Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達 作:NageT
長岡基地・ブリーフィングルーム。
レッドキグナス中隊の面々が整列し、涼介の到着を待っていた。
「ふぁぁ……ナベさん、今日は何事ですかね」
椅子にだらしなく腰掛けていた雁部があくびを噛み殺す。
「新しい仲間の顔合わせだって言ってたでしょ、寝ぼけないでくださいよ雁部少尉……」
松原が書類をめくりながら苦笑する。
「新人かぁ……また突撃馬鹿が増えたりしなきゃいいんですけどね」
小川が皮肉を口にするが、口元は緩んでいる。
やがて扉が開き、涼介が堂々と入ってきた。
「おう、待たせたな。今日は新しく配属される二人を紹介する」
全員が姿勢を正す。
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「まず一人目。俺の訓練校時代の同期だ。――静、前へ」
「了解しました!」
快活な声と共に一歩前へ出たのは、大柄で健康的な雰囲気の女性士官。茶髪を伸ばして結んだ髪が揺れる。
「ん……池田? ってことは、裕平と結婚したのか?」
涼介が目を丸くする。
「ははっ、バレたか。そう、あの池田とね。今は“池田静”だよ」
「マジかよ……あのアホの池田とお前が?!」
涼介が笑いながら首を振ると、静が拳を握る。
「鍋島、あんた変わらないね! あたしを昔メスゴリラって呼んでたくせに前線では男女なんてねぇんだって女風呂に突撃してきたバカは、今も変わってねぇな!うちのアホ旦那も一緒に来てたけどさ……」
「うわ、バラすなって!」
思わず涼介が赤面し、中隊全員がどっと笑いに包まれた。
「まぁまぁ、仲が良さそうでなによりだっけね」
富田が肩を揺らして笑い、紗栄が「チビ兄って本当に昔からそうなんですよね」と呆れた顔をする。
静は真剣な顔に戻り、仲間へ一礼した。
「B小隊配属となりました池田静です。迎撃後衛として必ず皆さんの盾になります。よろしくお願いします!」
その姿に、中隊員たちは自然と拍手を送った。
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「次に紹介するのは――白鳥少尉、前へ」
涼介がそう呼ぶと、一人の少女が静かに進み出た。
小柄で整った顔立ち。誰かを思わせる赤髪を腰まで伸ばしたストレートロング。だが、その瞳に宿るのは姉とは違う、まだ未完成ながらも強い意志だった。
「てか白鳥……? その赤髪、全然似てねぇけど……まさか真凜大尉の妹か?」
涼介が問いかける。
真里奈は凛とした声で答えた。
「はい。白鳥真凜は私の姉です。幼い頃から姉の話を聞いて、このレッドキグナス中隊に憧れていました」
室内がざわめく。誰もが初代中隊長の名を知っているからだ。
「……姉が最後にくれた手紙に、こう書いてありました」
真里奈は胸元から小さな封筒を取り出す。
「“新しく涼介という新人が入ってきた。アイツは危なっかしいバカだが、大物になる”と。なんせ配属初日に俺が食われちまった!お前も気をつけろと……最後のはなんの事だかわかりませんでしたが、まさかその涼介さんが今、中隊長になっているとは……姉の言ったことは本当だったんですね」
「……っ!」
涼介は言葉を失った。胸の奥に、任官当初の日々と真凜大尉の姿がよみがえる。
「お会いしたかったです、中隊長。これから、よろしくお願いします!」
真里奈は深く頭を下げた。
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「すげぇ……初代中隊長の妹かよ」
岸本が呟く。
「……キグナスも歴史を背負うわけだな」
前園が腕を組み、感慨深げに言う。
「でもまだ17歳なんだろ? 俺の妹みたいなもんだな!」
雁部が茶化すと、真里奈はピシャリと言い返した。
「私は戦場に出る衛士です。妹扱いはご遠慮ください!」
「おぉ、口が立つじゃねぇか!」
雁部が苦笑し、場が和む。
「新しい風が吹きそうだね」
大友がにこやかに言い、松原は「でも偉大な姉の影を背負うのは大変そうですね」と小声で漏らす。
「初代の隊長の妹なら強いかな〜」松本は真里奈に狙いを定めていた。
紗栄は真里奈の手を握り、微笑んだ。
「同じ女の衛士として、紗栄も力になるよ!。よろしくね」
真里奈は少し驚いたように目を瞬かせ、頷いた。
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最後に涼介が全員を見渡し、口を開いた。
「――池田静。白鳥真里奈。お前ら二人を歓迎する。レッドキグナス中隊は、血を流しても生き残ることを選んだ部隊だ。辛いことも多いが……必ず生きて帰って、笑って酒を飲む。そういう隊だ」
静は大きく頷き、真里奈は真剣な顔で「はい!」と答えた。
仲間たちが新しい二人を受け入れ、拍手と笑い声でブリーフィングルームは満ちていった。
新たな歴史が、またここから始まろうとしていた。