Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
「……なんだこれ」
山積みの書類を前に、涼介は額に手を当てた。
昇進と同時に任された中隊長の職務。
戦術機の稼働率報告、兵站消耗品の申請書、隊員の勤務シフト、訓練計画、さらに作戦後の戦闘記録報告。
どれもこれも必要だと頭では分かっている。だが――。
「戦場より疲れるじゃねぇか……!」
思わず声を上げた。
かつては保科隼人が涼しい顔で処理していた仕事だ。
その偉大さを今になって骨身に染みて思い知らされる。
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青島の助言
「鍋島大尉、そろそろ司令部への週次報告の締め切りです」
背後から青島の淡々とした声。
「うぉ、そうだった……! ってか葵、これどうやってまとめんだよ!」
「簡潔に、数値と結果を先に。理由や詳細は後で補足すればいいんです」
青島は慣れた手つきで書類を束ねる。
涼介が四苦八苦していた部分を、几帳面な字でさっと整理していく。
「……やっぱお前、すげぇな。司令部に欲しがられるわけだ」
「私はCP将校ですから」
青島はそっけなく答えたが、その頬はわずかに緩んでいた。
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富田のサポート
「鍋島〜大尉! 補給物資の申請書っけど、俺がまとめといたっけね!」
資料の束を抱えて富田が入ってくる。
「これ、みんなの消耗品や訓練弾の使用記録を表にしたっけよ。数字は苦手だけど、こういうのは現場の声をまとめるだけだしな!」
「助かる……! お前のこういうとこ、本当に頼りになるわ」
「保科大尉もよく俺に任せてくれてたっけね。……だから今回も勝手にやっといた」
富田は照れくさそうに笑う。
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小川の手腕
「鍋島大尉、訓練スケジュールは俺が引き受けますよ」
小川がタブレットを片手に現れた。
「各小隊の疲労度と機体整備のスケジュールを突き合わせて、無理のないローテーションを組みました。……まぁ、俺なりにですけど」
画面に並ぶ計画は整然としていて、誰が見ても分かりやすい。
「お前……すげぇな。頭いいとは思ってたけど、ここまでとは」
「やめてくださいよ。俺は実務しか取り柄ないんですから」
苦笑する小川。
だがその表情には、任された役割を果たせる誇りが滲んでいた。
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仲間の力
「……はぁ。やっと終わった……」
夕方、机の上の書類がようやく片付く。
涼介はぐったりと椅子に沈み込んだ。
「戦術機で暴れてる方が百倍楽だな」
「大尉。これが中隊長の戦いです」
青島が冷静に告げる。
「兄貴の野郎も、こんな毎日を……?」
呟いた涼介の胸に、隼人の姿が浮かぶ。
誰よりも強く、誰よりも頼れる存在でありながら、誰よりも地道に背負っていた男――保科隼人。
「……やっぱ兄貴はすげぇや」
その言葉に、仲間たちは黙って頷いた。
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新たな仲間
「ところで、大尉」
青島が新たな資料を差し出す。
「来週、補充要員として新たに二人が配属されます。その人事資料です」
涼介は受け取り、ページをめくる。
新しい仲間の顔写真、経歴、出身地、訓練成績……。
その中に、見覚えのある名前があった。
「今回は女2人か……っておいおい、マジか」
目を細め、ニヤリと笑う涼介。
「懐かしい奴が来やがったな」
詳細はまだ伏せたまま。だが、その笑みには期待と決意が込められていた。
新たな戦いの予感と共に、レッドキグナス中隊の再出発は着実に進んでいく。