何一ついい場所がなかったのだ。
むしろ悪いところを挙げたほうが早い気がする。
危ないところだらけ……
何だか不安になってきた……
そんなことを思っている時だった。
突然近くの草むらがガサッという音を出した。
「──⁉」
陽はすぐに距離を取る。
(妖怪……?)
いつ来てもいいように構え、陽は警戒する。
ガサッ
再度音がすると共にそれが姿を現す。
「……えっ?」
陽が次に発した言葉はそんな腑抜けた声だった。
陽の目の前に現れた者も陽の姿を見て、一瞬ビクッと体を震わせた。
陽の前に現れた者──
それは、
(人間の子供……?)
「……な、何してるの?」
陽はそう聞く。
「あ、あ……」
しかし、子供は体を震わせてこちらを見ているだけだった。
「……?」
それに陽がどうしたのか、と思った時だった。
「よ、妖怪だあああぁぁ!!!!」
そう子供が叫んだ。
「え⁉」
突然叫ばれたことに陽が驚いている間に、子供は走って逃げようとした。
しかし、その直後に足を滑らせ、思いっきり転けた。
「え?だ、大丈夫?」
その光景に陽は困惑を示した。
◆◇◆◇
「──こんなところかな?」
一応の手当てをして、最後に確認をする。
「後でちゃんと診てもらうんだよ?」
「う、うん」
まあ、幸い大した怪我でもないし、大丈夫だろうけど。
手当てをしながら話を聞いたところ、この子供はかくれんぼをしていたらしい。
しかし、なかなか見つからず待ちくたびれて草むらから出たところ、私がいて、妖怪だと思い逃げようとしたら転んだということだった。
まったく……遊ぶならもう少し安全なところで遊べばいいのに……
その時だった。
「おーい」という声が遠くから聞こえてきた。
その声に子供は反応した。
恐らく一緒に遊んでいた子だろう。
「ほら、行っといで」
そう言って、子供を他の子達のもとへと帰す。
「う、うん……ありがとう……」
それだけ言って子供は声のした方へと向かって行った。
「どこ行ってたんだよー」
と、少ししたらそんな声が聞こえてきた。
「まったく……いつ見ても子供は無邪気なものだねぇ」
そう、一人呟いた。
「ええ、そうですね……」
「……えっ?」
だが、それに対し言葉が返ってくることなど予想だにしていなかった。
屈んでいる私の首に背後から腕を回し、頭に手を乗せられている。
気付いた時には、そうなっていた。
何が起こっているのか、頭をフル回転させて考える。
「……?」
しかし、今の状況を理解する前に、だんだんと意識が落ちていった。
「人助け、頑張ってくださいね……」
意識が完全に落ちる直前、そんな言葉が聞こえてきた。
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大きく息を吸い、吐き出す。
入ってくるのは焦土の香り。
「ああ……やはり……」
「やはり空気というものはうまいものだ……」
再度、深呼吸をする。
「それにしても──」
目を開け、瞳に光を入れる。
「すばらしい……素晴らしいなぁ……」
周りを見渡すとそこにあるのは、今もなお炎が家を飲み込んでいく光景。
「絶景と評してやりたいものだ……」
「それに……」
焼け落ちる建物の隙間、その辺の道端、崩れた建物の下…そこにあるのは黒くなった肉塊。
「これほどあろうとはな……」
それはなんて運がいいのだろうかと思わず言ってしまいそうなほどだった。
「早速いただくとしよう……」
自身の足元の影が広がって行く。
大きく、大きくなっていき、それはこの場所──人里から遠く離れたこの集落全体にまで広がった。
───────
「はぁ……はぁ……」
もう終わりだ……
ここに居たら全員死ぬ……
早く……
早く逃げなければ……
仲間の屍を背に、ひたすらに走る。
この集落に居たのは妖怪たち。
この世界で行く当てを無くした者たちが集まってできた小さな集落。
人は襲っていない。
少なくとも自分はそうだ。
ならばこの集落に居る誰かだろうか?
ここには人を憎んでいる奴も、そうでない奴も両方いる。
きっと、人を恨んでいた奴が何かしたんだろう。
そうに違いない……
そのせいで……
なのに……
何で……何でこんなことに……
何で俺まで……⁉
どうしてこんな目に合わなければならない⁉
「──ッ⁉」
その瞬間、突如地面が黒くなった。
「なんだ⁉」
そう困惑していたら、その黒い地面から何かが伸びて来た。
腕?
地面から伸びて来たのは、地面と同じ黒い腕。
それは瞬時に足首を捕らえた。
「うわっ⁉」
足首を掴まれバランスを崩し、地面に倒れる。
すぐに立ち上がろうとした時だった。
その体は宙へと浮かんだ。
「ゴフッ……」
浮遊感と共にきたのは猛烈な痛み──
宙に浮かんだその者の口からは血が溢れ、その体は地面から伸びる腕が貫いていた。
その後、力なく垂れる体を黒い腕が影の中へと引きずり込んだ。
────────
「まだ、まだだ……」
「まだ食いたりない……」
黒い影は再びその者に集束する。
「もっと魂を……」
深淵のように深い青の髪と服──
「憎悪を……」
短い髪を風になびかせ──
「恐怖を……」
ケープの内側から伸びる二本の帯のようなものが背中でマントのようになびいている。
「そして……いつかは……」
それは目覚めたばかりの災い──
「この世界を……」
戦場で散った者の魂を、怨念を喰らいつくし彷徨う影
「……」
終焉をもたらす無慈悲な闇
「……ああ、これは」
幻想への恐れと数多の魂が形作った災い
「いい
それを感じた方向へと歩を進める。
きっとそこにいるはずだから……
目覚めたばかりの闘争本能を刺激する強者が──
それは幻想郷の影であり、幻想郷の鏡そのもの──
その災いの名は『
いずれこの地を飲み込む幻影である。
そろそろ終わりも見えてきたように感じてます。
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