Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
吹雪を切り裂き、レッドキグナス中隊八機がついにクーデター部隊を視界に捉えた。残る敵は四機。しかしその機影は整然とした陣形を組み、まるで逃げる気など毛頭ないかのようにこちらを睨んでいた。
「鍋島中尉! 紗栄少尉!」
突如、小川の怒号が無線に響く。
「あんたら二人で保科大尉を止めてきてください!」
「小川、なに言って――」
涼介が反論しかけた瞬間、遮るように小川が声を張る。
「保科大尉を止められるのは、あんたら兄妹しかいない! だから行ってください! 残りは俺たちでどうにかするんで!」
一瞬、沈黙が走った。敵の精鋭四機を相手にするには六機でも分が悪い。それでも小川は迷いなく指示を飛ばす。
「前園少尉は左から回り込んで! 松原少尉、雁部少尉と組んで正面を抑えて! 大友少尉は後らから全体をフォロー、岸本少尉は俺に付いてください!」
「おう! ナベさん、きっちり保科の兄さんシメてきてくださいよ! 紗栄も!」
雁部が笑いながらサムズアップを送る。
「僕たちの方が楽そうですね。終わったらすぐ手伝いに行きますから」
松原は余裕の笑みを見せ、敬礼してみせた。
「任せた……」前園は短く、しかし力強く言い放つ。
「行ってこい! その代わり失敗したら許さねぇからな!」
岸本が拳を握り、怒鳴るように気合を送る。
「紗栄ちゃん、鍋島中尉をしっかり援護してくるんだよ」
大友が穏やかに語りかける。
モニターに映る仲間たちの顔を見つめ、涼介と紗栄は一瞬だけ目を閉じた。深く息を吸い、同時に両頬を叩く。パンッと乾いた音が響き、二人の瞳が決意に燃える。
「よっしゃ! 行くぞ紗栄! 遅れんな!」
「うん! チビ兄こそ!」
覚悟を決めた鍋島兄妹の不知火が、火の玉のように雪原を駆け抜けた。
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「……正直、あの二人だけじゃ心配ですけどね」
小川が苦笑しつつ操縦桿を強く握りしめる。
「さっさと片付けて援護に行きましょう!」
「了解!」
5人の声が揃い、雪煙を切り裂いて敵4機へ突撃した。
クーデター側の不知火が咆哮のように砲撃を放つ。閃光と爆炎が夜空を照らし、戦場は一瞬にして修羅場と化す。
「来やがれぇぇっ!」
雁部の機体が正面から撃ち合い、爆風を巻き起こす。
「数はこっちが上です! 押し切れます!」
小川の怒声と共に、6機の不知火が交錯した。
弾幕と白兵戦が入り乱れ、雪上は火柱に包まれる。仲間の背を託された彼らの胸にあるのはただ一つ――兄妹を保科隼人の元へ辿り着かせること。
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後方の戦場が炎に沈む中、涼介と紗栄の二機は一直線に保科の壱型丙へ迫る。
「待ってろよ兄貴……絶対に止めてやるからな!」
涼介の声は怒りと悲しみに震えていた。
「隼人兄……絶対に!」
紗栄の声もまた決意に満ちていた。
雪を裂き、兄妹の火の矢が道を踏み外した兄を追う。その背には仲間たちの叫びと願いが乗っていた。