Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第百一話 届ける想い

吹雪を切り裂き、レッドキグナス中隊八機がついにクーデター部隊を視界に捉えた。残る敵は四機。しかしその機影は整然とした陣形を組み、まるで逃げる気など毛頭ないかのようにこちらを睨んでいた。

 

「鍋島中尉! 紗栄少尉!」

突如、小川の怒号が無線に響く。

「あんたら二人で保科大尉を止めてきてください!」

 

「小川、なに言って――」

涼介が反論しかけた瞬間、遮るように小川が声を張る。

 

「保科大尉を止められるのは、あんたら兄妹しかいない! だから行ってください! 残りは俺たちでどうにかするんで!」

 

一瞬、沈黙が走った。敵の精鋭四機を相手にするには六機でも分が悪い。それでも小川は迷いなく指示を飛ばす。

 

「前園少尉は左から回り込んで! 松原少尉、雁部少尉と組んで正面を抑えて! 大友少尉は後らから全体をフォロー、岸本少尉は俺に付いてください!」

 

「おう! ナベさん、きっちり保科の兄さんシメてきてくださいよ! 紗栄も!」

雁部が笑いながらサムズアップを送る。

 

「僕たちの方が楽そうですね。終わったらすぐ手伝いに行きますから」

松原は余裕の笑みを見せ、敬礼してみせた。

 

「任せた……」前園は短く、しかし力強く言い放つ。

 

「行ってこい! その代わり失敗したら許さねぇからな!」

岸本が拳を握り、怒鳴るように気合を送る。

 

「紗栄ちゃん、鍋島中尉をしっかり援護してくるんだよ」

大友が穏やかに語りかける。

 

モニターに映る仲間たちの顔を見つめ、涼介と紗栄は一瞬だけ目を閉じた。深く息を吸い、同時に両頬を叩く。パンッと乾いた音が響き、二人の瞳が決意に燃える。

 

「よっしゃ! 行くぞ紗栄! 遅れんな!」

「うん! チビ兄こそ!」

 

覚悟を決めた鍋島兄妹の不知火が、火の玉のように雪原を駆け抜けた。

 

 

 

「……正直、あの二人だけじゃ心配ですけどね」

小川が苦笑しつつ操縦桿を強く握りしめる。

「さっさと片付けて援護に行きましょう!」

 

「了解!」

5人の声が揃い、雪煙を切り裂いて敵4機へ突撃した。

 

クーデター側の不知火が咆哮のように砲撃を放つ。閃光と爆炎が夜空を照らし、戦場は一瞬にして修羅場と化す。

 

「来やがれぇぇっ!」

雁部の機体が正面から撃ち合い、爆風を巻き起こす。

 

「数はこっちが上です! 押し切れます!」

小川の怒声と共に、6機の不知火が交錯した。

 

弾幕と白兵戦が入り乱れ、雪上は火柱に包まれる。仲間の背を託された彼らの胸にあるのはただ一つ――兄妹を保科隼人の元へ辿り着かせること。

 

 

 

後方の戦場が炎に沈む中、涼介と紗栄の二機は一直線に保科の壱型丙へ迫る。

 

「待ってろよ兄貴……絶対に止めてやるからな!」

涼介の声は怒りと悲しみに震えていた。

 

「隼人兄……絶対に!」

紗栄の声もまた決意に満ちていた。

 

雪を裂き、兄妹の火の矢が道を踏み外した兄を追う。その背には仲間たちの叫びと願いが乗っていた。

 

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