Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
吹雪舞う雪原を切り裂き、二機の不知火が激突した。
白銀の閃光と共に交錯するのは、レッドキグナスの小川、そしてクーデター派の小林。
「小林ィ!」
小川の怒号が無線に響く。
「小川ぁ!」
応じるように小林の突撃砲が火を噴いた。
弾丸の嵐が迫り、小川の不知火は身を翻してかわす。雪煙が舞い上がり、夜空を赤く焦がす。
「貴様だけは……最初から気に食わなかった!」
小林の声は怒りに震えていた。
「日本帝国軍人の誇りもなく、緩いお前らが! 笑って過ごす日常で満足している貴様らが!」
「……はぁ?」
小川の口元に皮肉な笑みが浮かぶ。
「なるほどな。ようやく本音を吐いたか」
二機は再び交錯。小林の長刀と小川の二対の短刀が火花を散らし、激しい衝撃がコックピットを揺さぶる。
⸻
小林の猛攻
「お前らみたいな腑抜けがいるから、この国は腐るんだ!」
小林の叫びと共に、重撃が襲い掛かる。
長刀が振り下ろされ、小川は間一髪で躱す。金属音が耳をつんざき、火花が夜空を裂いた。
「ぐっ……!」
小川の機体が後退する。
続けざまに突撃砲の銃口が閃き、36mmが装甲を削る。
「どうした小川! 笑いで戦は勝てんぞ!」
小林の声は勝利を確信したかのように高ぶっていた。
「チッ……舐めんなよ!」
小川は体勢を立て直し、銃撃で応戦するが、防御一辺倒。
その姿を見て小林は嗤う。
「やはり貴様は俺の下だ。常に、保科大尉に認められるのは俺ではなくお前……それが気に食わなかった!」
⸻
逆襲
「……やっと聞けたな」
小川の声が低くなる。
「最初から保科大尉に褒められる俺が気に入らなかった……ただそれだけだろ?」
「黙れぇぇっ!」
小林が猛然と突進する。
だが次の瞬間、小川の機体が横へ滑るように跳び、死角から突撃砲を叩き込んだ。
「ぐぅっ!」
被弾した小林の不知火がよろめく。
「俺は……どんな時でも仲間と笑って戦いたい」
小川が叫び、短刀を構える。
激突。
火花を散らす斬撃戦。互いの機体が雪原を削りながら押し合う。
「くそぉぉ!」
小林の叫びは焦燥に満ちていた。
⸻
「どうした、小林! 声ばっかで手元が緩んでるぞ!」
小川の斬撃が肩を貫き、装甲片が飛び散る。
「う、うるさい……俺は……俺は帝国軍人だ!」
小林の動きは乱れ、叫びは支離滅裂になっていく。
「この国の誇りを守るのは俺だ! 貴様のような……緩んだ奴らでは……!」
必死に叫びながらも、防御は崩壊していた。
「なら証明してみせろよ!」
小川が突撃砲を叩き込み、小林の機体を大きく弾き飛ばす。
「ぐああっ!」
小林の不知火が雪原に叩きつけられた。
⸻
立ち上がろうとする小林の機体。その背を晒した瞬間、小川の直感が告げた。
「逃げる気か……?」
「ち、違う……っ」
小林の声は震えていた。
「俺は……まだ……!」
だが機体は後退し、必死に距離を取ろうとする。
「情けねぇな……」
小川が低く呟き、照準を合わせる。
突撃砲の閃光。
小林の不知火は爆炎に包まれ、雪原に沈んだ。
静寂。
「……最初から気に食わなかった?」
小川の声が無線に滲む。
「――俺もだよ」
吹雪の中、彼の声だけが静かに響き渡った。