Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

106 / 224
第九十六話 雪の中の決意

長岡基地を飛び出したレッドキグナス中隊。

目指すはただ一人――保科隼人大尉。

 

なぜ彼がこのような行動に出たのか、誰も分からない。

だが中隊の気持ちはひとつだった。

保科隼人を止める。

その一心で、10機の不知火が夜空を切り裂く。

 

しかし――。

 

「っ! 前方に反応!狙われてる!」

 

雁部の警告が響いた直後、視界に禍々しい影が現れる。待ち伏せていたクーデター派の激震が、突撃砲の120mmの砲口をこちらに向けていた。

 

「来るぞッ!」

 

轟音。

ボンッ、と放たれた弾丸が、まっすぐに涼介の不知火を狙う。

 

「鍋島ァァ!!」

 

富田が咄嗟に機体を滑り込ませた。次の瞬間、弾丸が富田機の左肩を粉砕し、装甲片と黒煙が宙に舞った。

 

「富田ァ!!」

涼介が絶叫する。

 

煙を上げながら、不知火はバランスを崩して地面に叩きつけられた。

 

「富田中尉!」

紗栄が泣きそうな声で名を呼ぶ。しかし返るのはザーッというノイズだけ。

 

「クソがぁッ!」

涼介は怒りに任せて機体を急旋回させ、激震へ突っ込もうとした。

 

その時――。

 

『ザザ……ザー……な、べ……島……俺は大……し……夫だっけ……先に行くっけ! 急がないと間に合わなくなる!』

 

途切れ途切れの通信が届く。モニターに映った富田は、額から血を流しながらも笑っていた。

 

『こいつは俺が抑えるっけ! 片手でも激震には負けないっけね! 保科大尉は……お前らに頼むっけね!振り返らず行け!』

 

「富田……!」

「富田中尉!」

心配そうに大友も富田の名を呼ぶ

 

ボロボロの不知火が立ち上がった。左肩を失い、煙を吐きながらも、残った右腕で36mmを乱射する。銃口の閃光と共に、機体は雄叫びを上げるように突撃した。

 

「うぉおおおおお!!」

 

弾丸の雨に押され、激震は後退する。砲撃を受けながらも富田機は構わず前進し、敵を無力化していった。

だが、限界は近かった。

 

「ぐっ……!」

不知火は膝をつき、黒煙を吐きながら崩れ落ちる。

 

『……俺はここまでだ。大尉を……頼むっけ……』

 

「……わかったぜ、富田。お前の分まで、兄貴をぶん殴ってくる!」

 

涼介は振り返らず、操縦桿を強く傾けた。

仲間の想いを背負い、前へ。

 

後方では、富田の不知火が沈黙したまま雪の中に立ち尽くしていた。

やがてハッチが開き、血に濡れた富田が外に身を起こす。

 

「……頼むっけ。……また、みんなで……美味い飯、食いたいっけね」

 

その目から涙が零れた。悔しさと無念と、仲間を信じる想いを滲ませながら。

 

ちらちらと雪が舞い落ち、戦場の赤い光と交じり合って静かに降り積もっていった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。