Muv-Luv Alternative:Red Cygnus 血染めの白鳥達   作:NageT

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第百十五話 模擬戦 ― 真里奈 vs 涼介

「鍋島大尉……お願いします!」

真里奈は真っ直ぐ涼介の目を見て、深々と頭を下げた。

 

「……また俺かよ。モテる男は辛いねぇ」

おどける涼介。しかしその目は真剣に真里奈を射抜いている。

 

「別に俺でもいいけどよ……多分、何もさせねぇぞ。それでもやんのか?」

急に張り詰めた空気。涼介の威圧に、一瞬怯んだ真里奈。だがすぐに睨み返し、声を振り絞った。

 

「は、はい! 姉の認めた人……鍋島大尉の力を、体験させてください!」

 

沈黙の後、涼介は肩を竦めて移動し始めた。

「ま、いいか。なら準備してさっさと始めんぞ。――言っとくが、俺は真凜大尉じゃねぇ。期待すんなよ」

 

「はい! よろしくお願いします!」

真里奈は緊張を振り払うように、大きな声で答えた。

 

 

開戦

 

シミュレーターに転送された雪原フィールド。

開始のカウントがゼロになると同時に、涼介の壱型丙が火の玉のように突っ込む。

 

「よっしゃあ! 行くぜぇ!」

突撃砲も使わず、ただひたすらに真っ直ぐ。

 

「はやっ――!」

真里奈は咄嗟に長刀を構えたが、視界に映るのは閃光のような長刀だけだった。

 

一閃。

衝撃と共に機体が仰け反り、システム音が響く。

《白鳥真里奈、撃墜》

 

「……はい終わりっと」

涼介は何事もなかったようにシミュレーターから降りてきた。

 

 

「ナベさん、大人気ねぇよ……」

雁部が苦笑して肩を竦める。

 

「新兵相手に、あれはトラウマ物ですよ」

松原が呆れたように言い、紗栄も腕を組んで小言を漏らした。

「チビ兄、やりすぎだよ……」

 

「うるせぇ! あれが真凜大尉の戦い方なんだよ。真っ直ぐ行って、真っ直ぐ斬る。それだけだ!」

涼介はぶっきらぼうに言い切る。

 

遅れてシミュレーターから出てきた真里奈は、額に汗を浮かべながらも深く頭を下げた。

「あ、ありがとうございました……。あれが……姉の戦い方……」

 

その戸惑いと畏敬の入り混じった声に、中隊員たちは沈黙した。

 

 

 

「小川! お前ならどうする?」

突然涼介が問いかける。

 

「え、俺ですか?」

不意に振られた小川は少し考え、冷静に答えた。

「……鍋島大尉があの速度で突っ込んできたら、俺なら120mmで撃ち落とします。それで終わりです」

 

「ぷっ……確かに」

岸本が吹き出し、富田も頷く。

「確かに冷静に考えたらそうだっけ! 突っ込んでくる鍋島程、読みやすいヤツはいないっけ」

 

一気に場が和み、全員が笑い出した。

 

 

 

「……それが答えだ」

涼介の声で笑いは止まった。

 

「俺みたいなバカ正直な突撃、普通ならしねぇ。だがな――戦場じゃ、ビビった奴から死ぬんだ。真里奈、お前の動きは……今のままじゃ“ビビってる”だけだ」

 

「……っ!」

真里奈は言葉を失った。

 

松本が思い出したように呟く。

「確かに……デストロイヤー級の突撃とか、あんな感じだよね」

 

「茶化すな松本!」

涼介が一喝する。

 

「正直に言う。真凜大尉なら突撃しながらも躱すし、BETAも血祭りにあげてくる。俺にはそんな芸当できねぇ!」

涼介は自信満々に言い放った。

 

「な、何故ですか? 鍋島大尉は中隊長ですし、姉が認めた衛士の筈です!」

真里奈が食い下がる。

 

「……あのなぁ。俺の戦術機適性はB-だぞ。実際の操縦技術だけなら、隊でも下の方だ」

 

その言葉に、室内の空気が凍りついた。

 

 

 

「……はぁ? うそだろ」

雁部が目を丸くし、富田が「マジっけ?」と呟く。

 

「でも……さっきの突撃は……」

松原が口ごもる。

 

涼介は苦笑し、仲間を見渡した。

「だからこそ俺は、真っ直ぐ突っ込むしかねぇんだよ。それが俺の戦い方だ……俺が今生きてんのは優秀な仲間に囲まれてたからだ!だからお前も早く成長してそうなってくれ!」

 

沈黙の中、真里奈は拳を握りしめ、涼介を真っ直ぐに見つめた。

――姉の認めた人は、強さだけじゃなく、自分を偽らない人だった。

 

やがて涼介は肩を竦めて笑い、場を和ませるように声を張った。

「さぁ! 歓迎会の模擬戦はここまでだ! 次は実戦でお前らの力を見せてもらうぞ!」

 

仲間たちは息をつき、笑いと共に緊張を解いた。

しかし真里奈の胸には、涼介の言葉が深く刻み込まれていた。

 

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