Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第九十九話 戸惑いの乱戦

「捕捉した!距離、もう200切ってる!」

雁部の声が無線を震わせた。

 

雪を切り裂きながら、視界にクーデター部隊の機影が浮かぶ。六機の不知火と、その先頭に立つのは――壱型丙。

 

「兄貴……!」

涼介は思わず息を呑む。

 

「鍋島、冷静に。交戦は避けられん」

前園が鋭く告げた。

 

「了解……!、全機、構えろ!」

涼介の声と同時に、キグナス中隊の九機も武器を構える。

 

だが、クーデター側の動きは早かった。隼人の壱型丙と小林の不知火、さらに二機が跳躍して抜け出し、残る四機が立ちはだかる。

 

「行かせるか!」

小川が叫ぶが、返すように迫る敵影。

 

「ここで時間を稼げば十分だ!」

敵衛士の叫びが無線に割り込む。

 

「やっぱり足止めか……!」

涼介は歯を食いしばる。

 

 

戦友との交戦

 

突撃砲の閃光が雪を照らし、激しい銃火が交錯する。

「撃て!撃て!撃て!」

岸本が吠えながらトリガーを引く。

 

「クッ、あいつ……ブルーイーグルスの佐藤じゃない!?」

大友の声が震える。

 

「本当だ……なんで……!」

紗栄の声も揺れる。

 

目の前に立ちはだかるのは、かつて一緒に演習を受けた顔ぶれ。互いに手の内を知り尽くした仲間同士の戦いは、一瞬のためらいが致命に繋がった。

 

「撃てないなら下がってくれ!? あっちはマジで殺しにきてますよ!」

小川が怒鳴るが、誰も即答できない。

 

「クソがぁ!道開けろや!兄貴にこれ以上、好き勝手させられねぇんだよ!」

涼介が吠えるも、敵は応じず、弾幕で行く手を塞いだ。

 

 

離れていく影

 

「……チビ兄!隼人兄が……」

紗栄が叫ぶ。

 

モニターの奥、雪煙を上げながら隼人の壱型丙が小林らと共に遠ざかっていく。跳躍ユニットの青白い光が瞬き、距離はみるみる広がっていった。

 

「クソッ……また離れていく!」

操縦桿を握る涼介の指が白くなる。

 

「鍋島中尉、まずは目の前の敵を!」

前園の冷静な声。

「分かってる……やったやらぁ!」

 

仲間を撃つことへの躊躇が、刹那ごとに足を重くする。

 

 

松本の決断

 

その時――。

 

「いくね!!」

 

松本の声が無線を突き抜けた。松本の不知火が弾丸の雨をすり抜け、一気に前へ飛び出した。

 

「松本!? 待て、戻れ!」

涼介が慌てて叫ぶ。

 

「だいじょーぶ!ちょっとホカ大尉としょーぶしてくる!」

松本の声は涙混じりだった。

「このまま、おわるのはダメッ!!」

 

「バカやろう!単騎で行ったら――!」

 

「行かせましょう!鍋島中尉!松本少尉なら足止め出来るかもしれない」

小川が冷静に戦況を判断し声を上げる。

 

松本は切迫した声で言い切る。

「あたしは……ホカ大尉を追う!それが、あたしの答えだから!」

 

跳躍ユニットが閃光を放ち、松本の不知火は一直線に飛び出した。

 

「くそっ……!」

涼介は唇を噛む。

 

遠ざかる兄の機影を、松本が必死に追いすがる。その姿を見送りながら、残されたキグナス中隊は依然として足止めに苦しめられていた。

 

「鍋島中尉!今は俺たちがやるしかねぇです!」

小川の声が怒号のように響く。

 

「分かってる……!ここで倒れてたまるか!」

 

九機の心は揺れながらも一つに収束する。

――追わねばならない。だが、まずは目の前の仲間を撃ち抜かねば。

 

雪が舞う戦場で、かつての戦友を撃つ苦悩と、離れていく兄の背を追う焦燥が交錯していた。

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