Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第百二話 最初から気に食わなかった

吹雪舞う雪原を切り裂き、二機の不知火が激突した。

白銀の閃光と共に交錯するのは、レッドキグナスの小川、そしてクーデター派の小林。

 

「小林ィ!」

小川の怒号が無線に響く。

 

「小川ぁ!」

応じるように小林の突撃砲が火を噴いた。

弾丸の嵐が迫り、小川の不知火は身を翻してかわす。雪煙が舞い上がり、夜空を赤く焦がす。

 

「貴様だけは……最初から気に食わなかった!」

小林の声は怒りに震えていた。

「日本帝国軍人の誇りもなく、緩いお前らが! 笑って過ごす日常で満足している貴様らが!」

 

「……はぁ?」

小川の口元に皮肉な笑みが浮かぶ。

「なるほどな。ようやく本音を吐いたか」

 

二機は再び交錯。小林の長刀と小川の二対の短刀が火花を散らし、激しい衝撃がコックピットを揺さぶる。

 

 

小林の猛攻

 

「お前らみたいな腑抜けがいるから、この国は腐るんだ!」

小林の叫びと共に、重撃が襲い掛かる。

長刀が振り下ろされ、小川は間一髪で躱す。金属音が耳をつんざき、火花が夜空を裂いた。

 

「ぐっ……!」

小川の機体が後退する。

続けざまに突撃砲の銃口が閃き、36mmが装甲を削る。

 

「どうした小川! 笑いで戦は勝てんぞ!」

小林の声は勝利を確信したかのように高ぶっていた。

 

「チッ……舐めんなよ!」

小川は体勢を立て直し、銃撃で応戦するが、防御一辺倒。

その姿を見て小林は嗤う。

「やはり貴様は俺の下だ。常に、保科大尉に認められるのは俺ではなくお前……それが気に食わなかった!」

 

 

逆襲

 

「……やっと聞けたな」

小川の声が低くなる。

「最初から保科大尉に褒められる俺が気に入らなかった……ただそれだけだろ?」

 

「黙れぇぇっ!」

小林が猛然と突進する。

 

だが次の瞬間、小川の機体が横へ滑るように跳び、死角から突撃砲を叩き込んだ。

「ぐぅっ!」

被弾した小林の不知火がよろめく。

 

「俺は……どんな時でも仲間と笑って戦いたい」

小川が叫び、短刀を構える。

 

激突。

火花を散らす斬撃戦。互いの機体が雪原を削りながら押し合う。

 

「くそぉぉ!」

小林の叫びは焦燥に満ちていた。

 

 

「どうした、小林! 声ばっかで手元が緩んでるぞ!」

小川の斬撃が肩を貫き、装甲片が飛び散る。

 

「う、うるさい……俺は……俺は帝国軍人だ!」

小林の動きは乱れ、叫びは支離滅裂になっていく。

 

「この国の誇りを守るのは俺だ! 貴様のような……緩んだ奴らでは……!」

必死に叫びながらも、防御は崩壊していた。

 

「なら証明してみせろよ!」

小川が突撃砲を叩き込み、小林の機体を大きく弾き飛ばす。

 

「ぐああっ!」

小林の不知火が雪原に叩きつけられた。

 

 

立ち上がろうとする小林の機体。その背を晒した瞬間、小川の直感が告げた。

 

「逃げる気か……?」

 

「ち、違う……っ」

小林の声は震えていた。

「俺は……まだ……!」

 

だが機体は後退し、必死に距離を取ろうとする。

 

「情けねぇな……」

小川が低く呟き、照準を合わせる。

 

突撃砲の閃光。

小林の不知火は爆炎に包まれ、雪原に沈んだ。

 

静寂。

 

「……最初から気に食わなかった?」

小川の声が無線に滲む。

「――俺もだよ」

 

吹雪の中、彼の声だけが静かに響き渡った。

 

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