Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第百話 届かぬ想い

「全員覚悟決めろ!!行くぜェ!」

涼介の号令と同時に、8機の不知火から突撃砲の閃光が走った。雪を切り裂く銃火が、目前に立ちはだかる四機のクーデター部隊を照らす。

 

「くそっ、全力で止めろ!」

敵衛士が叫び、応戦の弾幕が張られる。

互いの距離は近く、雪煙と爆炎が交錯し、視界は白と赤に塗りつぶされる。

 

「 正面のやつ、あの動きは……!」

紗栄が悲鳴に近い声を上げる。

「間違いねぇ、あれはイエローライラの勝又だ!」

雁部の叫びに、皆の胸が締めつけられる。

 

かつて共に酒を酌み交わした戦友の機体が、いまは銃口をこちらへ向けている。

 

「ためらうな! 撃たなきゃこっちが死ぬ!」

小川が吠える。

 

「……くそっ!」

岸本が歯を食いしばり、狙いを定める。

 

「跳躍ユニット狙え! できるだけ殺すな、止めろ!」

涼介が指示を飛ばす。

 

銃口が火を噴き、弾丸が敵機の腰部後方を貫いた。爆炎が吹き上がり、跳躍ユニットを破壊された不知火が雪原に墜落する。

 

「一機落とした!」

 

「まだ三機だ!」

前園が冷静に告げる。

 

敵機は動揺を見せながらも必死に突撃してくる。

「止まれぇぇっ!」

突撃砲の銃口が松原を狙う。

 

「松原、下がれ!」

咄嗟に涼介が割り込み、トリガーを引いた。銃弾が敵機の脚部を撃ち抜き、バランスを崩した不知火が横転する。

 

「二機目沈黙!」

 

「残り2機です、左右に展開!」

青島が即座に指示を出す。

 

「くっ、あいつら本気だよ!」

大友が叫びながら回避行動をとる。

 

「殺させねぇですよっと!」

小川が突撃し、跳躍ユニットに狙いを絞る。

弾丸が炸裂し、敵機の跳躍ユニットが吹き飛んだ。

 

「三機目撃破!」

 

最後の一機は、執念で紗栄の不知火を狙い突っ込んでくる。

「紗栄!」

涼介が叫ぶ。

 

「やらせねぇって!」

雁部の不知火が横から突き飛ばし、同時にトリガーを引く。120 mmが敵機のコックピットを貫き、火柱が上がった。

 

「……四機、無力化です。」

青島が淡々と報告した。

 

雪原に散らばる残骸。仲間であった者たちを撃ち倒した現実が、全員の胸に重くのしかかる。

 

 

「……あたし、行く!」

 

突如、松本の機体が雪煙を切って前に飛び出した。

 

「松本!待て!俺らもすぐ追いつく」

涼介が制止する。

 

「嫌よ!ホカ大尉を止められるのは……あたししかいないから」

涙混じりの声で松本が叫ぶ。

 

不知火の跳躍ユニットが閃光を放ち、隼人の壱型丙を追う。

 

視界の先、漆黒のシルエットが月明かりに浮かぶ。

「ホカ大尉ぃっ!」

 

松本の不知火が長刀を抜き、斬りかかる。

だが――。

 

「甘い」

隼人の声は冷徹だった。

 

壱型丙が機体をわずかに傾けた瞬間、松本の斬撃は空を切る。

次の瞬間、強烈な蹴りが不知火の脇腹を打ち抜いた。

 

「くっ……!」

松本の機体が大きく弾かれ、装甲が軋む。

 

「まだっ!」

必死に立て直し、再び斬りかかる。

 

しかし壱型丙の動きは速すぎた。

一撃、二撃、三撃――全て防がれ、逆に装甲を削られる。

 

「まだ……もう…一回…!」

松本の声は悔しさに震える。

 

最後の交錯。

隼人の長刀が、不知火の右腕を切り落とした。

 

「うわぁっ!」

悲鳴と共に松本の機体は吹き飛び、雪原に叩きつけられる。機体は中破し、黒煙を上げていて、もう立ち上がる力を失った。

 

隼人は一度も振り返らず、壱型丙を前へと進める。

その背中は、冷たく、遠かった。

 

「待って……!もう一回……まだ!」

松本は涙を流し、声を枯らして叫んだ。

「まだ……勝ってないのに……!」

 

返事はない。雪煙だけが彼女の視界を覆い隠す。

 

 

そこへ、後方から駆け付けたレッドキグナス中隊が到着する。

 

「松本!無事か!?」

涼介が叫ぶ。

 

「大丈夫……!機体はもう動かないけど……」

震える声で返す松本。

 

「分かった、後は任せろ!」

涼介は短く告げ、機体を跳躍させる。

 

「お願い……」

松本は力なく呟いた。

 

雪の中に残された彼女の不知火を後目に、八機の不知火が再び夜空を駆け抜けていく。

 

涙に濡れた視界の中、松本はただ両手を握り締めていた。

「お願い……絶対に、ホカ大尉を……」

 

雪はなおも降り続き、白い闇が全てを覆い隠していった。

 

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