Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
吹雪の戦場に、涼介と紗栄の二機が戻ってきた。
その姿を見た瞬間、レッドキグナスの全員が息を呑む。
「投降しろ!」
涼介の声が戦場に響いた。
「保科隼人大尉は戦死した! 無駄に命を散らすな!」
その言葉は、鋼鉄の斬撃よりも重く仲間の胸を抉った。
あの保科隼人が――死んだ。
涼介と紗栄の二機だけが戻ってきた事実が、何より雄弁にそれを語っていた。
「ナベさん……」
雁部が通信を繋いだが、言葉は続かない。喉に何かが詰まったように、声が出なかった。
「もう無駄な戦いはやめろ!」
涼介が全周波数で呼びかける。その声は涙に滲み、震えていた。
「俺たちの命はBETAと戦うためにある! こんな所で散らすな!」
静寂の中、残ったクーデター派二機は動きを止め、やがて武装を投げ捨てた。
重い音を立てて突撃砲が雪上に落ちる。投降の意思を示したのだ。
⸻
「全機、帰投するぞ。動けないやつはいるか?」
感情を押し殺した声で涼介が告げる。
「……松本少尉以外は全機問題ないよ、鍋島中隊」
大友の返答もまた、張り裂けそうな声だった。
「そうか。じゃあ回収部隊が来るまで警戒体制を維持しろ。投降者は松原と園さんが監視についてくれ」
「りょ、了解です」
「了解」
松原と前園が静かに応じ、投降した二機の周囲に移動した。
雪が降り続く。
だが戦場を包むのは爆炎の轟きではなく、張り詰めた沈黙だった。
誰も涼介に声をかけられなかった。
「兄を討った男」に、なんと声をかければいいのか分からなかった。
⸻
秘匿回線
その沈黙を破ったのは岸本だった。
「……鍋島、聞こえるか」
「岸本さんか……わざわざ秘匿回線でどうした?」
涼介の返答は掠れていた。
「あのよ……保科大尉は」
途切れ途切れの声。だが続きは出てこない。
「あぁ……俺が討った」
涼介は短く答えた。
「まだ実感なんてねぇし、頭も混乱してる……だから少しだけ……整理させてくれ」
「……わかった。だが一人で抱え込みすぎるなよ」
岸本はそれだけ言って通信を切った。
再び訪れる沈黙。
雪の舞い降りる音だけが、戦場を支配していた。
⸻
「みなさんお疲れ様でした。回収部隊、あと五分で到着します」
青島の淡々とした声が戦場を満たす。
「了解。総員、警戒を維持。最後まで気を抜くな」
涼介が答える。
その声に、わずかに張り詰めていた空気が和らいだ。
五分後、回収部隊が到着した。
松本の中破した不知火、武装を捨てた二機の不知火、そして――隼人の壱型丙。
コックピットに長刀の貫通跡を残したまま、静かにトレーラーに載せられていく壱型丙。
その姿を見た瞬間、中隊の誰もが言葉を失った。
声を上げて泣く者、顔を背けて拳を握る者。
それぞれが心の奥に刻み込むように、その光景を見つめていた。
「……兄貴」
涼介は誰にも聞こえないほどの声で呟いた。
⸻
帰投
作業が終わり、部隊は長岡基地へ帰投を開始した。
帰路につく8機の不知火。
だがその間、誰一人として口を開かなかった。
エンジンの低い唸りと、雪を弾く風切り音だけが耳に残る。
それは、仲間を失った悲しみと、討たざるを得なかった現実を噛み締める静かな時間だった。
こうして、後に 「12.5事件」 と呼ばれる歴史的事件に、レッドキグナス中隊は深く巻き込まれた。
彼らが背負った傷は、戦場の炎よりも深く、長く残るものとなった。
それでも彼らは歩みを止めない。
国を守るために。
そして、散った男――保科隼人の想いを継ぐために。
雪はなおも降り続き、静かに戦場の跡を覆い隠していった。
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