Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第九十一話 戦略研究会

長岡基地のブリーフィングルーム。夕刻の柔らかな陽が窓から差し込み、まだ熱気を残した空気が漂っていた。

涼介と数名の衛士たちは、今日も訓練後の軽い報告会を終え、各々リラックスした様子で腰を下ろしていた。そこへ、保科と小林が現れる。どこか改まった表情だった。

 

「おい、今度“戦略研究会”ってのが帝都で開かれるらしい」

最初に口を開いたのは隼人だった。

「本土防衛軍主体の会合でな。指揮官や衛士の中でも志のある連中が集まるらしい。俺と小林も参加することになった。他に参加したい者はいるか?」

 

「戦略研究会?」富田が首をかしげる。

「バカヤベー。机上の空論並べて時間潰すだけのやつじゃねえのか?」

雁部が茶化すように続ける。

 

小林が鋭く睨む。

「違います。これは帝国軍人としての誇りを取り戻すための会だ。現状の臨時政府は腐敗している。前線に立つ我々の声を、もっと戦略に反映させるべきなのです。」

 

「はいはい、出ましたよ真面目マン」小川が呆れたようにため息を吐く。

「どうせ俺たち現場の衛士には縁のない話ですよね?難しい顔して演説ごっこするだけじゃないですか」

 

「お前は黙ってろ、小川少尉」小林は吐き捨てるように言う。

「現場軽視が続けば、無駄な犠牲は増える。私はそれが許せないだけだ」

 

隼人が腕を組み、真剣な顔で頷いた。

「確かに……この間の作戦でも、上からの命令が二転三転して混乱事がいくつかあったしな。戦略の見直しが必要なのは事実だ」

 

「そうでしょう!」小林の声が熱を帯びる。

「この会に参加することで、私たちの声を帝都に届けられる。今の国の在り方を正すために必要なんだ!」

 

その熱弁に、一瞬空気が重くなる。誰もが返す言葉を探して黙り込んだ。

やがて隼人が静かに口を開く。

「……俺は小林ほど感情的じゃない。ただ、今の状況が行き詰まっているのは確かだ。難民問題も、物資不足も、現場にツケが回ってる。誰かが声を上げなきゃ、何も変わらん」

 

涼介が壁際にもたれかかりながら低く呟いた。

「……声を上げて、何が変わるんだろうな」

 

その言葉に皆が一瞬振り返る。その言葉涼介を見る隼人だったが、隼人の表情は読めなかった。ただ、ため息を吐き出す横顔はどこか影を帯びているように見えた。

 

富田が空気を変えようと、わざとらしく笑った。

「ま、俺は飯がうまくなるなら参加するっけね!」

 

「富田中尉はそればっかりですね」小川が呆れ、全員がどっと笑いに包まれる。

雁部が「食糧事情はバカヤベーくらい戦略上重要な課題だよな」と茶化して、さらに笑いが広がった。

 

その後もしばらく雑談が続いたが、涼介は胸の奥にわだかまりを感じていた。

研究会――その響きは一見正しいものに聞こえる。だが、小林の目に宿る強すぎる光と、隼人の口にした含みのある言葉が、なぜか妙に引っかかった。

 

「兄貴……」

ふと視線を向けた隼人は、皆と笑ってはいたが、どこか心ここにあらずな表情を浮かべていた。

 

涼介はただ隼人の方を見つめ、胸の奥の違和感を振り払おうとした。だがその小さな影は、確実にこれから訪れる嵐の前触れだった。

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