Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
長岡基地を飛び出したレッドキグナス中隊。
目指すはただ一人――保科隼人大尉。
なぜ彼がこのような行動に出たのか、誰も分からない。
だが中隊の気持ちはひとつだった。
保科隼人を止める。
その一心で、10機の不知火が夜空を切り裂く。
しかし――。
「っ! 前方に反応!狙われてる!」
雁部の警告が響いた直後、視界に禍々しい影が現れる。待ち伏せていたクーデター派の激震が、突撃砲の120mmの砲口をこちらに向けていた。
「来るぞッ!」
轟音。
ボンッ、と放たれた弾丸が、まっすぐに涼介の不知火を狙う。
「鍋島ァァ!!」
富田が咄嗟に機体を滑り込ませた。次の瞬間、弾丸が富田機の左肩を粉砕し、装甲片と黒煙が宙に舞った。
「富田ァ!!」
涼介が絶叫する。
煙を上げながら、不知火はバランスを崩して地面に叩きつけられた。
「富田中尉!」
紗栄が泣きそうな声で名を呼ぶ。しかし返るのはザーッというノイズだけ。
「クソがぁッ!」
涼介は怒りに任せて機体を急旋回させ、激震へ突っ込もうとした。
その時――。
『ザザ……ザー……な、べ……島……俺は大……し……夫だっけ……先に行くっけ! 急がないと間に合わなくなる!』
途切れ途切れの通信が届く。モニターに映った富田は、額から血を流しながらも笑っていた。
『こいつは俺が抑えるっけ! 片手でも激震には負けないっけね! 保科大尉は……お前らに頼むっけね!振り返らず行け!』
「富田……!」
「富田中尉!」
心配そうに大友も富田の名を呼ぶ
ボロボロの不知火が立ち上がった。左肩を失い、煙を吐きながらも、残った右腕で36mmを乱射する。銃口の閃光と共に、機体は雄叫びを上げるように突撃した。
「うぉおおおおお!!」
弾丸の雨に押され、激震は後退する。砲撃を受けながらも富田機は構わず前進し、敵を無力化していった。
だが、限界は近かった。
「ぐっ……!」
不知火は膝をつき、黒煙を吐きながら崩れ落ちる。
『……俺はここまでだ。大尉を……頼むっけ……』
「……わかったぜ、富田。お前の分まで、兄貴をぶん殴ってくる!」
涼介は振り返らず、操縦桿を強く傾けた。
仲間の想いを背負い、前へ。
後方では、富田の不知火が沈黙したまま雪の中に立ち尽くしていた。
やがてハッチが開き、血に濡れた富田が外に身を起こす。
「……頼むっけ。……また、みんなで……美味い飯、食いたいっけね」
その目から涙が零れた。悔しさと無念と、仲間を信じる想いを滲ませながら。
ちらちらと雪が舞い落ち、戦場の赤い光と交じり合って静かに降り積もっていった。